女性を採ろうと求人を出したのに、応募がほとんど来ない。1人採用できたのに、結婚や出産を機に現場を離れてしまった。施工管理の女性採用に踏み出した会社の多くが、このどちらかで止まっています。
建設会社の採用担当の方からは、「1級を取って現場に出ていても、施工管理をずっと続ける女性がいない」という声を聞きます。結婚や出産を機に現場を離れたという話は、ほかの会社からも出ています。採用の入口だけを直しても、出口で同じことが起きます。
女性の採用は、候補者との出会い方と、入社後に続けてもらう仕組みを一続きで組み立てると前に進みます。
この記事では、建設業で働く女性の数、求人票と媒体の見直し方、最初の1人を迎える準備、トイレ・育休・評価の整え方、使える助成金と認定制度を、採用担当者が自社で手を付けられる順に並べました。「何から手をつければいいのか」「採っても続かないのはなぜか」とお悩みの方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
建設業で働く女性の数と割合
建設業で働く女性はまだ2割に届きませんが、新しく採用される技術者に限ると女性は2割に達しています。全体の数と、入口での数を分けて見ます。
建設業の就業者に占める女性は18.4%
2025年平均の建設業の就業者478万人のうち、女性は88万人で、割合は18.4%です。2002年以降でもっとも高い値になりました。全産業では就業者の45.8%が女性なので、建設業はその半分にも届いていません(出典:総務省「労働力調査(長期時系列データ)」)。
割合が低いということは、女性の候補者にまだ声が届いていない業界だということです。男性の経験者だけを探す採用から一歩広げる余地が、それだけ残っています。
2024年度に採用された技術者の20%が女性
全体ではまだ少ない一方、入口では女性が増えています。国土交通省が2024年秋に建設企業1,609社へ行った調査では、2024年度に採用した技術者の20%、技能者の6%が女性でした(出典:国土交通省「令和6年度 建設産業における女性定着促進に関する実態等調査結果」)。
同じ調査で、いま在籍している技術者に占める女性は10%です。在籍の割合は過去の採用の積み重ねなので、新しく採る女性が増えても、全体の割合が上がるまでには時間がかかります。施工管理は技術者に含まれます。女性の候補者と出会えるかどうかと、入社後に続けてもらえるかどうかを、一続きで考える必要があります。
女性を採用する3つのメリット
人が足りないから女性も、という理由だけでは、社内の合意も候補者への伝え方も弱くなります。女性の採用が会社にもたらすメリットを3つに分けます。
1. 応募の母数が増えて人手不足を補える
一番分かりやすいのは、応募の母数が増えることです。建設業の就業者は、1997年の685万人(出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」)から、2025年には478万人まで減りました(出典:総務省「労働力調査」)。
若手の男性を各社で取り合っている状態では、頭数はなかなか埋まりません。
施工管理の仕事は、工程・安全・品質・原価の管理が中心で、性別による向き不向きが小さい職種です。施工管理技士の資格は一度取れば長く使えるので、産休・育休を経ても戻りやすいキャリアになります。
2. 女性が働ける会社は男性の応募も集まりやすい
女性が続けて働ける会社は、休日・残業・現場の設備がそれだけ整っています。この働きやすさは、男性の候補者にも同じように伝わります。
TEAM-Xが2026年10月に、建設業で働いたことのない400人(約85%が男性)に行ったアンケート(インターネット調査)では、年収以外で仕事選びに重視することの1位は週休2日(51.25%)でした。休みと時間を整えることは、女性に限らず応募の入口を広げます。
3. 公共工事の評価で加点を受けられる
女性活躍や子育て支援の認定を受けた会社は、国の総合評価落札方式などで加点の対象になります。採用のために整えた制度が、受注の場面でも評価されるということです。
認定の種類と取り方は、この記事の後半の「えるぼし・くるみん認定の取り方と使いどころ」で扱います。
応募が来ないときに見直す2つのポイント
設備を整える前でも、候補者との出会い方は変えられます。求人票と媒体の2つから見直してください。
1. 女性が応募したくなる求人票の書き方
求人票の書き方を変えるだけで、応募数は動きます。手を入れたいのは次の4点です。
- 「たくましい方歓迎」のような、性別を連想させる言い回しを消す
- 産休・育休の取得実績を「これまで◯人が取得」と人数で書く
- 時短勤務で働いている社員の実例を載せる
- 残業と休日を「全社平均で月◯時間/年間休日◯日」と数字で書く
