「採用費が年間1,000万円を超えているのに、入社後すぐ辞める人が後を絶たない」
このような採用の悩みを抱える企業が、いま続々と導入しているのがリファラル制度(社員紹介制度)です。エージェント手数料は年収の35%[1]、1人あたりの採用コストは100万円超が当たり前となった2025年。採用市場の激化により、従来の手法では優秀な人材の確保が困難になっています。
しかし、リファラル制度を導入しても「社員が誰も紹介してくれない」「制度が形骸化している」という企業が7割を超える[2]のが現実です。
本記事では、累計100社以上の採用支援をしてきたTEAM-Xが実践している、リファラル制度の設計方法を解説します。制度設計の具体的な手順から、報酬設定、運用のコツまで、明日から使える実務ノウハウをお届けします。
【実務で使える】リファラル制度 運用テンプレート集(Word形式)
【運用を効率化】リファラル制度管理スプレッドシート(Google形式)
目次
リファラル制度とは?
リファラル制度とは、現職の従業員が信頼できる知人・友人を採用候補者として企業に紹介し、採用に至った場合に報酬を受け取る仕組みです。単なる「縁故採用」とは異なり、戦略的に設計された採用チャネルとして機能します。
従来の採用手法との決定的な3つの違い
従来の求人媒体やエージェント経由の採用と比較すると、リファラル制度には明確な優位性があります。
違い①:採用コストを抑えられる
エージェント手数料は年収の30〜35%が相場です[1]。年収500万円の人材を採用すると、手数料だけで150〜175万円かかります。一方、リファラル制度の報酬は10〜50万円程度が一般的で、採用単価を抑えることができます。
違い②:定着率が高い傾向にある
リクルートワークス研究所の調査によれば、リファラル経由の入社者は、媒体経由と比較して3年後の定着率が高い傾向があるというデータがあります[3]。入社前から既存社員との信頼関係が構築されているため、職場への適応がスムーズに進むケースが多いのです。
違い③:企業文化へのフィット率が高い
紹介する社員は、自社の価値観や雰囲気を理解した上で候補者を推薦します。スキルだけでなく「一緒に働きたい」という感覚的な判断が加わるため、カルチャーマッチの精度が高まります。
リファラル制度が求められる背景
採用市場の構造変化により、リファラル制度の重要性は年々高まっています。
背景①:転職潜在層へのアプローチが必須に
優秀な人材ほど、能動的に転職活動をしていません。LinkedInの調査では、ハイパフォーマーの多くが「求人サイトを日常的にチェックしていない」と回答しています[4]。こうした転職潜在層にリーチできる有効な手段の一つが、社員ネットワークを活用したリファラル採用なのです。
背景②:採用ブランディングの重要性向上
「この会社で働きたい」と思われる魅力がなければ、どんな採用手法も機能しません。リファラル制度が活発な企業は、社員が「自社を紹介したい」と思える組織である一つの指標となり、採用ブランディングの強化につながります。
7割の企業が失敗する:リファラル制度が機能しない3つの原因
リファラル制度を導入しても、実際に成果を出している企業は多くありません。失敗する原因は、制度設計の根本的な誤解にあります。
原因①:「報酬」で釣ろうとして、「理念」を伝えていない
「報酬を50万円に上げれば、社員は動くだろう」—これは最もよくある失敗パターンです。
従業員が知人を誘う最大の動機は、金銭ではありません。むしろ「一緒に働きたい」「この会社は知人にとっても良い場所だ」という企業への共感です。報酬だけを前面に出すと、制度が「金目当ての紹介」と受け取られ、逆に参加を敬遠されます。
社員が自社に誇りを持っていなければ、どれだけ報酬を積んでも積極的な紹介にはつながりません。
解決策:経営層から「なぜこの人材が必要か」を語る
制度開始時には、CEOや役員から「事業戦略上、なぜこのポジションが重要か」「採用することで会社がどう変わるか」を全社員に向けて発信しましょう。「人事が忙しいから手伝ってほしい」ではなく、「〇〇事業の成功のために、あなたのネットワークの力を貸してほしい」というメッセージが重要です。
原因②:紹介プロセスが複雑で、従業員の負担が大きすぎる
「専用ツールに20項目入力」「推薦理由を500文字で記述」—こんな面倒な制度では、誰も使いません。
