施工管理が50代以上に偏っていて、次の責任者になる人がいない。建設業の若手採用を考え始めた理由として、採用担当の方からこうした事情を直接聞くことがあります。建設業で働く人のうち29歳以下は11.7%で、全産業の16.9%を下回ります(国土交通白書2025、2024年時点。総務省「労働力調査」をもとに国土交通省が作成)。若手を迎えたいと考えているのは、自社だけではありません。
若手の採用ルートは、高卒の新卒、大卒・高専の新卒、20代の中途に分かれます。窓口も動く時期も使える制度も違うので、最初にどのルートから始めるかを決め、迎える前に誰が教えるかを決めておくと進めやすくなります。
この記事では、ルートごとの比較表、若手の募集で年齢を書ける例外の条件、新卒の求人で出す職場情報、迎える前に決めておくことのチェックリストをまとめました。若手の採用をこれから始める、または一度やめて再開する建設会社の採用担当・経営者の方に向けた内容です。
「若手を採用したいけれど、どこから手をつければいいのか」と迷っている方は、自社の採用計画と照らし合わせながら目を通してみてください。
目次
若手の採用ルート
若手の採用ルートは、高卒の新卒、大卒・高専の新卒、20代の中途の3つに分かれます。どれを選ぶかで、求人を出す窓口と動き出す時期が変わります。
| ルート | 主な窓口 | 動く時期 | 入社まで |
|---|---|---|---|
| 高卒の新卒 | ハローワーク・高校 | 6月に求人申込み、9月16日に選考開始 | 翌年4月 |
| 大卒・高専の新卒 | 大学・高専の就職窓口 | 学校ごとの日程 | 翌年4月 |
| 第二新卒・20代の中途 | 求人媒体・人材紹介・紹介 | 通年 | 決まり次第 |
新卒と中途のどちらから始めるかを決めるときは、ほかの建設会社の動きも参考になります。厚生労働省の令和7年転職者実態調査では、今後3年間に転職者を採用する予定がある建設業の事業所のうち、「転職者を優先して採用したい」が46.9%、「新規学卒者を優先して採用したい」が9.6%でした(5人以上を雇う事業所が対象、2025年10月1日現在。全産業では40.0%と9.8%)。建設業では、中途を先に探す事業所が多いということです。
採用全体の組み立て方から見直したい場合は、建設業の採用で応募が来ない原因の切り分け方と手法の選び方にまとめています。
高卒の新卒採用は7月1日から学校経由で動く
高卒の新卒採用は、国と学校・経済団体の申し合わせで日程が決まっています。2027年3月に卒業する高校生の場合、厚生労働省が2026年2月16日に公表した日程は次のとおりです。
- 6月1日:ハローワークで求人の申込み受付が始まる
- 7月1日:企業から学校への求人申込みと学校訪問が始まる
- 9月5日:学校から企業への応募書類の提出が始まる(沖縄県は8月30日)
- 9月16日:選考と採用内定が始まる
高卒の求人は、ハローワークが内容を確認してから学校に届きます。会社が生徒に直接募集をかけるのではなく、学校の推薦を通して応募が来る形です。
1人の生徒が同時に応募できる社数は、都道府県ごとの申し合わせで決まります。たとえば東京都では、推薦開始から1人1社で、10月1日以降は1人2社まで応募できます(東京労働局管内のハローワークの案内)。自社のある都道府県の申し合わせは、労働局のページで確認してください。
9月16日より前に面接や選考はできません。夏休みの会社見学を受け入れる場合も、見学が実質的な選考にならないよう、合否につながる質問や評価は控えます。
工業高校の土木・建築・電気・設備の学科は、施工管理と職人のどちらにとっても入口になります。学校訪問ができるのは7月1日からなので、求人票は6月中に用意しておくと間に合います。
大卒・高専の新卒は大学のキャリアセンターが入口
大卒・高専の新卒は、大学や高専の就職窓口(キャリアセンター・就職課)に求人票を出し、学内説明会や合同説明会に参加する流れが中心です。高卒のような全国一律の推薦の決まりはなく、学校ごとに受付の時期や方法が違います。
過去に入社した社員の出身校があれば、その学校の就職窓口に連絡するところから始めると、学校側にも会社の様子を伝えやすくなります。
第二新卒・20代の中途は通年で探せる
卒業後おおむね3年以内の第二新卒と20代の中途は、新卒の日程に縛られず、1年を通して募集できます。窓口は求人媒体やハローワークのほか、人材紹介や社員からの紹介も使えます。施工管理の20代の経験者は、人材紹介でも探せます。
