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採用戦略

建設会社の採用ピッチ資料の事例31選|業態別の特徴と作り方

UPDATED 2026.07.15AUTHOR 高谷 匠
高谷 匠

高谷 匠取締役COO

事業戦略と組織構築を統括するCOO。

採用ピッチ資料を作ろうと検索すると、出てくる事例はIT企業ばかりで、建設会社が何を載せればいいのかはほとんど書かれていません。求人を出しても応募が集まらない。スカウトを送っても返信がない。ようやく会えた候補者に渡せるものが、営業用の会社案内しかない。建設会社の採用担当の方から、こうした声を数多く聞いてきました。

この記事には、業態別に整理した建設業界の採用ピッチ資料の事例31選と、TEAM-Xが100社以上の建設会社の採用担当者から直接聞いた話をもとに整理した、候補者に刺さる7つの訴求軸、載せる10項目の一覧、強みの洗い出しから作り方の手順までをまとめています。

「うちのような地場の会社に、載せられる強みなんてあるのだろうか」とお悩みの方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

目次
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建設業界の採用ピッチ資料の事例31選

採用ピッチ資料とは、事業内容・働き方・待遇・社風などを、求職者向けに透明性高くまとめた会社紹介のプレゼン資料のことです。建設業界でも、スカウトや人材紹介経由の候補者に会社を深く知ってもらう道具として、資料を公開する会社が増えています。

ここからは、実際にWeb上で資料を読める31社を、3つのグループに分けて整理します。

業態グループ社数
総合建設・工務店・住宅会社7社
専門工事・設備会社7社
建設テック・業界サービス17社

※掲載資料は2026年7月時点の公開情報をもとに整理しています。会社の判断で非公開になることがあるため、リンク先が閲覧できない場合はご了承ください。

総合建設・工務店・住宅会社の事例7社

まずは総合建設・工務店・住宅会社の7社です。地場や中堅の会社も並んでおり、「うちでも作れそうだ」という感覚をつかみやすいグループです。

澤村(滋賀・総合建設)

注文住宅から土木まで手がける滋賀の総合建設業です。売上63億円・従業員182名といった会社の数字を開示しながら、社風に合う人に来てほしいというメッセージを軸に構成されています。地方の総合建設業がそのまま下敷きにできる代表例です。

https://speakerdeck.com/sawamura_shiga/zhu-shi-hui-she-ze-cun-sawamura-hui-she-shao-jie

資料:株式会社澤村(SAWAMURA)会社紹介

平成建設(新築・リフォーム)

職人の育成とものづくりの理念を前面に出した構成で、資料から採用サイトへ読者を誘導する導線になっています。職人を社員として育てる方針を資料の軸に据えており、技能者の採用に力を入れたい会社向きの構成です。

https://speakerdeck.com/heiseikensetsu/company-info-f380c8a3-2622-49d6-8a26-5294f4d98fe8

資料:株式会社平成建設 会社説明資料

岡田工務店(工務店)

部署ごとの仕事内容や評価制度まで開示している工務店の事例です。リファラル採用専用版の資料も別に公開しています。社員が知人に「うちの会社、こんな感じだよ」と渡せる資料は、知り合いのつながりで人が動く建設業と相性の良い使い方です。

https://speakerdeck.com/okadakoumuten/zhu-gang-tian-gong-wu-dian-cai-yong-shuo-ming-zi-liao

資料:岡田工務店 採用説明資料

濱崎建設(福岡・土木/舗装/建築)

公共事業を中心とする福岡の建設会社です。地図に残る仕事のやりがいと、働き方改革の取り組みをあわせて訴求しています。公共工事中心の地場ゼネコンが、安定性とやりがいを両立して見せる型です。

資料:濱崎建設株式会社 会社紹介資料

IHIインフラ建設(橋梁・インフラメンテナンス)

「10ページでわかる」を掲げた、わずか10ページの超コンパクト型です。大手グループ系の事業内容を短く伝えることに徹しています。何十ページも作れないと感じている会社ほど、まず10ページから始めるこの割り切りが参考になります。

https://speakerdeck.com/iik/10fen-dewakaru-ihiinhurajian-she-tutedonnahui-she

資料:10ページでわかる「IHIインフラ建設」ってどんな会社?

