受注はあるのに技術者を配置できない。ベテランが辞めたら現場を任せられる人がいない。求人を出しても応募が来ない。建設業の人手不足は、規模を問わず多くの会社で経営の制約になっています。
求人票を書き直しても、媒体を変えても応募が集まらないのは、自社のやり方だけの問題ではありません。探している人が、そもそも転職市場に出てきていないからです。
この記事では、まず何が起きているのかを就業者数や有効求人倍率で押さえます。出典つきの数字なので、社内で採用の予算や方針を説明するときにもそのまま使えます。応募が来ない理由は工種によって違うので、建築・土木・電気・電気通信・管工事それぞれで最初にどの条件を広げればいいか、対策5つのどれから着手するかまで分かります。
「うちの業界は結局どこまで深刻なのか」「このまま何もしないとどうなるのか」と気になっている方は、自社の状況に当てはめながら目を通してみてください。
目次
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建設業の人手不足の現状
建設業の人手不足とは、工事の量に対して施工管理や職人が足りず、受注や工期に影響が出ている状態です。すでに一部の会社では、受けられる工事を選ばざるを得なくなっています。
就業者数はピークから200万人減った
建設業就業者数は、1997年の685万人をピークに長期的な減少傾向が続き、2025年平均では478万人です(出典:総務省「労働力調査」、国土交通省「建設業を巡る現状と課題」)。ピーク時から200万人以上、約3割減った水準です。
| 年 | 建設業就業者数 | ピーク(1997年)比 |
|---|---|---|
| 1997年(ピーク) | 685万人 | ― |
| 2021年 | 485万人 | 約29%減 |
| 2022年 | 479万人 | 約30%減 |
| 2023年 | 483万人 | 約29%減 |
| 2024年 | 477万人 | 約30%減 |
| 2025年 | 478万人 | 約30%減 |
※出典:総務省「労働力調査(長期時系列データ)」をもとに作成。労働力調査は2002年と2009年に日本標準産業分類の改定を挟むため、1997年と2025年は厳密には同一基準ではありません
一方で、工事の需要は減っていません。いま同時に走っているのは、次のような工事です。
- 老朽化したインフラの更新
- 防災・減災の工事
- 都市部の再開発
- データセンターや半導体工場の建設
需要が横ばい以上で、供給だけが3割減っています。現場が回らなくなって当然です。
ここ数年は480万人前後で横ばいです。ただし現場を任せられる有資格者と若年層が減っているため、頭数の3割減という数字よりも体感は厳しくなります。
有効求人倍率5.65倍は全職業平均の5倍
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2026年3月分)によると、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.65倍です。全職業平均(職業計)は1.10倍で、いずれも常用(パート含む)の値です。
求職者1人に対して、求人が5件以上ある計算になります。求職者は応募すればほぼどこかに決まります。企業のほうは、条件が他社より弱ければその時点で候補から外れます。
応募が集まらないのは自社の求人だけの問題ではありません。ただし同じ市場条件でも採用できている会社はあるので、市場のせいだけにもできません。
転職市場に出てくるのは20代と50代
面談に来る施工管理者の内訳を見ると、20代が約30%、50代が約26%と、この2つの層で半数を超えます。多くの会社が即戦力として求める30代から40代前半は、ほとんど出てきません。
この層は現職で現場を任されている中心人物です。工事の切れ目がなく、転職を考える余裕がありません。特に1級施工管理技士の有資格者は、現職に囲い込まれたまま次の現場へ移っていきます。
その結果、「若手が欲しい」と言っている会社で実際に決まるのは40代後半から50代が中心、という現象が起きます。全国展開の大手ゼネコンでも同じ壁に当たり、50代の積極採用に切り替える動きが出ています。
「本音は媒体で採用コストを抑えたい。それでも施工管理は媒体では決まらない」。100社以上の建設会社の採用担当から、繰り返し聞いてきた言葉です。