紹介のハードルが高いと、どれだけ報酬が魅力的でも制度は機能しません。特に問題なのが、紹介後のフォロー体制です。
- 候補者に連絡したのか分からない
- 面談日程がなかなか決まらない
- 選考状況が不透明
このような状態が続くと、紹介者は「もう二度と紹介したくない」と感じてしまいます。紹介した知人の選考が滞ると、紹介者自身の顔も潰れるからです。
解決策:紹介方法を複数用意し、24時間以内に初回連絡
紹介の窓口を「専用フォーム」「メール」「Slackのダイレクトメッセージ」など複数設け、従業員が最も簡単な方法を選べるようにしましょう。理想的なタイムラインは以下の通りです。
このスピード感が、紹介者の満足度を大きく左右します。
| タイミング | アクション | 担当 |
| 紹介受付から24時間以内 | 候補者への初回連絡 | 人事 |
| 初回連絡から3日以内 | カジュアル面談の日程確定 | 人事 |
| 面談後24時間以内 | 紹介者へ進捗報告 | 人事 |
原因③:不採用時のフォローがなく、紹介者が離れていく
「紹介した候補者が不採用になったのに、何の連絡もなかった」—これが、リファラル制度を破壊する最大の要因です。
紹介した知人が不採用になることは珍しくありません。しかし、そのときの対応次第で、紹介者が今後も協力してくれるかが決まります。
不採用時に何の連絡もしない、または形式的な「ありがとうございました」だけで終わらせると、紹介者は「自分の顔に泥を塗られた」と感じます。知人に対して気まずくなり、二度と紹介しなくなるのです。
解決策:不採用でも、紹介者への感謝と丁寧なフィードバック
候補者のプライバシーに配慮しつつ、紹介者には以下のような対応を徹底しましょう。
- 迅速な連絡:選考結果が出たら、24時間以内に紹介者に報告
- 感謝の表明:「今回は見送りとなりましたが、ご紹介いただき本当にありがとうございました」
- 簡潔なフィードバック(任意):「スキルは素晴らしかったが、今回は〇〇の経験を持つ方を優先した」など、紹介者が納得できる理由を伝える
さらに、採用に至らなくても「紹介してくれた行動自体」に対して、少額のギフト券(3,000〜5,000円程度)を渡す企業も増えています。
成果を出すリファラル制度の設計7ステップ【実務フロー完全版】
ここからは、実務で即活用できる具体的な設計手順を解説します。リファラル制度の成功は、設計フェーズで大きく左右されます。
ステップ1:目的とターゲットポジションの明確化
全社一律の制度ではなく、「戦略的な重点ポジション」から始めることが成功の鍵です。
まず、以下の3つの観点から、リファラル採用を優先すべきポジションを特定します。
- 採用難易度が高いポジション:エンジニア、データサイエンティストなど、市場に人材が少ない職種
- 事業成長のボトルネックとなっている部門:新規事業の立ち上げメンバー、マネージャー候補など
- カルチャーフィットが特に重要なポジション:創業期のスタートアップや、チームワークが重視される部署
次に、そのポジションのペルソナ(理想の候補者像)を具体化します。
ペルソナ設定の例(Webマーケター)
- 必須スキル:SEO施策の実務経験3年以上、GA4でのデータ分析
- 歓迎スキル:広告運用経験、コンテンツマーケティング
- カルチャーフィット:データドリブンな意思決定を重視、成長意欲が高い、チームで協力して働ける
このペルソナを全従業員に共有することで、「あの人が合いそうだ」と具体的にイメージできるようになります。
ステップ2:紹介プロセスの設計(簡素化が命)
従業員が迷わず紹介できるよう、シンプルなフローを設計します。
標準的な紹介プロセス
| フェーズ | 担当者 | アクション | 目標タイムライン |
| ① 紹介受付 | 従業員 | 専用フォーム/Slack/メールで候補者情報を送信 | 5分以内 |
| ② 初回連絡 | 人事 | 候補者に連絡し、カジュアル面談を提案 | 24時間以内 |
| ③ 進捗報告 | 人事 | 紹介者に「連絡済み」を報告 | 初回連絡後すぐ |
| ④ カジュアル面談 | 人事/現場社員 | リラックスした雰囲気で会社説明・質疑応答 | 1週間以内 |
| ⑤ 本選考 | 人事/採用責任者 | 通常の選考プロセス(面接2〜3回) | 2〜3週間 |
| ⑥ 結果通知 | 人事 | 紹介者と候補者の両方に結果を通知 | 選考終了後24時間以内 |