オープンハウス・アーキテクト(木造・RC建築請負)

RC造・木造の施工管理や設計など、14職種以上を1本に載せた新卒・中途兼用の大型資料です。キャリアステップや従業員データも掲載されています。職種が多くて資料を分けきれない会社には、この1本型が現実的です。

https://speakerdeck.com/oha/open-house-architect-recruit

資料:OPEN HOUSE Architect RECRUIT

FREEDOM(建築設計・注文住宅)

設計4,000棟以上という実績を資料の背骨にした、採用兼用の会社紹介です(2025年公開)。実績の量がそのまま候補者への説得材料になっており、施工実績が豊富な会社ほど真似しやすい構成です。

https://speakerdeck.com/fdyabe/freedombirudozhu-shi-hui-she-hui-she-shao-jie-zi-liao-eb20c4f8-fa2a-4553-afe7-232ecfcd9aa0

資料:FREEDOM株式会社 会社紹介資料

専門工事・設備会社の事例7社

内装・舗装・地盤・塗装・設備・解体といった専門工事の分野でも、公開事例はあります。職人採用やニッチな業種の採用で悩んでいる方は、この7社から見てみてください。

ユニオンテック(内装・空間デザイン施工)

クロス職人出身の創業者のストーリーを軸に、売上101億円や人的資本投資(売上の6%)といった数字まで明示しています。資料名に【2026年版】と入れて、毎年更新を続けています。職人出身の経営者の語りは、現場出身の候補者にとって強い共感材料になります。

https://speakerdeck.com/uniontec2000/uniontec-company-deck

資料:ユニオンテック株式会社 Company Deck【2026年版】

博多装工(福岡・内装仕上工事)

中途入社90%・20代41%という人員構成データを開示した、職人採用向けの資料です。「中途でも馴染める」「若手もいる」を言葉ではなく数字で示す手法は、どの専門工事会社でもそのまま真似できます。

資料:博多装工 採用ピッチ資料

フタミ(大阪・道路舗装・特殊路面工事)

新国立競技場や清水寺参道といった著名な施工実績を前面に出し、専門工事の魅力を訴求しています(2026年公開)。「誰もが知っている場所を自分たちが施工した」という見せ方は、専門工事会社の鉄板の型になり得ます。

資料:株式会社フタミ 会社紹介資料

ジオテック(地盤調査・地盤改良)

45ページの資料内に採用ピッチ資料と明記し、土木施工管理など5職種を未経験歓迎で募集しています。地盤調査というニッチな業種だからこそ、業界そのものの説明に厚くページを割いています。

資料:ジオテック株式会社 会社紹介資料

ユウマペイント(塗装・リフォーム)

経営理念と企業文化を新卒向けに厚く語る、塗装会社では希少な公開事例です。数字よりも理念への共感を採用の軸に据えた構成に振り切っており、社風で選んでほしい会社に合う型です。

https://speakerdeck.com/yumapaint_recruit/yumapaint-company-profile

資料:株式会社ユウマペイント 会社紹介資料

ナカソネ住設(住宅設備メンテナンス)

TOTO正規代行店として住宅設備のメンテナンスを手がける会社です。FACTBOOKと採用ピッチ資料の2本立てで、資料名に版数(2024年9月版が最新)を明記して定期更新しています。版数を書いて更新し続ける運用は、作って放置を防ぐ仕組みとしてそのまま取り入れられます。

https://speakerdeck.com/nakasonejusetsu/cai-yong-pitutizi-liao-2023nian-10yue-ban-nakasonezhu-she-zhu-shi-hui-she

資料:ナカソネ住設 採用ピッチ資料

イボキン(解体・金属リサイクル)

解体業で採用ピッチ資料を公開している希少な事例です。解体施工管理職の募集内容が記載されています。解体・リサイクルのように候補者から仕事のイメージを持たれにくい業種ほど、資料で実態を見せる価値は大きくなります。

資料:イボキン 採用ピッチ資料

建設テック・業界サービスの事例17社

建設会社ではありませんが、建設業界の課題を候補者向けに説明するスライドの完成度が高いのがこのグループです。業界の構造をどう見せるか、職種別・用途別に資料をどう分けるか、というヒントが詰まっています。17社の特徴を次の表に整理します。