労働時間は、数字で書くと伝わり方が変わります。残業を月15〜20時間、年間休日が120日を超えると数字で出している会社もあります。繁忙期に増える月があるなら、それも並べて書くと入社後の食い違いを防げます。
働く女性の数も、書けば強みになります。女性の施工管理が複数在籍し、離職率も低いのに、求人票や自社サイトでそれを伝えていない建設会社があります。すでにいる女性社員の人数と声は、候補者が入社後の自分を想像する一番の材料です。
「女性限定」「女性優先」と書く前に確かめること
男女雇用機会均等法第5条は、募集・採用で性別にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています。厚生労働省の指針は、「男性歓迎」「女性向きの職種」といった表示を、一方の性を排除する例として挙げています。
例外として、女性が男性と比べて相当程度少ない、つまり4割を下回る雇用管理区分では、募集で女性に有利な取扱いをすることが認められています(第8条。出典:厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」)。ただし4割を下回っていても、男女の格差を解消する目的ではなく、単にその仕事に女性を配置したいという理由で優先する場合は違反になります。施工管理の女性比率は多くの会社で4割を下回りますが、判断は雇用管理区分ごとに行います。女性を優先する書き方をする前に、自社の該当区分の男女比を確かめ、迷う場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。
2. 狙う層に合わせて媒体を使い分ける
求人票を整えたら、次はどこに出すかです。1つの媒体で全員を集めようとせず、狙う層ごとに分けてください。
未経験や第二新卒の女性を狙うなら、未経験歓迎の求人が多い総合求人サイトを使います。経験者を狙うなら、スカウト型の媒体でこちらから声をかけます。1つの求人ですべての層を拾おうとすると、どの層にも中途半端になります。
スカウト型の媒体で、掲載から1週間でおよそ100通をまとめて送り、その後も週に1〜2件の返信が続いた運用例があります。少しずつ送るより、初週に集中させる方法を試してみてください。
建設業で働く女性どうしのつながりにも届け先があります。国土交通省の建設産業女性定着支援WEBには、全国と都道府県の女性ネットワークが63団体、約10,000人登録しています(2026年3月時点)。地元の団体の活動に顔を出すと、求人媒体とは別の接点が生まれます。
女性に限らず、施工管理の採用で手法ごとの向き不向きと、決まる求人の組み立て方は、施工管理の採用手法の選び方と決まる募集設計にまとめています。
初めて女性を採る会社の受け入れ体制づくり
社内に女性の施工管理がいない、あるいは1〜2名という会社では、採ったあとに不安が集中します。ここを決めずに迎えると、最初の1人が早く辞め、社内に「女性は続かない」という印象だけが残ります。
配属する現場と受け入れ体制を先に決める
最初の1人は、受け入れる体制ごと先に決めておくかどうかで定着が分かれます。女性の施工管理が2名だけで、多様性の確保が課題だと話す設備工事の会社があります。全社員が男性で受け入れ体制がないため、女性の採用を見送っている防水工事の会社もあります。
体制がないなら、入社が決まる前に次の3つを決めてください。
- 配属先は、女性用のトイレや更衣室があり、指導が穏やかな所長の現場を選ぶ
- 現場で仕事を教える担当者をあらかじめ決めておく
- 仕事の相談とは別に、悩みを話せる相談先を用意しておく
配属された現場や上司の当たり外れ、いわゆる現場ガチャで最初の1人が辞めると、その1件が社内の結論になります。1人目の配属は、現場任せにせず採用担当と所長で決めてください。
施工管理の入口になる職種から始める
いきなり1人で現場を任せるのが不安なら、施工管理の手前の職種から始める方法もあります。
その1つが建設ディレクターです。書類作成や写真管理、工程表づくりなど、現場の事務を引き受けて施工管理を支える職種で、建設ディレクター協会の育成講座は参加者の約7割が女性です(出典:建設ディレクター協会「建設ディレクターとは」)。
設計や積算の部署なら女性が長く残っている、と話す会社もあります。CADオペレーターや施工事務から入ってもらい、段階を踏んで施工管理へ移る組み立ても考えられます。現場に慣れてから任せる範囲を広げるので、本人にも会社にも無理がありません。
長く続けてもらう職場づくりの3つの要点
採用できても、続けてもらえなければ人は増えません。定着を左右する職場づくりを、設備・制度・評価の3つに分けて表にしました。
| 要点 | ねらい | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| トイレ・更衣室 | 応募をためらわせない | 女性用の設備がある現場を点検する |
| 産休・育休・時短 | 長く働く姿を描いてもらう | 取得実績を1件つくり求人票に書く |