| ⑦ 報酬支払い | 人事/経理 | 採用決定後、規定のタイミングで報酬支払い | 入社後3〜6ヶ月 |
重要なポイント
- 紹介受付の方法は複数用意する(専用フォーム、メール、Slack、口頭など)
- 候補者への初回連絡は24時間以内を徹底
- 紹介者への進捗報告を必ず行う(特に不採用時)
ステップ3:報酬体系の設計(金額・支払い条件の明確化)
報酬設計では、「いくら払うか」よりも「いつ払うか」が重要です。
2025年時点の報酬相場[5]
| 職種・ポジション | 報酬額の目安 | 支払いタイミング |
| エンジニア・高度専門職 | 50〜100万円 | 入社後6ヶ月 |
| マネージャー・営業職 | 30〜50万円 | 入社後3〜6ヶ月 |
| 一般職・非専門職 | 10〜30万円 | 入社後3ヶ月 |
支払い条件の設定理由
多くの企業が「入社後3〜6ヶ月」を支払いタイミングとするのは、早期退職リスクを防ぐためです。試用期間終了後や、入社後の定着を確認してから支払うことで、ミスマッチによる損失を防げます。
ただし、あまりに支払いが遅いと従業員のモチベーションが下がるため、バランスが重要です。
ステップ4:制度ルールの文書化(透明性の確保)
公平で透明性の高いルールを策定し、従業員の信頼を勝ち取ります。
制度規定に必ず含めるべき項目
- 対象者:正社員、契約社員、派遣社員など、誰が紹介できるか
- 対象ポジション:どの職種・等級が対象か
- 報酬額:職種ごとの報酬金額
- 支払いタイミング:入社後〇ヶ月、または試用期間終了後など
- 不採用時の対応:フィードバックの有無、感謝の形
- 禁止事項:反復継続的な紹介の禁止(職業安定法への抵触防止)
これらを「リファラル採用規程」として文書化し、社内イントラネットで公開しましょう。
ステップ5:社内キックオフ(経営層からのメッセージ発信)
制度は作って終わりではなく、社内への浸透こそが成功の鍵です。
キックオフ時には、CEOや役員から全従業員に向けて、以下の内容を発信します。
経営層からのメッセージ例 「当社は今年、〇〇事業を本格展開します。そのために、Webマーケティングの専門人材を5名採用する必要があります。採用市場は競争が激しく、従来の手法では優秀な人材に出会いにくい状況です。そこで、皆さんの力を借りたいのです。皆さんのネットワークには、求人サイトに載らない優秀な人材がいるはずです。ぜひ、一緒に働きたいと思える方を紹介してください。」
このように「なぜ必要か」「どんな未来を創るか」を語ることで、社員の協力意欲が変わります。
ステップ6:採用依頼書の作成
各ポジションの詳細をまとめた「採用依頼書」を作成し、従業員が紹介しやすくします。
採用依頼書に含める項目
- ポジション名・部署
- 募集背景(なぜこのポジションが必要か)
- 必須スキル・歓迎スキル
- 想定年収
- 働き方(リモート可否、勤務地など)
- カルチャーフィット(どんな人が活躍しているか)
- 紹介報酬額
これをA4で1〜2枚にまとめ、社内Slackやメールで共有します。
ステップ7:定期的な効果測定とPDCA
制度を継続的に改善するため、定量データに基づきPDCAを回します。
測定すべき3つのKPI
- 紹介率:全従業員に占める紹介者の割合(目安:10〜20%)
- 採用決定率:紹介された候補者のうち採用に至った割合(目安:30〜50%)
- 定着率:リファラル経由入社者の1年後定着率(目安:高水準を目指す)
四半期ごとにこれらのデータを分析し、問題があれば速やかに改善します。例えば、紹介率が低い場合は「社員のエンゲージメントに問題がないか」を調査し、採用決定率が低い場合は「ペルソナ設定が曖昧ではないか」を見直します。
報酬設計の実践ガイド|金額相場と支払いタイミング
報酬設計は、リファラル制度の成否を分けるデリケートな論点です。「高額にすれば成功する」という単純な話ではありません。
金銭報酬vs非金銭報酬:どちらを選ぶべきか
報酬には「金銭報酬」と「非金銭報酬」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った設計をしましょう。
金銭報酬のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 明確で分かりやすい | 金額が低いと不満につながる |
| 高額職種では強い動機付けになる | 「金目当て」と受け取られるリスク |
| 公平性を担保しやすい | 税務処理が必要 |