転職サイトに登録していない人とは、そこで何か月待っても出会えません。探しても見つからないのは、母数そのものが30年で3割減っているからです。
人が減った3つの原因
原因は3つあり、どれか1つが解消しても人手不足は残ります。
高齢化で大量退職が近づいている
建設業の年齢構成は偏りが大きく、55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまります。全産業の32.4%・16.9%と比べると、高齢層が多く若手が少ない構成です。
| 区分 | 29歳以下 | 55歳以上 |
|---|---|---|
| 建設業 | 11.7% | 36.7% |
| 全産業 | 16.9% | 32.4% |
※2024年時点。出典:国土交通省「国土交通白書2025」(総務省「労働力調査」より国土交通省作成)
国土交通省は、今後、高齢就業者の大量退職と少子化による若年者の入職の減少が見込まれるとしています。世代交代は、他産業より一足早く訪れます。
若手が入らず他産業に流れている
少子化だけが理由なら、どの産業も採用は同じように苦しいはずです。実際には、若手は条件を比べたうえで他産業を選んでいます。
差がはっきり出るのは休日です。建設工事全体では「4週6休程度」が最も多く、「4週8休(週休2日)以上」を確保できている割合は次のとおりです。
| 区分 | 4週8休(週休2日)以上の確保 |
|---|---|
| 公共工事 | 約3〜4割 |
| 民間工事 | 約1割強 |
※2023年度の調査。出典:国土交通省「国土交通白書2025」
民間工事が中心の会社では、10社に1社ほどしか毎週2日の休みを実現できていない計算になります。土曜稼働が前提の現場は今も多く、求人票に書かれている条件と実態が一致しないケースもあります。
完全週休2日制・週休2日制・4週8休は、それぞれ別の制度です。年間休日数は近くても休みのリズムが違うため、入社後に「話が違う」となる原因になります。
賃金にも差があります。建設業生産労働者の年間平均賃金は432万円で、全産業労働者の508万円(非正規を除く)を76万円下回ります(2023年。出典:国土交通省「国土交通白書2025」)。
労働時間も他産業より長く、建設業の年間の平均労働時間は2,018時間で、他産業と比べて62時間ほど長い水準です(2023年度。出典:国土交通省「国土交通白書2025」)。
そこに、きつい・汚い・危険という3Kのイメージが重なります。現場環境の改善は進んでいますが、進路を選ぶ学生とその親世代のイメージが変わるには時間がかかります。イメージの実際と対策は建設業の3Kの記事で扱っています。
休日も賃金も他産業に届いていない状況では、若手が別の産業を選ぶのは自然な判断です。待遇と働き方が変わらない限り、この流れは止まりません。
2024年問題で働ける時間が減った
人数が同じでも、1人が働ける時間が減れば、回せる現場の数は減ります。
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。労働基準法により、時間外労働は原則として月45時間・年360時間までです(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第36条)。
それまでの残業に頼った工程管理ができなくなり、同じ工事量をより少ない労働時間でこなすことになりました。人数は変わっていなくても、現場に使える時間は減っています。
2024年問題そのものの整理と採用の対策は、建設業の2024年問題の記事にまとめています。
2030年に向けて起きる4つの変化
人が減る流れは、2030年代まで続きます。団塊世代はすでに後期高齢者になり、働き手になる世代の人口も減っていきます(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」令和5年推計)。
いまの採用の難しさが、この先は当たり前になります。
ベテランの引退で技術が途絶える
いま55歳以上が36.7%を占めています。今後5年から10年で、引退が集中します。人数が減るだけでなく、現場で判断できる人がいなくなります。
現場の段取り、納まりの調整、協力会社との交渉といった判断は、マニュアル化されていない部分が大きく、引き継ぎの機会がないまま失われます。若手が育っていない会社では、この影響がそのまま施工品質と工期に出ます。