企業名事業資料の特徴
アンドパッド施工管理SaaS会社概要から業界課題、働く環境まで7章構成の網羅型
アルダグラム現場DX「KANNA」「3分でわかる」簡潔型。エンジニア向け版も別に公開
グローバ職人連携アプリ「クラフタ」マッチする人・しない人を明示したセルフスクリーニング型
スパイダープラス図面管理SaaS(上場)建設業の高齢化・長時間労働の課題提示から入る。職種別に資料を分割
フォトラクション写真・図面管理「30枚でわかる」と枚数を切った設計。組織図・選考ステップ入り
シェルフィー労務安全書類SaaS面談前の一次情報として、と資料の用途を明記
クラフトバンク工事マッチング多重下請構造など業界の構造課題の解説が厚い
建設AI(東大発)建設DXプロジェクトの実績と選考プロセスを掲載
ローカスブルー点群・土木3Dデータ8つの行動指針を軸にしたカルチャーブック型
野原グループ建材商社・建設DXBIM活用を軸に、業界のハブ機能を訴求
BPM建物・設備メンテDX採用面接時向けと用途を明記。施工×SaaSの二本柱を説明
マイホム工務店向けSaaSWe are hiringと題した採用特化の構成
MCデータプラス建設クラウド「グリーンサイト」タイトルに採用ピッチと明記し、版を更新し続けている
ツクリンク建設マッチング会社・事業・組織・環境・採用の5章構成。評価制度まで開示
BALLAS建材加工プラットフォーム事業紹介資料と採用向け会社案内を分けて公開
ヘイフィールド不動産・建設特化の人材紹介バージョン番号付きで更新し続ける運用
プレックス建設・物流などのHRテック売上・従業員数の推移を開示。新卒・中途の職種別紹介まで掲載

業態は違っても、31社とも数字と実態を隠さず載せています。次の章では、採用ピッチ資料を作るメリットを整理します。

採用ピッチ資料を作るメリット

「応募が来ない」「紹介の手数料が重い」「入っても長続きしない」。建設会社の採用担当の方から聞く悩みは、だいたいこの3つです。採用ピッチ資料を作るとどんなメリットがあるのか、この3つの悩みに沿って順番に見ていきます。

スカウトと紹介で候補者の熱量を上げる

施工管理や職人は、転職媒体に自分から出てくることが少ない職種です。TEAM-Xが2026年に、100社以上の建設会社の採用担当者から直接聞いた話でも、「媒体では応募が来ず、手数料が高くても紹介に頼らざるを得ない」という声が複数挙がっています。

そのため、数少ない接点の質をどう上げるかが勝負になります。スカウト文に資料のリンクを添付すれば、文面では書き切れない働き方や現場の実態まで一度に伝わり、返信後の面談の熱量が変わります。スカウト文面そのものの改善は、建設業のスカウト返信率を高める実践テクニックもあわせて参考にしてください。

人材紹介会社の担当者に資料を渡しておく使い方も有効です。エージェントが候補者に会社を推薦するとき、資料があれば会社の魅力を正確に語れるようになります。資料を読んで納得したうえで来る候補者は志望動機が具体的で、紹介経由の応募の質が上がります。

面接前の辞退と熱量低下を防ぐ

現職中の施工管理は多忙で、企業研究の時間がほとんど取れません。面接の2〜3日前に資料を送っておくと、当日の質疑が会社概要の説明ではなく、入社後の具体的な話から始められます。30分しかない面談の密度が変わります。

選考が進めば、次は社長面接です。候補者が最も身構える場ですが、資料の経営者メッセージで人柄が先に伝わっていれば、当日の心理的なハードルは下がります。TEAM-Xの採用支援でも、スカウト段階で社長のYouTube動画を共有して人柄を先に伝える運用をしており、資料の経営者紹介ページは同じ役割を果たします。

選考と並行して、候補者は家庭でも転職を相談しています。建設業の転職では家族の反対が隠れた壁になりやすく、働き方や待遇が整理された資料は、家族に見せて相談できる材料になります。

最後の山場は、最終面接から内定承諾までの期間です。ここで間が空くと、現職の引き止めで候補者の気持ちは冷めていきます。候補者の手元に資料が残っていれば、迷ったときに読み返してもらえます。

ミスマッチ応募と早期離職を減らす

「未経験可の求人を出すと、業界理解ゼロの応募が集中して、目を通すだけで手一杯になる」という悩みもよく聞きます。実際に、未経験者の推薦が月100人を超えて選びきれなくなっていた会社もありました。資料で仕事の実態を先に見せておけば、候補者の側で「自分には合わない」と判断してもらえます。応募の数は減っても、会うべき人の割合は上がります。