非金銭報酬のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 「感謝の印」として受け取られやすい | 価値観が多様で、喜ばれない可能性 |
| 税務処理がシンプル(一定額以下) | 高額職種では物足りない |
| 企業文化の醸成につながる | 公平性の担保が難しい |
実務的な推奨:金銭報酬をベースに、非金銭報酬を併用
例えば、採用成功時には金銭報酬(30万円)を支払い、カジュアル面談が設定できた段階で非金銭報酬(5,000円のギフト券)を渡す、という組み合わせが効果的です。
報酬額の決め方:職種・等級別の設計
報酬額は、「採用難易度」「年収レンジ」「市場価値」の3つの観点から決定します。
報酬額設定の計算式(目安)
報酬額 = 想定年収 × 5〜10%
例えば、年収600万円のエンジニアを採用する場合、報酬は30〜60万円が目安となります。
職種別の報酬相場(2025年版)
| 職種 | 採用難易度 | 報酬相場 | 設定理由 |
| AI/機械学習エンジニア | 非常に高 | 80〜150万円 | 市場で争奪戦、年収も高額 |
| Webエンジニア | 高 | 50〜80万円 | 慢性的な人材不足 |
| マネージャー職 | 中〜高 | 40〜60万円 | 適任者が少ない |
| 営業職 | 中 | 20〜40万円 | 候補者は多いが、優秀な人材は限定的 |
| 一般事務職 | 低〜中 | 5〜20万円 | 候補者が比較的多い |
支払いタイミングの設計:早期退職リスクへの対策
多くの企業が悩むのが「入社してすぐ辞められた場合、報酬を返金してもらえるか」という問題です。
一般的な支払いタイミングの設計[6]
| タイミング | メリット | デメリット | 採用シーン |
| 入社時 | 紹介者の満足度が高い | 早期退職リスクが高い | 採用難易度が極めて高い職種 |
| 試用期間終了後(入社3ヶ月) | バランスが良い | 待機期間が長いと不満 | 一般的な職種 |
| 入社6ヶ月後 | 定着を確認できる | 紹介者のモチベーション低下 | 高額報酬の職種 |
推奨:2段階支払い方式
最近のトレンドは、報酬を2回に分けて支払う方式です。
- 1回目:入社時または試用期間終了後に50%を支払い
- 2回目:入社6ヶ月後に残り50%を支払い
この方式により、紹介者のモチベーションを維持しつつ、早期退職リスクも軽減できます。
独自提案:「アクションインセンティブ」で参加ハードルを下げる
RMFの視点から推奨するのが「紹介という行動自体」に対する低額報酬の付与です。
例えば、以下のような設計です。
| アクション | 報酬 | 目的 |
| 候補者を紹介 | 感謝状 | 心理的な承認 |
| カジュアル面談実施 | 5,000円のギフト券 | 行動への感謝 |
| 本選考に進む | 10,000円のギフト券 | 継続的な協力への感謝 |
| 採用決定 | 30〜100万円 | 成果への報酬 |
この設計により、「採用は難しいが、紹介ならできる」という従業員の行動を喚起し、社内でリファラルに対するポジティブな雰囲気を醸成できます。
【実務で使える】リファラル制度 運用テンプレート集(Word形式)
報酬額一覧表、支払い条件規程、紹介プロセスフロー図、紹介依頼書フォーマットの4つのテンプレートをWord形式で無料提供します。
テンプレート内容
・テンプレート1:報酬額一覧表(職種別・金額設定)
・テンプレート2:支払い条件規程(正式な規程文書)
・テンプレート3:紹介プロセスフロー図(7ステップの視覚化)
・テンプレート4:紹介依頼書フォーマット(社員向け募集要項)
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制度を定着させる3つの仕掛け|エンゲージメント連動型の運用術
リファラル制度の成功は、報酬額ではなく「組織風土」に左右されます。ここでは、制度を定着させるための実践的な仕掛けを解説します。
仕掛け①:「採用は人事の仕事」という壁を壊す
リファラル採用が失敗する最大の原因は、「採用は人事部の仕事」という意識です。
成功している企業は、全社員が「採用は自分たちの仕事」と認識しています。そのために、以下の施策が効果的です。
部門長に「カジュアル面談の実施」を義務化