| 評価とキャリア | 数合わせで終わらせない | 昇格・資格の基準を男女でそろえる |
1. 女性用トイレと更衣室を用意する
応募をためらわせる最初の壁は、トイレと更衣室です。国土交通省の調査では、民間工事の現場で女性が快適に使えるトイレが「概ね整備されている」と答えた企業は33%、更衣室では21%でした。
整備していない企業の7割以上は、その理由を「現場に女性がいない」と答えています(出典:国土交通省「令和6年度 建設産業における女性定着促進に関する実態等調査結果」)。女性がいないから整えない、整っていないから女性が来ない、という順番になっています。
まず取りかかりたいのは、男女別で施錠できる快適トイレの設置です。国の直轄工事では快適トイレの設置が基本で、国土交通省の通知は、女性が現場にいる場合に女性用トイレを置くことを標準にしています。現場事務所の更衣室や休憩スペースも、仮設のなかでできる工夫から始められます。
2. 産休・育休・時短を実際に使える制度にする
制度は、あるかどうかではなく、実際に使えるかどうかで見られます。就業規則に育休が書いてあっても、取った人が1人もいなければ、候補者には本当に取れるのかが伝わりません。
結婚や出産を機に女性の施工管理が現場を離れる、という話は1社だけでなく複数の会社から聞きます。ライフイベントで一時的に現場を離れる前提で、代わりの要員と復帰後の配属を先に決めておくと、本人も長く働く姿を描けます。
復帰後は、直行直帰・転勤なし・近隣の現場と、生活の時間を確保できる配属にするとなおよいです。男性社員の育休取得も同時に進めると、女性だけが特別扱いされているという空気を薄められます。
3. 評価とキャリアの道筋を男女同じ基準で示す
採用して配属したら終わり、ではありません。昇格や資格取得、所長への道筋を男女で同じ基準ではっきり示すことが、長く働いてもらう前提になります。
具体的には、資格取得の費用を会社が全額負担し、資格手当で給与に反映させます。勉強の時間を業務のなかで確保できるよう、繁忙期を外して試験日程に合わせた配属を組んでください。
評価は数字で見える基準にして、年功序列や「女性は補助的な役割」といった慣行を外していきます。管理職への登用まで視野に入れると、女性の採用が数合わせで終わらなくなります。
女性採用に使える助成金と認定制度
環境を整えるには費用がかかりますが、負担を抑える国の制度があります。名前と窓口を知っておくだけでも、着手のハードルは下がります。
育休と現場トイレの負担を抑える制度
育休まわりで使えるのが、厚生労働省の両立支援等助成金です。男性の育休取得を進める出生時両立支援コース、育休の取得と職場復帰を支える育児休業等支援コース、育休中の業務を代わりの社員に任せた場合の育休中等業務代替支援コースなどがあります(出典:厚生労働省「両立支援等助成金」)。対象や金額は年度で変わるので、申請前に都道府県労働局で確かめてください。
国土交通省の直轄工事では、2016年10月1日以降に入札手続きを始める工事から、快適トイレの設置を基本とし、その費用を積算で見るようになりました(出典:国土交通省 記者発表資料(平成28年8月4日))。2026年4月1日以降に入札契約手続きを始める工事では、上限が1基1か月57,000円です(出典:国土交通省 通知(令和8年2月27日))。
えるぼし・くるみん認定の取り方と使いどころ
女性活躍と子育て支援に取り組む会社が受けられる認定として、えるぼしとくるみんがあります。えるぼしは女性活躍推進法、くるみんは次世代育成支援対策推進法にもとづく認定です。認定の基準と申請の手順は、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページとくるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについてにまとまっています。
国の機関などが行う総合評価落札方式や企画競争では、えるぼし・くるみん・ユースエールの認定企業が加点の対象です(出典:内閣府男女共同参画局「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について」)。認定マークを自社サイトや求人票に載せれば、働きやすさを客観的に伝えられます。
女性採用でやりがちな3つの失敗
最後に、女性の採用でつまずきやすい3つのパターンを並べます。自社が同じところで止まっていないか、確かめてみてください。
| 失敗 | 起きること | 改善策 |
|---|---|---|
| 制度を作れば応募が来ると思う | 設備を整えたのに応募ゼロ | 求人票・媒体・スカウトを同時に動かす |
| 数合わせの採用で終わる | 採ったのに早く辞める | 配属・評価・キャリアまで決める |
| 配慮が過剰になる | 本人が伸びず不公平感も出る | 機会は同じにし設備と働き方で無理を減らす |