実態を見せることは、合う人を遠ざけないためにも効きます。求人票にみなし残業45時間とだけ記載すると、実際の残業が月30時間でも候補者に敬遠されます。制度の上限と実際の平均残業時間を分けて開示した資料があれば、この誤解は解けます。

入社後のミスマッチも同じです。同じ施工管理でも、巡回型か常駐型か、新築か改修かで毎日はまったく違い、この違いは求人票の職種名だけでは伝わりません。1日の流れや現場写真で実務まで見せておくことが、入社後のギャップを防ぎます。事例で紹介したグローバの「合わない人」の明示も、根っこは同じ発想です。入口の透明性が高いほど、早期離職は減ります。

メリットがわかったところで、次は肝心の中身です。次の章に、建設会社の資料に載せる項目を一覧にまとめています。

採用ピッチ資料に載せる10項目

この10項目を上から順にスライドにすれば、大枠は外しません。

#項目載せる内容
1表紙・目次社名・資料の目的・更新日
2会社概要・沿革創業年・拠点・地域で何を建ててきたか
3事業内容と施工実績工事種別・代表的な現場の写真
4数字で見る会社売上・社員数・平均年齢・資格保有者数
5働き方の実態残業・休日・転勤/出張の有無・直行直帰
6ある社員の1日・現場紹介タイムライン形式の1日・現場の種類
7待遇・福利厚生・資格取得支援給与レンジ・手当・支援制度の中身
8一緒に働く人と協力会社社員紹介・職人との関係
9求める人物像合う人・合わない人の両方
10募集要項・選考フロー職種別要項・面接回数・連絡方法

10項目は「会社・人・応募」の3ブロック

10項目は、大きく会社(概要・事業・理念)、人(社員・文化・働き方)、応募(求める人物像・募集要項・選考フロー)の3ブロックに分かれます。この順で組めば、候補者は「どんな会社か→どんな人がどう働いているか→自分はどう応募するか」と自然に読み進められます。

会社ブロックでは、理念の書き方だけ気をつけてください。ミッション・ビジョン・バリューといった横文字をIT企業の資料から借りてくるのではなく、会社が施工で何を大事にしているかを、専門用語を使いすぎずに書きます。沿革も年表の羅列ではなく、創業何年、この地域で何を建ててきたかを、施工実績の写真とセットで見せる方が伝わります。

経営者紹介は顔写真と、現場出身かどうか、そして一言があれば十分です。前の章で触れた、社長面接前のハードルを下げる役割を兼ねると考えると、書く内容が決まります。

働き方と現場の実態は必須

3ブロックのうち、建設会社の資料で差がつくのは人のブロックです。候補者は、入ったらどんな毎日になるのかをいちばん知りたがっています。知りたい中身は、担当エリア、直行直帰の可否、社用車の有無、1人あたりの並行案件数、現場の種類(新築か改修か、RC造か木造か)です。ここが具体的に書いてあるかどうかを、候補者は必ず見ています。

ある施工管理の1日を、タイムラインで見せてみてください。7:30現場入り、8:00朝礼、午前は巡回、昼は事務所で書類、18:30退勤。時刻付きの流れが1枚あるだけで、仕事のイメージは一気に具体的になります。

資格取得支援も、細かく書くほど差がつく項目です。受験費・講習費の負担範囲や合格報奨金といったお金の面と、業務時間を調整して勉強時間を確保するといった時間の面の両方を書いてください。金額だけの会社が多いなかで、両面あると本気度が伝わります。

現場写真は人が写っているものを選びます。重機や建物だけの写真では、候補者は自分がそこで働く姿を想像できません。なお、ここまで細かく書くと求人票と内容が重なりそうですが、求人票は要点の提示、ピッチ資料は深掘りという役割分担です。求人票側の書き方は施工管理の求人票の書き方にまとめています。

よく見せすぎない書き方

書く項目が決まったら、次は書き方です。たとえば「アットホームな職場です」と書きたくなったら、主要な協力会社との取引年数や、社員の紹介で入社した人数に直します。抽象的な形容詞は、数字や場面の裏付けがあって初めて候補者に届きます。

