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建設業の人手不足はなぜ?|求人を出しても来ない本当の理由と対策

UPDATED 2026.07.15AUTHOR 高谷 匠
高谷 匠

高谷 匠取締役COO

事業戦略と組織構築を統括するCOO。

建設業では、人手不足が経営を左右する問題になっています。人がいないから受注を断る。ベテランが辞めたら技術が途絶える。求人を出しても応募が来ない。こうした場面が、規模を問わず多くの会社で起きています。

2024年問題や人手不足倒産という言葉は耳にしても、では自社は何をすればいいのかとなると、答えに詰まる方は少なくありません。この記事では、人手不足がなぜ起きているのかを最新データと出典つきで整理しています。そのうえで自社の人手不足を3つのタイプに切り分け、タイプごとに原因と今日から動ける対策までまとめています。

「うちの人手不足は何が原因なのか」「どこから手をつければいいのか」とお悩みの方は、自社のケースに当てはめながら、ぜひ最後まで目を通してみてください。

目次
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建設業の人手不足の原因3選

建設業の人手不足とは、工事の需要に対して施工管理や職人など現場を担う人材の供給が追いつかず、受注や工期に影響が出ている状態を指します。厚生労働省「一般職業紹介状況」(2026年5月分)によると、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は4.85倍。全職業平均(0.99倍)の約5倍で、1人の求職者を複数の会社で取り合う状況が続いています。

つまり、応募が集まらないのは自社の求人だけの問題ではなく、市場全体の需給ギャップです。このギャップが広がった原因は、大きく3つあります。

高齢化で大量に引退している

いま現場を回している中心は、10年後には現場にいない世代です。

建設業就業者数は、1997年の685万人をピークに減り続け、2025年平均では478万人(出典:総務省「労働力調査」)。ピーク時から約3割、200万人以上減った計算です。さらに年齢構成に偏りがあり、55歳以上が約37%を占める一方、その穴を埋めるはずの29歳以下は約12%にとどまります(2024年時点、出典:総務省「労働力調査」をもとにした国土交通省の集計)。

建設業就業者数ピーク(1997年)比
1997年685万人
2021年485万人約29%減
2023年483万人約29%減
2025年478万人約30%減

※出典:総務省「労働力調査」をもとに作成

しかも、失われるのは頭数だけではありません。段取りの組み方や納まりの判断、協力会社との関係といった、ベテランが現場で身につけた暗黙知も引退と同時に消えていきます。残った社員の負荷が増えるほど教育に時間を割けなくなり、若手がさらに育たない悪循環に入ります。

若手が入らず他産業に流れている

少子化だけが理由なら、どの産業も採用は同じように苦しいはずです。実際には、若手は条件を比べて他産業へ流れています。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」(2025年分)では、建設業の月間総実労働時間は159.8時間と、調査産業計の135.1時間を月25時間近く上回ります。年間に直すと約300時間の差です。土曜稼働が残る現場も多く、完全週休2日が当たり前になった他産業と比べると、休日面の見劣りは否めません。

そこに、きつい・汚い・危険という3Kイメージが重なります。現場環境の改善が進んでいても、進路を選ぶ学生やその親世代のイメージが変わるには時間がかかります。同じ初任給なら休みが多い産業を選ぶのは、若手にとって自然な判断です。待遇と働き方を変えない限り、この流れは止まりません。

2024年問題で働ける時間が減った

人が減っていなくても、1人が働ける時間が減れば、現場は同じようには回らなくなります。

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。労働基準法により、時間外労働は原則として月45時間・年360時間までです。それまでの残業に頼った工程管理ができなくなり、同じ工事量をより少ない労働時間でこなす必要が生じました。人数が同じでも使える総労働時間が減ったのですから、実質的な人手不足の加速です。

2024年問題そのものの整理と採用面の対策は、建設業の2024年問題の記事にまとめています。

さらにこの先には、団塊世代が後期高齢者となる2025年問題、生産年齢人口の減少が続く2030年問題が控えています。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(令和5年推計)でも、働き手となる生産年齢人口は2030年代以降も減り続ける見通しです。今は何とか回っている会社も、数年単位でベテランが抜ける前提で備える必要があります。

その行き着く先が人手不足倒産です。帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査」によると、2025年の人手不足倒産は427件と3年連続で過去最多を更新し、業種別では建設業が113件で最多、全体の約4分の1を占めました。受注はあっても、担う人がいなければ事業は続けられません。

ここまでが業界全体の構造です。ただし、データだけでは見えない実情もあります。次の章に、採用の現場で実際に起きていることをまとめています。

建設業の採用現場の課題2選

建設業の採用現場には、求人票や統計に出てこない課題が2つあります。TEAM-Xが2026年、100社以上の建設会社の採用担当者から直接聞いた話のなかで、繰り返し出てきた実情です。

