施工管理の経験者に求人を出しても応募が来ない。人材紹介を使えば手数料が重い。それなら未経験を育てるしかないのでは、というところまで来ている採用担当の方は少なくありません。
ただ、未経験に踏み出した会社が次にぶつかるのは別の問題です。未経験の求人を出したところ、月に100人以上の推薦が集まり、毎日5人弱の書類に目を通す状態になった会社もあります。入社後の数か月で辞められた、という話も出ます。
未経験採用は、間口をどこまで広げるかより、どの未経験を主役に置くかで結果が変わります。読み進めると、自社に育成体力があるかをその場で確かめられます。そのうえで完全未経験と微経験のどちらを主役に置くかを決め、求人票の歓迎条件・年齢制限・年収表記を今日中に直せます。入社1年目の受け入れまで通して扱うので、これから踏み出す会社にも、一度試してうまくいかなかった会社にも使えます。
「未経験を採って、本当に続くのか」。そこで止まっている方は、目を通してみてください。
目次

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TEAM-Xの採用コンサル・RPOサービス概要資料
採用を戦略から立て直したい方へ
- 代行できる採用実務の範囲
- 目的に合わせて選べる3つのプラン
未経験採用が成立する会社の条件
未経験採用が成立するかどうかは、入社後に育てられるかで決まります。求人を出す前に、自社の受け入れ体力を確かめて、この後どの章から読むかを決めてください。
判断に入る前に、他社がどこまで踏み出しているかを置いておきます。TEAM-Xが扱っている建設業の求人のうち、経験レベルの記載がある533件では、未経験可としているものが24.4%、業界経験者限定が73.4%でした(2026年7月時点。複数の区分を選べるため合計は100%になりません)。未経験に間口を開けている求人は、全体の4分の1ほどにとどまります。
育成にかけられる時間と人を数える
確かめるのに他部署への確認は要りません。人事台帳と配属表を開けば、5つとも今その場で答えが出ます。
| 確認する項目 | 見る場所 | 赤信号のライン |
|---|---|---|
| 教えられる社員の数 | 人事台帳・資格者名簿 | 0人 |
| その社員の担当現場数 | 配属表 | 3現場以上 |
| 配属できる現場の件数 | 年間の受注一覧 | 年1件以下 |
| 資格の費用と勉強時間 | 就業規則・研修規程 | 制度が無い |
| 育成期間の人件費 | 人件費の予算 | 予算に枠が無い |
赤信号が1つでも点いたら、その項目を埋めるまで未経験の募集は止めておくほうが確実です。とくに1つ目と2つ目は代わりが利きません。教える人がいない現場に未経験を置くと、本人も周りも消耗します。
5項目がそろっている会社は、たいてい制度が立派なわけではありません。教える側の工数を採用計画に最初から組み込んでいるだけです。学習期間とOJTの具体的な組み方は6章目で扱います。
診断結果で進み方を3つに分ける
赤信号の出方で、進み方が3つに分かれます。分かれ目は教える人の有無と、配属先の有無の2つです。実務で詰まるのはこの2点で、残りの3項目は後から手当てできます。
- タイプ1(教える人と配属先がある):完全未経験まで受け入れられます。この後の章を順に読んでください
- タイプ2(教える人はいるが余力が薄い):完全未経験ではなく、微経験と隣接工種に絞ります。2章目と3章目が中心になります
- タイプ3(教える人も配属先も確保できない):今は未経験に進まず、経験者の要件を広げて試します。次の項で扱います
タイプ3は諦めではありません。未経験を受け入れる体制ができるまでのあいだ、経験者側でできることが残っています。
未経験の前に経験者の要件を広げる
経験者から応募が来ないから未経験へ、という順番で来た会社ほど、経験者側の要件をまだ動かしていないことがあります。
応募が来ない背景には市場の状況があります。厚生労働省「一般職業紹介状況」(2026年3月分)によると、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.65倍です(常用〈パート含む〉)。全職業の平均1.10倍のおよそ5倍で、1人の経験者に5社が同時に声をかけている計算になります。ここで1級必須のまま待っても、条件に合う人は現職から動きません。