労働時間は、年間平均だけでなく繁忙期の実態も併記してください。候補者に選ばれる会社ほど、都合の悪い数字まで隠さず開示していて、その誠実さが候補者の信頼につながっています。具体的な開示の実例は、次の章の労働時間の軸で紹介します。

弱みも隠さず、今できていないことと改善の取り組みをセットで書きます。そのうえで、転勤を避けたい人には向かない、といった合わない人まで載せます。書くには勇気が要りますが、ミスマッチ応募を減らす効果は10項目のなかでいちばん大きい部分です。

項目と書き方が決まったら、あとは「うちは何を売りにするか」だけです。次の章の7つの訴求軸から、自社に当てはまるものを探してみてください。

候補者に刺さる7つの訴求軸

ここから紹介する7つの軸は、建設会社の人事や経営者が「うちの強み」として実際に候補者に語っている、TEAM-Xが直接聞いてきた内容を整理したものです。実名は伏せて業態で示しますが、数値はすべて実話です。

候補者が見るポイント実例の一言
労働時間と休日残業の実態・年間休日平均残業19.6時間を業界平均と対比
並行案件数と現場運営1人何現場持つか理想は1人1案件、最大でも2案件
勤務地・移動・直行直帰転勤・出張・通勤社用車1人1台・直行直帰が基本
待遇・福利厚生・資格取得支援制度の中身と実績福利厚生77個、資格費用全額負担
定着率・離職率入って続くのか中途1年離職率2.7%
協力会社との関係と人間関係職人と揉めないか協力業者との関係が転職の決め手
キャリアと成長機会技術者として伸びるか6年で所長デビューの育成設計

働き方の数字で語る軸

経験者の転職理由の中心は、年収よりも生活時間です。数字で語れる会社は、ここから書き始めるのが最短です。

労働時間と休日

数字は単独で置くより、対比があると生きます。ある地場ゼネコンは、平均残業19.6時間/月を業界平均の約50時間と並べて見せていました。同じ20時間前後でも、比較対象があるだけで凄みが伝わります。

RC造マンションの元請のように、全社平均19.3時間、繁忙期は30〜40時間まで上がる、と平均と繁忙期をセットで開示するパターンも効果的です。年間休日120日以上や完全週休2日は、建設業ではそれだけでスライド1枚を使う価値がある条件です。

並行案件数と現場運営

経験者が面接で必ず確認するのが、1人で何現場持たされるのかです。RC造専門の会社の人事は「理想は1人1案件、現状でも最大2案件まで」と明言していました。この一文が資料にあるだけで、掛け持ちで疲弊した経験者には刺さります。

体制で語る方法もあります。新築RC・S造を手がける会社は、予算管理や行政申請を本部が担い、現場業務に集中できる分業体制を訴求しています。RC造95%の会社のように、巡回管理で施工管理が自分で工程を組める運用や、現場を持たせすぎない方針を会社として明文化している例もあります。

勤務地・移動・直行直帰

転勤なし・出張なし・担当エリア限定(阪神エリア、23区と神奈川の一部など)の明示は、家族と生活を優先する層の目に留まります。社用車1人1台の貸与に通勤利用可、駐車場費用は会社負担で直行直帰が基本、という組み合わせは、経験者の毎日を具体的に変える条件です。

埼玉の建築会社のように、社員の9割が地元県民という事実を出す手もあります。都市部の人材は地方拠点になかなか来ない、という採用側の悩みの裏返しで、地元で働き続けられることは地場企業の立派な強みです。

制度と定着の実績で語る軸

働き方の数字の次は、制度と実績です。制度名の羅列ではなく、金額と実績まで書けるかが分かれ目です。

待遇・福利厚生・資格取得支援

管工事系の会社には、福利厚生77個と数で見せる例があります。中身も奨学金返済補助、誕生日休暇、家族へのカタログギフトと具体的です。RC造マンションの会社には、出産祝い金が1人目30万円・3人目300万円という、一度聞いたら忘れない制度もありました。

資格取得支援は、費用の全額負担や合格報奨金だけでなく、部門長が試験の成績を把握して業務時間を調整する、という運用まで語る会社がありました。ここまで書ける会社はまだ少数です。賞与は制度より実績です。賞与年3回・実績6ヶ月分のような数字は、どんな制度説明よりも説得力があります。