いまのうちに、50代の技術者へ若手の指導役を兼ねてもらい、判断の基準を記録に残しておいてください。どちらも引退の直前に始めては間に合いません。
人件費と採用単価が上がり続ける
公共工事設計労務単価は、2026年3月から適用される単価で全国全職種の単純平均が4.5%引き上げられ、14年連続の上昇となりました。加重平均額は25,834円で、初めて25,000円を超えています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。
労務単価が上がれば、技能者の賃金に回せる原資は増えます。同時に、会社が負担する人件費もこの先上がり続けます。
採用単価も同じように上がります。求人倍率が高い状態が続けば、媒体の掲載費も紹介手数料も上がり、年収の提示水準も上がります。いま採るコストより、3年後に採るコストのほうが高くなる前提で計画を立てる必要があります。
人手不足倒産がさらに増える
帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査」によると、2025年の人手不足倒産は427件と3年連続で過去最多を更新しました。業種別では建設業が113件で最も多く、全体の約4分の1を占めています。
受注があっても、担う人がいなければ事業は続けられません。人手不足倒産の多くは、赤字ではなく人員不足を理由に事業継続を断念した会社です。
技術者1人の退職が引き金になるケースもあります。監理技術者を配置できなくなれば、その時点で受注できる工事の範囲が狭まるためです。
受注できても着工できない
工事量に対して人が足りない状態が続くと、受注しても着工できない、あるいは受注そのものを見送るという判断が増えます。
人手不足の影響は、まず残業と休日返上に出ます。しかし2024年問題で時間外労働に上限がついたため、その逃げ道が使えなくなりました。そこで工期が延び、受注を絞ることになります。
配置できる技術者の数が、そのまま売上の上限になります。すでに一部の会社で起きていることです。人が採れるかどうかは、事業計画を立てる段階から関わってきます。
4つとも、数年先にいきなり始まるものではありません。すでに現場で起きていて、いまのうちにできることもあります。
| この先起きること | いまできること |
|---|---|
| 技術が途絶える | 50代に指導役を兼ねてもらう。判断の基準を記録に残す |
| 人件費と採用単価が上がる | 賃金の原資を工事の見積りに織り込む |
| 人手不足倒産が増える | 技術者1人の退職で受注できる範囲がどこまで狭まるか把握する |
| 受注できても着工できない | 配置できる技術者の数から売上計画を逆算する |
どれも、必要になってから始めたのでは間に合いません。
工種ごとに違う採用の壁
業界の流れは全社に共通しますが、採用が止まる場所は工種によって違います。有資格者が市場にいない工種もあれば、経験の中身がズレて決まらない工種もあります。理由が分かれば、求人の条件をどこから広げるかも決まります。
| 工種 | 有資格者の数 | 経験のズレ | 未経験からの育成 | 最初に広げる条件 |
|---|---|---|---|---|
| 建築 | 少ない | 起きることがある(RC・S造・木造) | 育てにくい | 年収の上限と資格レベル |
| 土木 | 少ない | 起きにくい | 育てやすい | 1級必須(技士補・2級へ) |
| 電気工事 | かなり少ない | 起きやすい(強電と弱電) | 育てにくい | 資格(第2種・無資格まで) |
| 電気通信工事 | かなり少ない | 起きやすい(通信領域の細分化) | 育てやすい | 資格必須をやめる |
| 管工事 | かなり少ない | 起きやすい(空調・給排水・プラント) | 育てやすい | 経験年数と資格 |
自社の工種のところを、特に読んでみてください。
建築施工管理は1級とRC経験で年収1000万円台
建築施工管理では、1級施工管理技士とRC造の経験を併せ持つ人材に、年収1000万円以上のオファーが出ています。中小企業が給与の絶対額で競っても、条件面で並ぶのは簡単ではありません。
建築は土木や管工事に比べて、そもそも転職市場での動きが鈍い傾向があります。工事が長期にわたり、途中で抜けにくいためです。