広げる順番は決まっています。
- 1級必須をやめて、2級と技士補まで含める
- 資格がなくても実務経験のある層まで含める
- 自社の工種の経験を必須から外す
上から順に、応募してくる層が変わります。3つ目まで踏み込んでいる会社もあります。解体の案件が100%を占めていても、経験者に解体の経験までは求めていません。工程と原価を管理した経験があれば、扱う構造物は入社後に覚えられるという判断です。
人材紹介を使う場合、資格のレベルで料率を分けている会社もあります。施工管理に特化した人材紹介の手数料は年収の35〜60%が相場ですが、1級だけに絞らなければ、母集団と費用の両方が動きます。要件の広げ方をふくめて施工管理の採用そのものを組み直したい場合は、施工管理の採用で全体を扱っています。
完全未経験と微経験の違い
施工管理そのものが未経験でも、現場で何らかの仕事をした接点がある層がいます。この記事ではこれを微経験と呼び分けます。完全未経験と微経験を分けるかどうかで、求人票も選考も変わります。
微経験の立ち上がりが早い理由
微経験とは、施工管理の実務は未経験でも、現場に立った経験がある層です。土木や設備の作業、職人、現場事務、資材の搬入まで含みます。
この層は、現場の段取り、職人とのやり取り、工程と安全の感覚を体で知っています。ゼロから教える場合より早く現場に立てます。
差が出やすいのは入社後の早い時期です。未経験で辞める理由の多くは、仕事の難しさではなく現場環境そのものへの適応にあります。夏と冬の気候、朝の早さ、汚れる作業。これを知っている層は、ここで辞めません。完全未経験や異業種からの入社は夏冬の気候で早期に離れやすく、歓迎条件に軽くでも建設・建築の経験ありを入れた会社のほうが定着しています。
採用の現場でも、未経験より微経験を優先し、土木でも何でも現場で何らかの仕事をした人を先に見る、と方針を明言している会社があります。完全未経験を一律に受け入れるのではなく、現場接点のある層から先に手を挙げてもらう。この差が入社後に出ます。
微経験に当てはまる前職の範囲
求人票の歓迎条件を書くには、前職の名前まで落とす必要があります。
建設に隣接する前職は、電気工事、管工事、内装、土木作業、鳶、解体、資材メーカーの現場対応、設備メンテナンス、CADオペレーターです。図面と工程と安全のどれかに触れています。
建設の外からも入社しています。実際に多いのは店長、飲食、物流、営業、接客です。どの前職も、段取りを組むことと人に指示を出すことが日常業務に入っています。施工管理はコミュニケーションの量が多い仕事なので、営業と接客の経験は接続しやすくなります。
前職の名前を並べるだけでは求人票は書けません。段取り・人への指示・体を使う勤務時間帯の3つのうち、どれが自社の現場につながるかを1行ずつ添えてください。
完全未経験で確かめる動機の中身
完全未経験を選ぶ場合、経歴で判断できる材料がほとんど残りません。志望動機の中身が唯一の材料になります。
通らない動機はだいたい同じ形をしています。営業をやりたくない、手に職をつけたい、この2つで止まっているものです。どちらも施工管理でなければならない理由になっていません。
見たいのは、仕事の中身を調べたうえで選んでいるかどうかです。現場の勤務時間帯や天候の影響、移動の距離まで理解しているかは、聞き方を変えると出てきます。
面接ではこの3つをそのまま聞けます。
- 現場が始まる時間と終わる時間を、いつ調べましたか
- 雨の日の現場では何が起きると思いますか
- 前職の仕事のうち、施工管理でも使えそうなものは何ですか
給与の水準が高く、転職先として案内されやすい職種のため、動機の弱い応募も集まります。年齢で線を引くより、この3問で確かめるほうが精度が出ます。
未経験の母集団をつくる2つの入口
未経験の母集団は、どこから来る人を主役にするかを決めてつくります。2つの入口を、自社の育成体力が高い順に並べます。なお経験者と未経験では、そもそも求人を見ている場所が違います。ここから先は人の出どころの話で、どの媒体に出すかはFAQで扱います。
電気・設備・土木からの転換
同じ建設業のなかで工種をまたぐ転換です。施工管理の実務は未経験でも、図面と工程と安全の基礎が共通するため、立ち上がりが早くなります。