定着率・離職率

候補者の最大の不安は、入って続くのかです。木造ハウスメーカーの中途1年早期離職率2.7%、入社後10日間の学習期間と半年から1年のOJTで未経験定着率90%以上、といった数字はこの不安に直接答えます。インフラ系大手グループの平均勤続17.9年・平均有給取得16.1日のような長期雇用の実績も同様です。

数字に自信がない場合は、無理に載せる必要はありません。載せるかどうかは、次の章の洗い出しで判断できます。

人と成長機会で語る軸

数字で語れる条件が少なくても、人と成長の軸は残っています。

協力会社との関係と人間関係

施工管理の働きやすさは、職人との関係で大きく変わります。ある地場工務店の人事は、協力業者との良好な関係性が転職入社の決め手になっている、とはっきり語っていました。

主要工種で長期の継続取引、新規参入は社長承認制、といった運用の中身まで書くと生々しさが出ます。現場社員が前職の同僚を誘うリファラル採用が活発という事実も、働きやすさの何よりの裏付けです。

キャリアと成長機会

期間を示すのが効果的です。6年で所長デビューできる育成設計は、10年以上かかることが珍しくない業界では明確な差になります。

市場環境を踏まえた訴求もあります。RC造経験者の市場価値が高騰しているいま、未経験からRC造の経験を積める環境は、それ自体が候補者の将来の武器になります。安全・品質・工程・原価の4大管理を分業せず一貫して経験できる、外部デザイナー起用の物件でスキルの幅が広がる、といった技術者としての伸び方も強い軸です。

7つの軸を眺めて、「うちはどれを書けるだろうか」と感じた方も多いはずです。次の章に、それを1人で確かめるチェック表を用意しています。

自社の強みの洗い出し

7つの軸のうち自社が何を載せられるのかは、現場や経営層に聞いて回らなくても、人事台帳や勤怠データ、就業規則といった手元の資料だけで確かめられます。

9項目チェック

次の9項目を、手元の資料から埋めてみてください。目安は、建設会社が実際に候補者への訴求に使っていた水準をもとにしています。

#項目確認する資料そのまま載せられる目安
1平均残業時間勤怠データ月20時間台なら対比付きで前面に。40時間以上は単独で載せない
2年間休日就業規則・カレンダー120日以上なら見出し級
3並行案件数工事台帳・配置表1〜2案件なら明言する価値あり
4直行直帰・社用車社内規程認めているなら条件ごと具体的に
5転勤・出張の有無雇用契約・異動実績なしなら必ず明示
6資格取得支援の負担範囲制度規程全額負担+報奨金なら金額まで書く
7中途入社の1年定着率人事台帳90%以上なら数字で出せる
8平均勤続年数人事台帳10年以上なら長期雇用の証拠になる
9賞与の支給実績給与台帳年◯回・◯ヶ月分を実績で書けるか

埋め終わったら、項目ごとに3段階で判定します。そのまま載せる(青)、実態や対比の併記つきで載せる(黄)、数字では載せずに別の軸へ回す(赤)の3つです。この表は社内の説明資料にもそのまま使えます。

結果別の見せ方

チェックの結果は、そのまま資料の見せ方に落とし込めます。

青が5項目以上なら、数字を前面に出す構成です。表紙の次に「数字で見る会社」を置き、7つの軸の該当項目をスライド前半に集めます。黄が中心なら、平均と実態の併記、そして改善の取り組みをセットで書く誠実さ路線です。赤が中心なら、数字のスライドは最小限にして、数字以外の強みで組み立てます。その組み立て方が、次のテーマです。

数字で勝てない会社の戦い方

赤が中心だった、つまり数字では勝てない会社も、資料を諦める必要はありません。残業も休日も業界並みという会社の方が多いのが実情です。組み立ての方向は3つあります。

1つ目は人間関係です。協力会社との取引年数やリファラル入社の実績は、労務データに表れない働きやすさの証拠です。2つ目は成長機会で、担当できる工事の幅や資格支援を軸にします。3つ目は透明性です。繁忙期込みの正直な開示は、盛った資料が多い業界だからこそ、それ自体が差別化になります。

もうひとつ覚えておいてほしいことがあります。「うちには強みがない」の大半は、「数字の強みがない」という意味でしかありません。中途入社の社員に入社の決め手を聞くと、社長の人柄、面接の印象、職人との距離感といった、数字ではない答えが返ってきます。その集め方は次の章のSTEP2で扱います。