各部門長に対し、リファラル候補者とのカジュアル面談を必ず実施してもらいます。これにより、部門全体で採用に責任を持つ文化が醸成されます。
社内ミートアップの定期開催
月1回、各部署が「どんな仕事をしているか」「どんな人が活躍しているか」を語る社内イベントを開催します。これにより、従業員が他部署のニーズを理解し、「あの人を紹介できそう」と気づくきっかけになります。
仕掛け②:紹介者の「顔が立つ」フォロー体制の構築
紹介者が知人に対して気まずい思いをしないよう、徹底的にフォローします。
不採用時の対応プロトコル
- 選考結果が出たら、候補者より先に紹介者に連絡:「本日、選考結果を〇〇さんにお伝えしますので、先にご報告させていただきます」
- 感謝を最優先:「今回は見送りとなりましたが、素晴らしい方をご紹介いただき、本当にありがとうございました」
- 簡潔なフィードバック(任意):「スキルは申し分なかったのですが、今回は〇〇の経験がある方を優先させていただきました」
このプロトコルを人事部で徹底することで、紹介者の満足度が向上します。
採用成功時の社内表彰
四半期に1回、リファラル採用に貢献した社員を表彰する制度も効果的です。全社会議で紹介者を称え、感謝状や記念品を贈呈します。金銭以上に、「会社から認められた」という心理的報酬が、次の紹介行動を促します。
仕掛け③:エンゲージメント調査と連動させる
リファラル採用が低迷している場合、それは「制度が悪い」のではなく、「既存社員の働きがいや職場満足度が低い」可能性があります。
優秀な人材は、ネガティブな情報を持つ企業を紹介しません。リファラル制度は、組織が健全であることの証明でなければならないのです。
エンゲージメント調査の実施
半期に1回、従業員エンゲージメント調査を実施し、以下の項目をモニタリングします。
- 「この会社を友人に勧めたいと思うか(eNPS)」
- 「自分の仕事にやりがいを感じているか」
- 「上司や同僚との関係は良好か」
eNPS(Employee Net Promoter Score)が低い場合、リファラル制度を強化する前に、組織課題の解決を優先すべきです。
改善施策の実施
エンゲージメント調査で明らかになった課題(人事評価への不満、労働環境の問題など)を改善することが、最も本質的なリファラル成功への道です。
よくある質問:法律・税務・運用トラブル対策
実務でよく寄せられる質問に、専門的な視点から回答します。
Q1. リファラル報酬は職業安定法に違反しないか?
A. 原則として違反しません。ただし、運用方法に注意が必要です。
職業安定法では、無許可での「職業紹介事業」が禁止されています[8]。しかし、リファラル採用は以下の条件を満たせば、職業紹介事業には該当しません。
職業安定法に抵触しない条件
- 従業員が「反復継続して」紹介を行うものではない
- 紹介が従業員の「主たる業務」ではない
- 企業が従業員に「依頼」する形である(義務ではない)
逆に、特定の社員に「毎月〇人紹介することをノルマとする」といった運用は、職業安定法に抵触する可能性があります。
Q2. 報酬の税務処理はどうすべきか?
A. 報酬は「一時所得」または「雑所得」として扱い、源泉徴収が必要な場合があります。[9]
リファラル報酬の税務処理は、金額と支払い形態により異なります。
金額別の税務処理
| 報酬額 | 税務上の扱い | 企業の対応 |
| 50万円以下 | 一時所得(年間50万円までは非課税) | 特に対応不要 |
| 50万円超 | 一時所得(超過分は課税対象) | 年末調整で対応 |
| 継続的な支払い | 雑所得 | 源泉徴収が必要 |
実務上の推奨
- 報酬支払い時に「支払調書」を発行
- 年間50万円を超える場合は、税理士に相談
- 社員には「確定申告が必要な場合がある」と事前に伝える
Q3. 不採用になった候補者から「なぜ落ちたのか」と聞かれたら?
A. 紹介者を通じて、簡潔かつ建設的なフィードバックを伝えます。
候補者のプライバシーに配慮しつつ、以下のような対応が適切です。
フィードバックの例
- 「スキルは申し分なかったが、今回は〇〇の経験がある方を優先した」
- 「カルチャーフィットの観点で、別の候補者を選定した」
- 「今回は見送りだが、将来的なポジションでぜひご縁があれば」
ただし、具体的すぎる指摘(「コミュニケーション力が不足」など)は避け、建設的な内容に留めましょう。
Q4. 紹介者と候補者の関係が悪化した場合の対応は?