この入口が要るのは、経験者が市場にほとんどいない領域です。水道の施工管理を4年募集して、採用がほぼゼロだった会社があります。ニッチな分野ほど、隣接工種からの転換に頼ることになります。
新しい種目も同じです。電気通信工事の施工管理技術検定は2019年度(平成31年度)から実施された新設種目で、有資格者の絶対数がそもそも少ない状態です。ここも隣接工種からの転換が現実解になります。
転換組の年収には注意が要ります。施工管理としては未経験でも、前職での収入があります。未経験一律の金額をそのまま当てると前職より下がり、経験のある人ほど動きません。自社の未経験レンジと候補者の前職収入を突き合わせてから提示してください。
職人経験からの登用
職人として現場に立ってきた層を、施工管理の若手枠に迎える方法です。現場の段取りと職人とのやり取りは、教えなくても最初から持っています。元職人が入社1年ほどで役職に上がった例もあります。
ここで制度を1つ押さえておく必要があります。職人(建設業務労働者)そのものの有料職業紹介は、職業安定法第32条の11で原則として禁止されています。建設労働者の雇用の改善等に関する法律にもとづく認定を受けた建設事業主団体だけが例外で、2005年の制度創設以来、認定を受けた団体は4団体にとどまります(令和8年9月1日現在)。
ただし、この禁止は職人の紹介についての話です。施工管理職として採用するなら、通常の人材紹介で扱えます。同条が定める建設業務は「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務」で、対象は作業に係る業務です。施工計画を作成し、工程・品質・安全を管理する施工管理業務はこれに当たりません。境目は作業か管理かです。
制度の話はここまでで、実務で先に動かせるのは社内です。協力会社の職人や自社の技能職、過去に職人枠で応募してきた人といった、すでに接点のある層に、施工管理の若手枠があることを伝えるところから始められます。
未経験求人票で見直す3つの項目
未経験求人で手を挙げる人が変わるのは、仕事内容の説明を厚くしたときではありません。求人票のどこを直すと誰が動くのかを、影響の大きい順に3つ見ていきます。
歓迎条件で微経験を前に出す
施工管理未経験OKとだけ書くと、現場との接点がまったくない層まで呼び込むことになります。
足すのは一文です。歓迎条件に「軽くでも建設・建築・設備・電気・土木の現場経験がある方」と入れます。必須条件ではなく歓迎条件に置くのが要点で、完全未経験を外さずに微経験を前に出せます。
``` (before) 【応募条件】学歴不問/未経験歓迎/普通自動車免許
(after) 【必須】普通自動車免許(AT限定可) 【歓迎】軽くでも建設・建築・設備・電気・土木の現場経験がある方 段取りや工程の管理を含む仕事の経験がある方(業界は問いません) ```
経験者向けと未経験向けの求人は、同じページに混ぜないでください。求める資格も志向も違い、見ている媒体も別です。職種と経験の有無でページを分けると、どちらの読者にも届きます。
年齢制限は例外事由で判断する
未経験求人で30歳以下と書きたくなりますが、募集と採用の年齢制限は原則として禁止されています(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第9条)。
例外事由に当てはまれば上限年齢を設定できます。長期勤続によるキャリア形成を図る目的であること、期間の定めのない労働契約であること、職業経験を不問とすること、新規学卒者と同等の処遇とすることの4つが条件です(出典:厚生労働省「年齢にかかわりない募集・採用のために」)。
見落としやすいのは3つ目です。未経験歓迎と書きながら実務経験3年以上尚可を併記すると、職業経験を不問とする条件から外れます。自社の求人票にこの併記が残っていないか確かめてください。
例外に当てはまらない場合も、書き方は残ります。年齢のかわりに育成の前提を書く方法です。「入社後2年間の育成期間を前提とした募集です」と置くと、応募する側が自分の状況と照らし合わせられます。
年収は基本給と手当を分けて書く
未経験求人の年収表記は、手当込みの数字だけを出すと入社時の説明でずれが出ます。