そのため「1級必須」で募集をかけても、該当者が市場に見当たらない状態が続きます。年齢や経験の幅を広げるところから動く会社が多いのが実情です。
給与で並べない会社が選ばれる理由は、労働時間の実態開示、協力会社との関係の良さ、生活時間の確保といった条件面にあります。詳細は建築施工管理が採用できない理由の記事にまとめています。
土木施工管理は専任配置義務で市場に出てこない
土木では、公共工事の専任配置義務が採用の壁になります。一定規模以上の公共工事では監理技術者・主任技術者を現場に専任で配置する必要があるため、有資格者が現職に固定され、工事が終わるまで動けません。
つまり土木の有資格者が市場に出てこないのは、本人の転職意欲の問題ではなく、制度上そうなっているという面があります。求人票を磨いても、動ける状態の人がいなければ応募は増えません。
一方で土木は、未経験や経験の浅い層を育てて配置できる有資格者を増やす道が比較的取りやすい工種です。技士補(第一次検定合格者)を採用して配置の余裕を作る方法もあります。
詳しくは土木施工管理が採用できない理由の記事で扱っています。
電気工事施工管理は第1種と1級の重複保有が少ない
電気工事施工管理で各社が求めるのは、次の3つを併せ持つ層です。
- 第1種電気工事士
- 1級電気工事施工管理技士
- 現場代理人の経験
この3つが重なる人材は、そもそも母数が限られます。
さらに電気工事には強電と弱電という領域の違いがあり、経験の中身がズレると書類選考で落ちます。「電気の経験あり」で応募が来ても噛み合わない、という事態が起きやすい工種です。
現実的なのは、資格の条件を外して実務経験で母集団を広げることです。第2種のみの人や、無資格でも実務経験のある人をどこまで受け入れるかを先に決めておくと、選考が進みます。
条件の広げ方は電気工事施工管理が採用できない理由の記事に整理しています。
電気通信工事施工管理は資格新設が2019年
電気通信工事施工管理技士は2019年に新設された資格です(出典:国土交通省「電気通信工事施工管理技術検定」)。制度そのものが新しく、有資格者の絶対数がまだ少ないままです。
一方で需要は伸びています。5G基地局、データセンター、光ファイバー網の整備が同時に進み、工事量に対して担い手が追いついていません。
有資格者を待つ採用は成立しにくいため、資格必須をやめて経験重視に振り切る判断をした会社もあります。電気・通信・インフラといった隣接領域からの転換採用も現実的な選択肢です。
ただし通信系出身者は現場環境のギャップで早期に離れやすい面があるため、受け入れ方の設計とセットで考える必要があります。詳しくは電気通信工事の施工管理が採用できない理由の記事をご覧ください。
管工事施工管理は1人に5〜6社が競合する
管工事施工管理は、有資格者1人に対して5〜6社が競合する状態が続いています。応募があっても、他社と並んだ時点で条件勝負になります。
加えて、管工事は経験領域が細かく分かれます。空調、給排水衛生、プラント配管では現場の進め方が違うため、「管工事経験者」として応募が来ても中身がズレることが珍しくありません。
ドンピシャの経験者を待ち続けた結果、4年募集して採用ゼロという会社もありました。隣接工種や経験の浅い層から採り、資格は入社後に取ってもらう前提に切り替えるほうが現実的です。
具体的な設計は管工事施工管理が採用できない理由の記事にまとめています。
人手不足への5つの対策
条件の広げ方も含めて、対策は5つあります。どれも建設業でよく挙がるものですが、効果が出るまでの時間も、かかる費用もそれぞれ違います。
| 対策 | 効果が出るまで | かかる費用 | 着手のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 賃金と休日の見直し | 中期(半年〜) | 大きい | すぐ動ける(実態を数字にするところから) |
| 業務のデジタル化 | 短期(数か月) | 中くらい | すぐ動ける(1業務に絞れば) |
| 採用の対象と届け方 | 短期(数週間〜) | 中〜大きい | すぐ動ける(条件の見直しは即日できる) |
| 外国人材の受け入れ | 長期(半年〜1年) | 大きい | 準備が必要(要件整備が前提) |
| 助成金と制度の活用 | 中期 | 小さい | 準備が必要(要件確認から) |
※期間と費用は目安です。自社の規模や工種によって変わります。