1. 制度を作れば応募が来ると思い込む
トイレや育休制度を整えても、それだけでは会社の存在が候補者に届きません。求人票や媒体、スカウトといった候補者に届ける動きがなければ、応募は増えません。
設備と採用活動は、どちらか片方では進みません。求人票の見直しと媒体の使い分けから、並行して着手してください。
2. 数合わせの採用で終わってしまう
女性を何人採る、という目標だけが先に立ち、配属や評価、キャリアが決まっていないと、採用した人は早く辞めます。とくに1人だけを採って社内で孤立させると、その離職が「女性は続かない」という誤った結論として残ります。採用人数の前に、その人が3年後にどうなっているかまで描いてから動いてください。
3. よかれと思った配慮が成長の機会を奪う
難しい現場や体力を使う仕事をすべて外す配慮は、一見やさしく見えて、本人から仕事を覚える機会と昇格のチャンスを奪います。本人の不満につながり、周りにも不公平感が生まれます。
必要なのは特別扱いではありません。機会は男女で同じにそろえたうえで、設備と働き方の面で無理をなくしていく。この線引きが、長く活躍してもらう土台になります。
まとめ
女性の施工管理採用は、応募を集める入口から、続けてもらう出口までを一続きで組み立てる取り組みです。
- 新規採用の技術者の2割は女性。出会い方と続け方を一続きで組み立てる
- 応募が来ないときは、求人票の書き方と媒体の使い分けから見直す
- 最初の1人は、配属先と教える人と相談先を先に決めてから迎える
- トイレ・育休・評価を整え、両立支援等助成金と認定制度で負担を抑える
費用をかけずに今週できるのは、求人票の残業・休日・育休の実績を数字に書き換えることです。そこから、配属先の現場のトイレと更衣室を確かめてください。
とはいえ、1人目をどう採ればいいか、求人が届いているのかどうか、判断に迷う場面も多いはずです。TEAM-Xは、施工管理に特化した人材紹介に加えて、採用戦略の設計や求人媒体の運用、採用ブランディングまで、建設業の採用全般を支援しています。女性の採用や定着でお悩みの建設会社のご担当者は、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 女性を採用したら、既存の男性社員にはどう伝えればいいですか?
A. 特別扱いではなく、働きやすさの底上げだと伝えるのが基本です。トイレや休日、残業の改善は男女どちらにも効果のある投資であること、評価や配属の基準は全員同じであることを、採用の前に管理職へ共有しておきます。男性社員の育休取得も同時に進めると、女性だけが優遇されているという受け止めを避けられます。最初の1人を迎える現場には、受け入れの狙いを事前に説明しておくと摩擦が起きにくくなります。
Q. 女性の採用を始めてから、定着まではどのくらいの期間で考えればいいですか?
A. 半年から1年単位で見るのが現実的です。求人票の見直しやスカウトで応募が動き出すまでに数週間から数か月、入社後に1人で現場を回せるようになるまでには育成の期間が必要です。短い期間で成果が出ないからと求人条件だけを変え続けると、かえって軸がぶれます。まずは1人目を無理なく受け入れ、その定着の実績を次の採用の材料にしてください。
Q. 採用した女性が早期に辞めてしまいました。2人目はどう立て直せばいいですか?
A. まず、辞めた理由を本人と現場の両方から具体的に聞いてください。配属先の人間関係だったのか、業務量だったのか、成長を実感できなかったのかで、変える場所が違います。1人の離職を「女性は続かない」と一般化せず、受け入れ体制のどこに穴があったかを1つずつ見直します。2人目は、教える担当者がいなかった、相談先がなかったといった前回の穴を先に埋めてから迎えると、続けてもらいやすくなります。
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この記事の監修者
高谷 匠TAKATANI TAKUMI
TEAM-X株式会社 取締役COO/一般社団法人建設技能者転職支援協会 代表理事
新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。
- 厚生労働大臣許可「建設業務有料職業紹介事業」(許可番号 27-ケ-30001。制度創設から約20年で全国4団体、関西の団体としては初)を運営する一般社団法人建設技能者転職支援協会の代表理事
- TEAM-X株式会社 取締役COOとして、施工管理・職人の人材紹介から採用コンサルティング・RPOまでの事業戦略と組織構築を統括
- 新卒でリクルートに入社後、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を歴任


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