未経験350万円スタートという表記が手当込みに見えて、実額は基本給350万円、住宅手当・家族手当・資格手当は別途、という求人があります。候補者への説明でいちばん誤解が生まれる箇所です。
分けて書く項目は3つです。基本給の年換算と、手当の内訳と金額、それに資格を取ったあとに上がる幅を並べます。ここまで書くと、入社後の見通しまで伝わります。
未経験の年収は会社によって違います。330万円から500万円までの実例があり、地域と工種で変わります。上限側の500万円は、微経験や隣接工種からの転換を受け入れている会社の数字です。自社がどのあたりに置くかは、この後の育成期間の長さとあわせて決めてください。
応募が集まりすぎたときの選考設計
未経験の求人は応募が増えます。増えた応募をさばけないと、採用担当が書類の確認だけで動けなくなります。ここでは見る順番と面接の形を決めます。
書類で見る順番を先に決める
未経験の求人を出したところ、月に100人以上の推薦が集まり、毎日5人弱の書類確認に追われ、土日も書類に目を通す状態になった会社があります。別の会社では、業界の理解がまったくない応募が殺到し、選別だけに時間を取られていました。
全件を同じ深さで読むのをやめて、見る順番を決めてください。3段階で足ります。
- 現場との接点があるか
- 直近の在籍期間はどれくらいか
- 志望動機に施工管理を選んだ理由が書かれているか
これは落とす基準としてではなく、会う順番を決める基準として使います。目的は母集団を小さくすることではなく、会うまでの時間を短くすることです。
転職回数は足切りにしないでください。回数だけを見ると、会社都合や倒産で動いた人まで外れます。回数と理由と社会人年数のバランスで判断します。
一次を面談型にして見極めを前に出す
完全未経験は書類で分かることが多くありません。書類を厚く見るより、短い面談を早く置くほうが判断が速くなります。
施工管理職を10名以上中途採用した従業員1,000名未満の建設業の採用担当102名への調査では、採用の成果を高めた取り組みとしてカジュアル面接が42.2%、出張面接が32.4%で挙がっています(出典:株式会社ネオキャリア「施工管理職採用のカギは?」。2026年3月のインターネット調査)。採用を多く回している会社に偏った母集団なので、建設業全体の平均としては読まないでください。
一次はWeb、最終はオフィスの2段階にすると、在職中の候補者の負担が下がります。最終で来社してもらうことで、通勤のイメージも持ってもらえます。
30分の面談の密度は、事前アンケートで上がります。入社可能時期や他社の選考状況、転職で優先したいこと、希望年収の4つを面談前に取っておくと、当日は見極めと魅力づけに使えます。
面接の時間帯を候補者に合わせる
現場に出ている候補者は、平日の日中に面接へ来られません。時間帯を動かさないまま、応募が来ないと判断している会社があります。
同じ調査では、平日19時以降や土日の面接実施が27.5%です。まだ多数派ではないぶん、動かすと差がつく箇所です。
用意するのはリンク1つで足ります。カレンダーの予約ページとWeb会議の固定URLを作っておけば、日程調整の往復が消えます。未経験は複数社を並行して受けているため、返信までの日数が長いほど他社に決まります。書類の確認から一次面談までの目安日数を、社内で先に決めておいてください。
入社1年目の受け入れと定着
未経験採用の結果が出るのは入社後です。辞める理由は仕事の難しさより、現場環境のギャップと最初の配属先で決まります。
現場環境のギャップを入社前に見せる
涼しい室内から、汚れる屋外の現場へ。この落差で辞める人が出ます。入社前に現場を見せておくと、入ってからの離脱が減ります。
見せる項目を決めておいてください。朝の集合時間と移動の手段、夏と冬の現場、作業着と安全靴、休憩の取り方の5つで、1日の輪郭が伝わります。
面接でも「現場を見てから決めてください」と伝えられます。選考の一工程として現場見学を組み込むと、入社後に「思っていたのと違う」が起きにくくなります。
残業の見通しも先に伝えてください。扱っている求人のうち、平均残業時間を数字で書いている226件では、中央値が月30時間でした(2026年7月時点)。これは求人票に書かれた数字で、実績ではありません。自社の直近の実績を月単位で出し、繁忙期と閑散期の幅まで話せるようにしておくと、入社後の落差が小さくなります。