すぐ動かせるのは、採用の条件を見直すことと、負担の大きい1業務をデジタル化することです。賃金と外国人材は成果が出るまで時間がかかるので、今日決めて仕込みだけ始めておいてください。
賃金と休日を見直す
若手が他産業へ流れる理由は休日と賃金です。ここに手をつけないと母集団は増えません。民間工事で4週8休以上が約1割強という状態が変わらない限り、条件比較で選ばれない状態が続きます。
現実的な一歩は、まず自社の実態を数字にすることです。
- 年間休日数
- 4週あたりの休日
- 繁忙期の残業時間
この3つを出したうえで、求人票の記載と一致しているかを確認します。
求人票の条件と実態がズレていると、採用できても定着しません。実態が他社より弱いなら、隠さずに改善の予定とセットで出すほうが、入社後の「話が違う」を減らせます。
労務単価の上昇分を技能者の賃金に反映できているかも、あわせて確認してください。
紙と電話の業務をデジタル化する
1人が働ける時間が減ったのに、仕事の進め方が紙と電話のままだと、しわ寄せは残業と休日に集まります。
現場の手間を減らす道具は、この数年で実際に使えるものが増えました。施工管理アプリでの写真・図面共有、電子黒板、遠隔臨場といった仕組みで、現場と事務所の往復や書類作成の時間を減らせます。
2024年12月13日施行の改正建設業法により、一定の条件を満たせば監理技術者・主任技術者が2つの現場を兼務できるようになりました。主な条件は次のとおりです。
- 請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)
- 現場間の移動時間がおおむね2時間以内
- 下請次数が3次まで
- 現場に連絡員を配置している
- ICTを活用して現場の状況を確認できる
※出典:国土交通省「監理技術者等の専任義務の合理化・営業所技術者等の職務の特例」
さらに2025年2月1日からは、専任配置が必要となる請負代金の基準が4,000万円から4,500万円(建築一式工事は8,000万円から9,000万円)に引き上げられています(出典:国土交通省「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」)。
デジタル化を進めると、業務時間が減るだけでなく、限られた有資格者を複数の現場に配置できるようになります。全部を一度に導入する必要はないので、負担の大きい作業を1つ選んで置き換えるところから始めてください。
採用の対象と届け方を変える
多くの会社が狙う「30代・経験あり・資格あり」は、市場で最も少ない層です。要件と届け方を変えない限り、応募はゼロのままです。
1つ目は対象の広げ方です。若手一択をやめ、50代・シニア、未経験、隣接分野の経験者まで対象を広げると、出会える母集団が変わります。
50代は定年までの年数を懸念されがちですが、若手への技術指導役を兼ねてもらえば、教育が回らない悪循環を断つ役割を担えます。
2つ目は届け方です。転職サイトに登録していない層に会うには、待つ採用から動く採用への切り替えが必要です。人材紹介やスカウトを併用すると、媒体では出会えない経験者との接点を作れます。
採用手法の選び方や進め方の全体像は、建設業の採用の記事で詳しく扱っています。
外国人材の受け入れを整える
特定技能などの在留資格を持つ外国人材も、母集団を広げる選択肢の1つです。ただし建設分野には他産業にない独自要件があります。
建設分野で特定技能の外国人を受け入れるには、次の4つを満たす必要があります。
- 建設業許可を受けている
- 建設技能人材機構(JAC)に加入している
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録している
- 建設特定技能受入計画について国土交通大臣の認定を受けている
※出典:国土交通省「特定技能制度(建設分野)」、JAC(建設技能人材機構)
4つ目の受入計画の認定は、入管への在留資格申請より前に必要です。ここを後回しにすると手続き全体が止まります。
手続きの期間も長く、就労開始までに半年程度を見込んでおくのが安全です。明日からすぐ人が増える手段ではないので、中期の計画に織り込んでおいてください。
2027年4月には育成就労制度が施行され、技能実習制度は廃止される方向です。制度の詳細は変わりうるため、実際に進める前には出入国在留管理庁・国土交通省・JACの最新情報を確認してください。