施工管理は転職サイトに出てこない

採用担当者からよく聞くのは、「本音は媒体で採用コストを抑えたい。それでも施工管理は媒体では決まらない」という声です。地場の設備会社でも、複数エリアに展開するRC施工管理の会社でも事情は同じで、結局は手数料が高くても人材紹介に頼ることになります。

媒体で決まらないのには理由があります。1級クラスの技術者は工事の切れ目がなく、現職に囲い込まれたまま次の現場へ移っていきます。そもそも転職サイトに登録していない人とは、そこで何か月待っても出会えません。

見ている場所に経験者がいなければ、どれだけ求人票を磨いても応募は増えません。

若手が欲しいのに決まるのは50代

一方で、転職市場に出てくる求職者には年齢の偏りがあります。TEAM-Xの面談者データでは20代が約30%、50代が約26%と、この2つの層だけで半数を超え、30〜40代前半はほとんど出てきません。だから各社が「若手が欲しい」と言っても、実際に決まるのは40代後半〜50代が中心になります。全国展開の大手ゼネコンも同じ壁に当たり、いまは50代の積極採用に切り替えています。

若手を待つ採用には、そもそも市場に相手がいません。ここから先は、この前提に立って、自社の人手不足をタイプ別に切り分け、原因と対策を整理しています。

押さえておきたい人手不足の3つのタイプ

自社の人手不足は、「採用」「定着」「生産性」の3タイプに分けられます。業界の原因と自社の課題は別物で、同じ「人が足りない」でも会社によって詰まっている場所は違うからです。タイプが分かれば、どこから直せばいいかがはっきりします。

自社がどのタイプかは、次の表で当たりをつけられます。

タイプ起きていること最初に見る数字最初の一歩
1. 採用の問題応募がゼロか、来ても要件と合わない直近1年の応募数・媒体別の応募単価求人要件の年齢・経験の枠を1つ広げる
2. 定着の問題入社しても早期に辞め、穴埋めが追いつかない直近3年の退職者数・退職理由直近3年の退職理由を一覧にする
3. 生産性の問題人は辞めないが、1人当たりの業務量が限界残業時間・書類作業に使う時間の割合負担の大きい書類作業を1つデジタル化する

迷ったら、影響が最も大きい箇所から始めるのが効率的です。3つのタイプは重なることも多いですが、全部を一度に直そうとすると何も進みません。受注を断った件数と退職で失った人数を金額に置き換え、残業代と並べると、優先順位を決められます。ここから先は、自社に当てはまるタイプの章から読み進めてください。

1. 応募が来ない「採用の問題」

求人を出して数か月応募ゼロ、あるいは応募は来ても経験・資格が噛み合わない。このタイプは、求人票の手直しより前に、募集の設計そのものを見直す必要があります。

理由

同じ求人を同じ媒体に出し続けても結果が変わらないのは、見ている場所に経験者がいないからです。前章のとおり、施工管理の経験者は転職サイトにほとんど出てこず、市場に出てくる求職者は20代と50代に偏っています。多くの会社が狙う「30代・経験あり・資格あり」は、市場で最も少ない層です。要件と届け方を変えない限り、応募ゼロは市場の構造どおりの結果と言えます。

対策

変えるべきは、募集の対象と届け方です。

1つ目は対象の広げ方です。若手一択をやめ、50代・シニア、未経験、隣接分野の経験者まで対象を広げると、出会える母集団は大きく変わります。ニッチな工事分野で該当経験者が見つからず、隣接分野の経験者を転換育成で受け入れる大手ゼネコンもあります。未経験者を土木から育てる前提の地場の会社も同様です。50代は定年までの年数を懸念されがちですが、若手への技術指導役を兼ねてもらえば、教育が回らない悪循環を断つ人材にもなります。

2つ目は届け方です。媒体に出てこない層に会うには、待つ採用から攻める採用への切り替えが必要です。人材紹介やスカウトを併用すれば、転職サイトには登録しない経験者との接点を作れます。

採用手法の選び方や進め方の全体像は、建設業の採用の記事で詳しく扱っています。

なお、特定技能などの在留資格を持つ外国人材も、母集団を広げる選択肢の1つです。ただし受け入れ体制・教育・住環境の整備が前提となるため、明日からすぐ効くものではありません。採用や育成の環境整備に使える助成金もあるので、公式情報で最新の要件を確認しながら、中期の選択肢として検討してください。

2. 入ってもすぐ辞める「定着の問題」

採用はできているのに、3年以内に辞めていく。このタイプで採用を強化しても、穴の開いたバケツに水を注ぐことになります。辞めていく理由を減らすのが先です。

理由

定着を左右するのは、大きく待遇・休日・キャリアパス・人間関係の4つです。建設業で特に多いのは、求人票の条件と入社後の実態のギャップ、配属現場や指導者の当たり外れ、そして評価と昇給の道筋が見えないことです。辞めた理由を本人の根性の問題として片付けている間は、同じ理由で辞める人が続きます。