赤が多かったチェック結果には、もうひとつの使い道があります。労働環境の改善を経営に提案する材料です。採用資料づくりが働き方改革の起点になった、という話も実際に聞いています。候補者に見せられない数字は、社内で変えるべき数字でもあります。

自社の材料が見えたら、いよいよ作る工程です。

採用ピッチ資料の作り方5ステップ

作り方は次の5ステップです。

  1. 読ませたい候補者を1人に絞る
  2. 社員の入社理由から材料を集める
  3. 項目一覧の順に構成へ落とす
  4. デザインはテンプレートか外注で
  5. 公開して全チャネルで使い回す

業界を問わない作り方の基本は採用ピッチ資料の作り方に詳しくまとめています。この章では、建設会社に絞った進め方を扱います。

STEP1:読ませたい候補者を1人に絞る

経験者の施工管理と未経験の若手、そして職人では、刺さる情報がまったく違います。最優先ターゲットを1職種に絞ってから作り始めます。

参考までに、建設の転職市場は20代と50代に偏っています。50代にはキャリアアップを狙う層と、出張なしや土日休みなど生活時間を取りに来る層の2タイプがあり、後者には働き方の数字が最優先で刺さります。誰に読ませるかで、資料の前半に置くスライドが変わるわけです。

迷ったら、これまでどんな候補者に何と言って断られてきたかを書き出してみてください。断り文句の裏には、資料で先回りして答えるべき不安が隠れています。

STEP2:社員の入社理由から材料を集める

前の章の9項目チェックに加えて、中途入社の社員3〜5人に「なぜうちに決めたか」を15分ずつ聞いてください。その答えが、そのまま資料に書く言葉になります。TEAM-Xの採用支援でも、現社員の入社理由を言語化してスカウト文のフックに使う運用をしており、資料づくりでも同じ材料が核になります。

現場写真は、人が写っていて表情が見えるものを各現場から数枚ずつ集めます。安全書類用の記録写真では代用できません。社長や所長の一言も、この段階で先に集めておくと後の工程が楽になります。

STEP3:項目一覧の順に構成へ落とす

材料が揃ったら、10項目の一覧の順に空のスライドを並べ、集めた材料を配置してから文章化します。白紙の1ページ目から書き始めないことがコツです。

スライドの原則は1枚1メッセージです。書き込みすぎた1枚は2枚に割ります。そして最初から完成形を目指さず、20〜30ページで公開して更新で育てる前提に立ってください。

STEP4:デザインはテンプレートか外注で

内製なら、GoogleスライドやCanvaの無料テンプレートで、デザインの知識がなくても一定の見た目になります。

外注する場合の相場感として、制作会社hypexは公開料金で、ゼロからの新規作成(50ページ以内)約70万円、リニューアル約45万円、デザインのみなら1ページ5,000円、制作期間2〜3.5ヶ月と案内しています。料金は変動があるため、検討時は各社の最新の案内を確認してください。

判断基準はシンプルです。中身(訴求材料)は外注では作れません。中身を自社で固めてから、デザインだけを外注するのが最も費用対効果の高い分担です。

STEP5:公開して全チャネルで使い回す

置き場所は、採用サイト、求人票からのリンク、そしてSpeaker Deckなどのスライド共有サービスです。事例31選の多くもこの形で公開されています。

使う場面は、スカウトへの添付、人材紹介会社への提供、面接2〜3日前の事前送付、内定後の家族向け説明です。1本の資料が採用のあらゆる接点で働きます。

職人採用では、メッセージやWebを見ない候補者も多い前提で設計してください。紙に印刷して面接時に手渡す、求人チラシにQRコードを載せる、といったオフライン併用まで考えると取りこぼしが減ります。

最後に、公開前に決めておくことがひとつあります。更新の担当者と時期です。決算後や期初など、年1回以上の更新タイミングを決めてから公開してください。理由は次の章の失敗例につながります。

建設会社がやりがちな3つの失敗

最後に、先回りして潰しておきたい失敗を3つに絞って整理します。

IT企業の資料をそのまま真似る

検索で出てくる事例集はIT・SaaS企業が大半です。ミッション、バリュー、カルチャーといった横文字の章立てをそのまま持ち込んでも、現場経験者の頭に浮かぶのは「で、残業は?現場はどこ?」です。