使える助成金と制度を確認する
採用と育成の環境整備には、公的な支援制度を使える場面があります。代表的なものは次の2つです。
- 人材確保等支援助成金(雇用管理制度の整備など)
- 人材開発支援助成金(技能講習・資格取得などの訓練費用)
いずれも建設業で活用されていますが、支給要件やコースの改定が多い分野です。要件を満たすつもりで進めて対象外だった、とならないように、厚生労働省の公式情報や社会保険労務士への相談で最新の内容を確認してください。
担い手3法の改正により、適正な労務費の確保や工期の適正化に関するルールも整備が進んでいます(出典:国土交通省「第三次・担い手3法」)。発注者との交渉材料として使える部分があるので、あわせて把握しておいてください。
自社はどこから手をつけるか
業界の原因と自社の課題は別物です。同じ「人が足りない」でも、どこで止まっているかは会社によって違います。
自社の人手不足は、「採用」「定着」「生産性」の3タイプに分けると整理できます。次の表で当たりをつけてください。
| タイプ | 起きていること | 最初に見る数字 | 最初の一歩 |
|---|---|---|---|
| 採用の問題 | 応募がゼロか、来ても要件と合わない | 直近1年の応募数・媒体別の応募単価 | 求人要件の年齢・経験の枠を1つ広げる |
| 定着の問題 | 入社しても早期に辞め、穴埋めが追いつかない | 直近3年の退職者数・退職理由 | 直近3年の退職理由を一覧にする |
| 生産性の問題 | 人は辞めないが、1人当たりの業務量が限界 | 残業時間・書類作業に使う時間の割合 | 負担の大きい書類作業を1つデジタル化する |
3つのタイプは重なることも多いですが、全部を一度に直そうとすると何も進みません。受注を断った件数と退職で失った人数を金額に置き換え、残業代と並べると、優先順位を決められます。
応募が来ないタイプ
求人を出して数か月応募ゼロ、あるいは応募は来ても経験・資格が噛み合わない状態です。このタイプは、求人票の手直しより先に、募集の設計そのものを見直す必要があります。
同じ求人を同じ媒体に出し続けても結果が変わらないのは、見ている場所に経験者がいないからです。施工管理の経験者は転職サイトにほとんど出てこず、市場に出てくる求職者は20代と50代に偏っています。
まず取りかかるのは、採用の対象と届け方の見直しです。求人の条件を1つ広げる、人材紹介やスカウトを併用する、という2点から着手すると変化が出やすくなります。
すぐ辞めるタイプ
採用はできているのに、3年以内に辞めていく状態です。このタイプで採用だけを強化しても、穴の開いたバケツに水を注ぐことになります。
定着を左右するのは、待遇・休日・キャリアパス・人間関係の4つです。なかでも建設業で多いのは、次の3つです。
- 求人票の条件と入社後の実態のギャップ
- 配属現場や指導者の当たり外れ
- 評価と昇給の道筋が見えない
対策は、辞めた理由の見える化から始まります。直近3年の退職者が辞めた理由を一覧にすると、現場が遠い、休みが取れない、評価が見えないといった内容が並び、給与以外にできることが具体的になります。
早期離職を1人減らせば、採用を1人成功させたのと同じです。しかも紹介手数料も広告費もかかりません。
横浜・川崎で未経験者を主力に育てている建築・土木の会社は、社員持株制度を土台に賞与6〜7か月分の実績を出し、平均勤続年数は16年に達しています。
給与の絶対額で勝っているわけではありません。長く働くほど報われる仕組みがあり、未経験者を焦らせず育てる文化が根づいています。
離職が起きる原因と定着施策の詳細は、建設業の離職率の記事に整理しています。
人はいても回らないタイプ
人は辞めないのに、1人が抱える現場数や書類量が限界に達している状態です。このタイプは、人を増やす前に業務の削り方を見直す余地があります。
現場と事務所の往復、工事写真の整理、報告のためだけの本社出勤といった時間は、1つずつは小さくても、積み上がれば1人分の労働時間になります。
先に手をつけるのは、紙と電話の業務のデジタル化です。あわせて、社用車の持ち帰りを認めて直行直帰を基本にする、報告のためだけの出勤をなくすといった働き方の見直しも効果があります。
残業の少なさや帰宅時間の早さは求人の訴求材料にもなるため、生産性の改善は採用と定着にもつながります。