対策

対策は、辞めた理由の見える化から始まります。直近3年の退職者が辞めた理由を一覧にしてください。現場が遠い、休みが取れない、評価が見えないといった理由が並ぶと、給与以外にできることが具体的になります。早期離職を1人減らすことは、採用を1人成功させるのと同じ効果があり、しかも紹介手数料も広告費もかかりません。

TEAM-Xが求人をお預かりしている建設会社を見ても、定着している会社には共通点があります。横浜・川崎で未経験者を主力に育てている建築・土木の会社は、社員持株制度を土台に賞与6〜7か月分の実績を出し、平均勤続年数は16年に達しています。給与の絶対額ではなく、長く働くほど報われる仕組みと、未経験者を焦らせず育てる文化が定着を支えています。

離職が起きる原因と定着施策の詳細は、建設業の離職率の記事に整理しています。

3. 人はいても回らない「生産性の問題」

人は辞めないのに、1人が抱える現場数や書類量が限界に達している。このタイプは、人を増やす前に、業務の削り方を見直す余地があります。

理由

2024年問題で1人が働ける時間は減ったのに、仕事の進め方が紙と電話の時代のままだと、そのしわ寄せは残業と休日に集まります。現場と事務所の往復や工事写真の整理、報告のためだけの本社出勤といった時間は、1つずつは小さくても、積み上がれば1人分の労働時間を食い潰します。

対策

対策は2つあります。情報伝達のデジタル化と、働き方の見直しです。

現場の手間を減らす道具は、この数年で実用段階に入りました。施工管理アプリでの写真・図面共有や電子黒板、遠隔臨場など、紙と電話で回していた情報伝達をデジタルに置き換えるだけで、現場と事務所の往復や書類作成の時間が目に見えて減ります。全部を一度に入れる必要はありません。工事写真の整理など、負担の大きい作業を1つ選んで置き換えるところから始めてください。

働き方の見直しでは、社用車の持ち帰りを認めて直行直帰を基本にしたり、報告のためだけの本社出勤をなくしたりすることで、移動時間がそのまま現場の時間と生活の時間に変わります。残業の少なさや帰宅時間の早さは求人の訴求材料にもなるため、生産性の改善は採用と定着にもそのまま効いてきます。

まとめ|人手不足対策はタイプの見極めから

この記事の要点は、次の3つです。

  • 建設業の人手不足は、高齢化と大量引退、若手の他産業流出、2024年問題の3つが重なった構造的な問題で、数年で自然に解消する見込みは薄い
  • ただし、業界の原因と自社の課題は別物。自社の人手不足を「採用」「定着」「生産性」の3タイプに切り分けると、やるべきことが絞れる
  • 対策はタイプごとに整理できる。全部やろうとせず、自社への影響が大きい箇所から1つ着手する

市場の構造は1社では変えられません。それでも、募集の広げ方や辞めない仕組み、現場の回し方は、自社の判断で見直せます。

とはいえ、媒体に出しても施工管理が来ない、若手が欲しいのに決まらないという壁を、自社の工夫だけで越えるのは簡単ではありません。TEAM-Xは、施工管理・建設技術者に特化した人材紹介に加えて、採用戦略の設計や求人媒体の運用、採用ブランディングまで、建設業の採用全般を支援しています。媒体に出てこない経験者との接点づくりから、求人の見せ方や要件の見直しまで、自社の状況に合わせた形で伴走します。採用・定着・生産性のどこから始めるべきか整理したい段階でも、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

建設業の人手不足はいつまで続きますか?

少なくとも数年で自然に解消する見込みは薄いと考えられます。国の推計では生産年齢人口の減少が今後も続くうえ、建設業ではベテラン世代の大量引退がこれから本格化します。待てば楽になる前提ではなく、採用・定着・生産性の3方向で自社の体制を先に整えておくことが現実的な備えになります。

若手が来ないので50代の採用を迷っています。現実的ですか?

現実的です。実際の転職市場では求職者が20代と50代に偏っており、50代の経験者・有資格者は貴重な戦力になります。定年までの年数を踏まえた役割設計(若手への技術指導を兼ねる等)と、体力面に配慮した現場配置をセットで考えると定着しやすくなります。年齢で線を引くより、資格・経験と自社の案件との相性で判断するのがおすすめです。

人手不足対策に使える助成金はありますか?

あります。例えば人材確保等支援助成金(雇用管理制度の整備等)や人材開発支援助成金(技能講習・資格取得などの訓練費用)は建設業でも活用されています。ただし支給要件やコースは改定が多いため、最新の内容は厚生労働省の公式情報や社会保険労務士への相談で確認してください。

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高谷 匠

高谷 匠TAKATANI TAKUMI

取締役COO

新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。