A. 人事部が仲介役となり、両者の関係を守る配慮が必要です。
採用・不採用に関わらず、紹介者と候補者の関係が悪化するリスクはゼロではありません。特に不採用時は注意が必要です。
トラブル防止策
- 紹介時の確認:「選考結果に関わらず、関係に影響はないか」を紹介者に確認
- 候補者への配慮:不採用通知は丁寧に、感謝の意を伝える
- 紹介者へのフォロー:「〇〇さんには感謝をお伝えしました」と報告
最悪の場合、紹介者が「もう二度と紹介しない」と感じる可能性もあるため、トラブルが起きた場合は迅速に対応しましょう。
Q5. アルバイトやパート社員も制度対象にすべきか?
A. 原則として対象に含めることを推奨します。ただし、報酬体系は区別します。
アルバイトやパート社員は、現場の課題や必要な人材像を深く理解していることが多く、「現場の即戦力」を紹介する有効なチャネルとなります。
雇用形態別の報酬設計例
| 雇用形態 | 報酬額の目安 | 理由 |
| 正社員 | 標準額(30〜100万円) | 責任範囲が広い |
| 契約社員 | 標準額の70〜80% | 正社員に準じる |
| アルバイト/パート | 標準額の30〜50% | 紹介機会が限定的 |
全社的に制度の対象とすることで、企業全体での採用意識が高まり、多様な人材の獲得につながります。
【運用を効率化】リファラル制度管理スプレッドシート(Google形式)
紹介案件の進捗管理から報酬支払い、KPI測定まで、リファラル制度の運用を一元管理できるスプレッドシートテンプレートを無料提供します。
スプレッドシート内容(5シート構成)
- シート1:報酬額一覧(職種別の報酬設定)
- シート2:紹介管理台帳(案件進捗の一元管理)⭐️最重要
- シート3:支払い管理(報酬支払いスケジュールと実績)
- シート4:採用依頼書(ポジション別募集要項)
- シート5:KPIダッシュボード(効果測定指標の可視化)
特徴
- Googleスプレッドシートでそのまま使える
- 自動計算式付き(支払予定日、KPI集計など)
- 条件付き書式で24時間ルールを自動チェック
- 詳しい使い方ガイド付き
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まとめ:リファラル制度は「採用戦略」であり「組織文化」である
リファラル制度は、単なる採用チャネルではありません。組織が健全で、社員が誇りを持って働いている証明であり、持続的な成長を支える戦略的な仕組みです。
本記事で解説した7つのステップを実践することで、貴社は採用の質と効率を高めることができます。
ただし、忘れてはならないのは、リファラル制度の成功は「報酬額」ではなく「組織風土」に懸かっているということです。
社員が「一緒に働きたい」と思える仲間を紹介するには、まず自社が「紹介したくなる会社」でなければなりません。エンゲージメント調査を定期的に実施し、組織課題を改善しながら、戦略的にリファラル制度を運用してください。
本記事のポイントまとめ
- 目的の明確化:経営戦略と連動し、「誰を」「何のために」採用するかを定義する
- プロセスの簡素化:従業員の負担を最小限にし、紹介しやすい環境を整備する
- 報酬の適正化:金額だけでなく、支払いタイミングと感謝の形を設計する
- フォローの徹底:不採用時こそ、紹介者への感謝と丁寧な対応を最優先する
- 風土の醸成:エンゲージメントを高め、「紹介したくなる組織」を創る
参考文献・データ出典
本記事で引用したデータおよび参考情報の出典は以下の通りです。
[1] 採用市場調査(2024-2025年):人材紹介会社のエージェント手数料相場データ
[2] 企業人事担当者向け調査(2024年):リファラル制度導入企業における制度活用状況調査
[3] リクルートワークス研究所『採用チャネル別定着率調査』:採用経路別の入社後定着率に関する調査データ
[4] LinkedIn『Global Talent Trends Report』:グローバル人材市場における転職活動実態調査
[5] 企業のリファラル制度実態調査(2025年):職種別リファラル報酬額の市場相場データ
[6] 人事労務実務調査(2024-2025年):リファラル報酬の支払いタイミングに関する実態調査
[7] eNPS(Employee Net Promoter Score):従業員エンゲージメント指標。「この会社を友人に勧めたいか」を測定する指標
[8] 厚生労働省『職業安定法の解釈について』 https://www.mhlw.go.jp/
[9] 国税庁『一時所得の課税について』『給与所得者の源泉徴収事務』 https://www.nta.go.jp/
注記
- 本記事で紹介している報酬相場や運用事例は、2025年時点の一般的な水準です
- 実際の制度設計においては、自社の状況や法令の最新情報を確認の上、専門家(社会保険労務士・税理士等)にご相談ください
- 記事内の具体的な金額や数値は、あくまで参考値であり、業界・企業規模・地域により異なります