会社の雰囲気を先に見せる方法もあります。社長面接を置いている会社では、面接の案内に社長の動画やブログを添えておくと、当日の温度が保たれます。
学習期間とOJTの型を決める
未経験で入った人の3年後の定着率が90%以上という会社があります。支えているのは、入社後10日間の学習期間と、半年から1年のOJTです。
座学の集合研修を持てない規模なら、チーム制で補えます。5つ程度のチームに国家資格保有者やベテランを配置し、質問と相談ができる状態をつくる形です。教える人1人に負荷が集中しないぶん、受け入れられる人数も増えます。
資格取得の支援は、金銭面だけでは足りません。受験費用の負担に加えて、勉強時間を業務時間内に確保する調整まで決めておく必要があります。
最初の配属先で定着が決まる
若手が辞める理由として、配属された現場と指導する人の当たり外れが挙がります。建設業に残る厳しい指導文化も背景にあります。
未経験を配属する現場は、あらかじめ決めておいてください。工期に余裕があり、教えられる人がいて、移動時間が短い現場です。この3条件がそろう現場を年初に押さえておくと、採用の時期も決めやすくなります。
配属後の面談は、入社1か月・3か月・6か月で予定に入れます。辞める兆しは現場ではなく面談で先に出ます。
働き方そのものを動かしている会社もあります。巡回管理にして施工管理者が自分で工程を組める体制にすると、休日を確保しやすくなります。残業を月20〜30時間に収め、20時完全退社を運用している例があります。
未経験採用の成否を測る指標
未経験採用は、入社した人数だけを見ていると判断を誤ります。育成期間が長いぶん、成否が出るのは1年後からです。追う数字を先に決めておいてください。
内定数ではなく現場に立った人数で見る
未経験は入社した時点では1人で現場を持てません。内定数や入社数だけを追うと、辞めた分が見えないまま採用を続けることになります。
追う数字を「1人で現場を担当できるようになった人数」に置き換えてください。そのためには、何をもって1人前とするかを社内で言葉にしておく必要があります。
定義の例を挙げます。工程表を自分で引けること、職人への指示を1人で出せること、施主との打ち合わせに同席できることなどです。会社ごとに違って構いません。決めておくこと自体に意味があります。
OJTに半年から1年を見込むと、採用した年度と成果が出る年度がずれます。年度で区切らず、入社月からの経過月で追ってください。1人で現場を持てるまでの月数は工種と現場の規模で変わるため、一律の月数は置かないほうが実態に合います。
1年目と3年目の定着率を分けて追う
1年目に辞める理由と、3年目に辞める理由は違います。1年目は現場環境のギャップ、3年目はキャリアの見通しです。まとめて定着率で見ると、どちらを見直せばよいか分かりません。
参考になる数字があります。建設業の新規学卒就職者の3年以内離職率は、高卒41.4%、大卒30.5%です(令和4年3月卒業者。調査産業計は高卒37.9%、大卒33.8%。出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。
この数字は産業別で、施工管理職だけの離職率ではありません。新卒が対象のため、中途の未経験採用にそのまま当てはめられない点にも注意してください。
読み方として押さえておきたいのは、大卒では建設業のほうが全産業計より低いことです。建設はすぐ辞める、という一般化は大卒では成り立ちません。
自社の数字を持っていない場合、入社月ごとの在籍状況を並べるところから始められます。表を1枚作れば、1年目と3年目のどちらで落ちているかが見えます。
育成込みの1人あたり採用コストを出す
採用単価だけを見ると、未経験は安く見えます。育成期間の人件費と教える側の時間を足してから比べてください。
5章目で挙げた採用担当102名への調査では、1人あたりの採用コストが100万円以上だった会社が38.2%、50〜99万円が28.4%です。前年より増えたと答えたのは57.9%でした。
経験者を人材紹介で探す場合の手数料は年収の35〜60%が相場で、資格が希少なほど料率は上がります。未経験は採用単価が下がる一方で、育成期間の人件費が乗ります。
比べ方は1つの式で足ります。
(採用単価+育成期間の人件費+教える側の時間)÷ 1人前になった人数