まとめ|自社の工種とタイプから決める
この記事の要点は次の4つです。
- 建設業就業者はピークから約3割減り、有効求人倍率は全職業平均の約5倍。高齢化による大量引退、若手の他産業流出、2024年問題という3つの原因が同時に進んでいる
- 2030年に向けては、技術が途絶える、人件費と採用単価が上がる、人手不足倒産が増える、受注を絞らざるを得なくなる、という4つが重なる
- 採用の難しさは工種で違う。有資格者が市場にいないのか、経験の中身がズレているのかで、広げる条件が変わる
- 対策は賃金と休日・デジタル化・採用の見直し・外国人材・制度活用の5つ。自社の課題を採用・定着・生産性の3タイプに切り分けると、着手する順番が決まる
市場の構造は1社では変えられません。それでも、募集の広げ方や辞めない仕組み、現場の回し方は、自社の判断で見直せます。
とはいえ、媒体に出しても施工管理が来ない、若手が欲しいのに決まらないという壁を、自社の工夫だけで越えるのは簡単ではありません。TEAM-Xは、施工管理・建設技術者に特化した人材紹介に加えて、採用戦略の設計や求人媒体の運用、採用ブランディングまで、建設業の採用全般を支援しています。
媒体に出てこない経験者との接点づくりから、求人の見せ方や要件の見直しまで、自社の状況に合わせた形で伴走します。採用・定着・生産性のどこから始めるか整理したい段階でも、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 建設業の人手不足はいつまで続きますか?
A. 少なくとも数年で自然に解消する見込みは薄いと考えられます。国の推計では生産年齢人口の減少が今後も続くうえ、建設業では55歳以上が36.7%を占めており、ベテラン世代の大量引退がこれから本格化します。待てば楽になる前提ではなく、採用・定着・生産性の3つの面で自社の体制を先に整えておくことが現実的な備えになります。
Q. 建設業のなかで、特に人が採れない工種はどれですか?
A. 有資格者の絶対数という点では、電気工事・電気通信工事・管工事が厳しい状況です。電気通信工事施工管理技士は2019年に新設された資格で有資格者がまだ少なく、電気工事は第1種電気工事士と1級の重複保有者が限られます。管工事は有資格者1人に5〜6社が競合します。土木は専任配置義務で有資格者が動きにくい一方、未経験からの育成が比較的取りやすい工種です。
Q. 若手が来ないので50代の採用を迷っています。現実的ですか?
A. 現実的です。転職市場に出てくる求職者は20代と50代に偏っており、50代の経験者・有資格者は貴重な戦力になります。定年までの年数を踏まえた役割設計(若手への技術指導を兼ねる等)と、体力面に配慮した現場配置をセットで考えると定着しやすくなります。年齢で線を引くより、資格・経験と自社の案件との相性で判断するのがおすすめです。
Q. 監理技術者が足りません。1人で複数現場を見てもらうことはできますか?
A. できます。2024年12月13日施行の改正建設業法で、2つの現場の兼務が認められるようになりました。請負代金1億円未満(建築一式工事は2億円未満)、現場間の移動時間がおおむね2時間以内、下請次数3次まで、連絡員の配置、ICTの活用が主な条件です。ただし細かい定めがあるため、自社の工事が当てはまるかは国土交通省の最新の運用基準で確認してください。
Q. 人手不足対策に使える助成金はありますか?
A. あります。例えば人材確保等支援助成金(雇用管理制度の整備等)や人材開発支援助成金(技能講習・資格取得などの訓練費用)は建設業でも活用されています。ただし支給要件やコースは改定が多いため、最新の内容は厚生労働省の公式情報や社会保険労務士への相談で確認してください。
※本記事の統計・制度情報は2026年8月時点のものです。制度の要件は変更される場合があるため、実際の手続きの前に各公式情報をご確認ください。
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Author

高谷 匠TAKATANI TAKUMI
取締役COO
新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。

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