建設の候補者がまず見るのは、働き方の数字と現場の実態です。スライドの順番を間違えると、後半に置いた肝心の強みまで読み進めてもらえません。参考にする資料は業態で選んでください。前半で整理した事例31選のような、建設系・ノンデスク系の事例が出発点になります。

実態より良く見せてしまう

盛った資料は、面接や入社後に必ず露見します。そしてギャップは早期離職として返ってきます。資料は良く見せる道具ではなく、正確に伝える道具です。

逆のパターンもあります。みなし残業45時間の例のように、制度の書き方だけで実態より悪く誤解されるケースです。良い方にも悪い方にも実態を書く、が原則です。全社平均だけでなく、繁忙期や現場による差まで開示している会社ほど面談での信頼が厚い、というのが採用担当者と話してきた実感です。

作ったまま放置する

残業や休日、定着率といった数字は、毎年変わります。2〜3年前の数字が残った資料は、透明性のための道具が逆に不信のもとになります。

対策は公開前に打てます。更新の担当者と更新タイミングを決めてから公開する、これだけです。ナカソネ住設のように資料名へ版数を入れておくと、更新が仕組みとして回りやすくなります。

効果は、スカウト返信率の変化や、面接で「資料を見ました」と言われる割合、応募経路のアンケートで確かめられます。読まれていない章がわかったら、入れ替えていきます。

まとめ|資料づくりは強みの洗い出しから

ここまで、建設業界の事例31選から、載せる10項目、7つの訴求軸、作り方までを見てきました。要点は5つです。

  • 建設業界の公開事例は31社。業態の近い会社から型を学べる
  • 候補者が見るのは、働き方の数字と現場の実態
  • 訴求の軸は7つ。数字で語れるものから書く
  • 材料の洗い出しは、9項目チェックで人事1人でできる
  • 中身は内製、デザインは外注。公開後は更新で育てる

最初の一歩は、9項目のチェック表を埋めることです。自社の数字を並べることで、資料に書くべきことと、社内で変えるべきことの両方が見えてきます。

とはいえ、「洗い出してみたが、載せられる強みが見つからない」「資料を作っても、そもそも届ける候補者がいない」という会社も少なくありません。候補者との接点づくりについては施工管理の人材紹介の活用も参考になります。

TEAM-Xは、施工管理・建設技術者に特化した人材紹介に加えて、採用戦略の設計や求人媒体の運用、採用ブランディングまで、建設業の採用全般を支援しています。2026年には100社以上の建設会社の採用担当者から直接話を聞き、各社の強みが候補者にどう届くかを見てきました。採用ピッチ資料に落とし込む前の、自社の強みの洗い出しの段階からでも伴走できますので、まずはお気軽にご相談ください(TEAM-X公式サイト)。

よくある質問(FAQ)

Q. 採用サイトと採用ピッチ資料は、どちらを先に作るべきですか?

A. 予算と速度の面で、採用ピッチ資料を先に作る会社が多く見られます。採用サイトの制作は費用と期間がかかるのに対し、ピッチ資料はスライドツールで内製でき、スカウト添付・人材紹介会社への提供・面接前送付と、サイトより使える場面が広いためです。資料で候補者の反応が良かった内容を後から採用サイトに反映すれば、サイト制作の失敗も減らせます。

Q. 何ページくらいにまとめればよいですか?

A. 決まった正解はなく、事例31選のなかでも10ページの超簡潔型(IHIインフラ建設)から40ページを超える網羅型まで幅があります。建設業の候補者は現場移動中にスマホで読むことが多いため、ページ数の多さよりも、1スライド1メッセージで最後まで読み切れるかを優先してください。迷ったら、10ページのIHIインフラ建設と「30枚でわかる」のフォトラクションが、読み切れる分量の目安になります。

Q. 施工管理と職人で資料は分けるべきですか?

A. 最初は1本で問題ありません。会社概要や働き方などの共通部分は同じで、職種によって刺さる箇所(施工管理なら並行案件数や分業体制、職人なら手当・キャリアパス・職人同士の関係)が違うだけなので、職種別の章を設けることで対応できます。応募が増えて、職種ごとに反応の差が出てきたら、そのとき職種別の2本に分ければ十分です。

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Author

高谷 匠

高谷 匠TAKATANI TAKUMI

取締役COO

新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。