分母が小さいままなら、単価が安くても1人あたりの費用は高くつきます。未経験採用の費用対効果は、採用の段階ではなく育成の段階で決まります。
まとめ
施工管理の未経験採用は、間口を広げた分だけ人が集まるわけではありません。どの未経験を主役に置き、入社後に誰が教えるかを先に決めた会社が続いています。
- 未経験を受け入れられるかは、応募数ではなく教える人と配属先で決まる
- 完全未経験より、現場に立った経験のある微経験のほうが早く現場に立てる
- 歓迎条件に現場経験の一文を足すと、来てほしい層が前に出る
- 年齢で線を引く前に、例外事由の4条件に当てはまるか確かめる
- 応募が増えたら、落とす基準ではなく会う順番を決める
- 成否は入社数ではなく、1人で現場に立った人数と定着率で見る
まずは人事台帳を開いて、未経験に付きっきりで教えられる社員が何人いるかを数えてください。0人だった場合は求人票より先に、1級必須をやめて2級と技士補まで含めるところから試せます。
未経験の受け入れは、採用の入口から配属と育成までをつなげて設計しないと途中で止まります。教える人をどう確保するかを決めないまま求人票だけを直しても、同じところでまた止まります。
TEAM-Xは施工管理・建設技術者に特化した人材紹介に加えて、採用戦略の設計や求人媒体の運用、採用ブランディングまで建設業の採用全般を支援しています。工種と地域ごとの動きをふまえて、いまの体制で成立する採用設計をご一緒できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 未経験を1人受け入れるとして、1人で現場を任せられるまでどのくらいかかりますか。
A. 一律の月数は出せません。まずOJTだけで半年から1年かかり、1人で現場を持てるのはその後です。期間が変わるのは工種と現場の規模によるところが大きいため、自社の現場で何を任せるのかを先に決めてから逆算してください。計画を立てるときは、入社月からOJTが終わる時期までを1人分の枠として数えておくと、次に受け入れられる時期を判断しやすくなります。
Q. 教える人が社内に1人しかいません。未経験は何人まで受け入れられますか。
A. 教える人の担当現場の数から逆算してください。1人の指導役が3現場以上を持っている状態では、未経験1人でも手が回らなくなります。座学の集合研修を持てない規模なら、チーム制で補う方法があります。5つ程度のチームに国家資格保有者やベテランを配置し、指導役1人に負荷が集中しない形にしている会社があります。
Q. 未経験と経験者を、同じ求人ページで募集してもいいですか。
A. 分けたほうが届きます。同じページに混ぜると、経験者には物足りず、未経験には難しく読めて、どちらも自分向けだと思えなくなります。職種と経験の有無でページを分けるのが基本です。
参考までに、施工管理職を10名以上中途採用した従業員1,000名未満の建設業の採用担当102名への調査では、使われている採用手法は求人媒体43.1%、人材紹介39.2%、自社採用サイト35.3%でした(出典:株式会社ネオキャリア「施工管理職採用のカギは?」)。未経験と経験者の内訳は取られていないため、未経験だけの傾向としては読まないでください。
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この記事の監修者
高谷 匠TAKATANI TAKUMI
TEAM-X株式会社 取締役COO/一般社団法人建設技能者転職支援協会 代表理事
新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。
- 厚生労働大臣許可「建設業務有料職業紹介事業」(許可番号 27-ケ-30001。制度創設から約20年で全国4団体、関西の団体としては初)を運営する一般社団法人建設技能者転職支援協会の代表理事
- TEAM-X株式会社 取締役COOとして、施工管理・職人の人材紹介から採用コンサルティング・RPOまでの事業戦略と組織構築を統括
- 新卒でリクルートに入社後、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を歴任

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