同じ20代でも、現場経験があるかないかで入社後の立ち上がりが違います。求める経験を決めるときは、応募が来る層と合っているかを確かめます。
20代後半から30代前半で、現場を2つ以上経験した人を求めていた会社では、応募してくる20代は現場1つ、係員の立場までの経験が中心でした。この会社は、20代については現場1つの経験から育てることも視野に入れていました。若手の中途を探すときは、求める経験と、実際に応募してくる人の経験が合っているかを先に確かめておきます。
職人の場合は人材紹介が原則使えない
施工管理と違い、現場で作業する職人の若手は、一般の人材紹介会社からは紹介を受けられません。建設業務の有料職業紹介は職業安定法第32条の11で禁止されていて、例外は建設労働者雇用改善法にもとづいて国の認定を受けた全国4つの団体だけです。
若手の職人を迎えるルートは、工業高校や職業訓練校、ハローワーク、社員からの紹介が中心になります。職人として経験を積んだ人を、施工管理の若手枠に登用する会社もありました。一方で、職人から施工管理への転身は20代に限っている会社もあり、扱いは会社ごとに違います。
若手の採用で知っておく制度
どのルートから始めるかを決めたら、求人票を書く前に、若手の募集に関わる法律と国の制度を確かめておきます。
若手を募集するときに年齢を書ける例外
募集・採用で年齢を制限することは、労働施策総合推進法第9条で原則として禁止されています。ただし施行規則に例外がいくつかあり、若手の募集に関わるのは主に次の2つです。
1つは「3号のイ」と呼ばれる例外で、長期勤続によるキャリア形成を図るために、若年者等を期間の定めのない雇用で募集する場合です。職業経験を問わないこと、新卒と同等の処遇で育てることが条件で、「経験3年以上」のように経験を求める募集では使えません。ここでいう同等の処遇は、新卒と同じ研修や配置で育てることを指し、賃金まで完全にそろえることは求められていません(厚生労働省「年齢にかかわりない募集・採用のために」)。
もう1つは「3号のロ」で、特定の職種で特定の年齢層の社員が極端に少ない場合に、30〜49歳のうち5〜10歳の幅に絞って募集できる例外です。その年齢層の人数が、同じ幅の上下の年齢層のどちらと比べても半分以下であることが目安になります。
自社の募集が例外に当たるかは、厚生労働省の資料を確認し、迷うときは労働局かハローワークに相談してください。年齢を書かずに若手に届けたい場合は、仕事内容に「先輩について現場を覚えるところから始めます」と書いたり、資格がなくても応募できると明記したりする方法があります。
新卒の求人で出す職場情報は3つの類型
新卒者を募集する会社は、若者雇用促進法第13条に基づいて、職場の情報(青少年雇用情報)を提供するよう努めることになっています。応募者や学校から求められたときは、次の3つの類型それぞれについて1つ以上を出す義務があります。項目は同法の施行規則第3条で決まっています。
| 類型 | 主な項目 |
|---|---|
| 募集・採用の状況 | 直近3年の新卒採用者数とそのうちの離職者数、平均継続勤務年数 |
| 能力開発の取組 | 研修の有無と内容、新卒に相談役を割り当てる制度の有無 |
| 定着の取組 | 前年度の月平均の残業時間、有給休暇の平均取得日数 |
表の項目は一部で、ほかに男女別の採用者数や、育児休業の取得状況なども含まれます。ハローワークの新卒求人の申込書には、これらを書く欄があります。
この情報は、若手が会社を選ぶときに見ている中身とほぼ重なります。新卒を募集しない会社でも、20代の中途向けの求人票に同じ項目を書いておくと、応募する側が判断しやすくなります。
ユースエール認定は新卒の離職率20%以下などが条件
ユースエール認定は、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業(常時雇用300人以下)を国が認定する任意の制度です。主な基準は次のとおりです(厚生労働省 ユースエール認定制度)。
- 直近3事業年度に正社員として就職した新卒者等の離職率が20%以下
- 前事業年度の正社員の月平均の残業時間が20時間以下で、月60時間以上の正社員が1人もいない
- 前事業年度の正社員の有給休暇の取得率が平均70%以上、または年間の取得日数が平均10日以上
- 直近3事業年度に、育児休業を取った男性が1人以上いる、または女性の取得率が75%以上
認定を受けると、ハローワークでの重点的な紹介、若者雇用促進総合サイトへの掲載、認定マークの使用、日本政策金融公庫の低利融資などが受けられます。公共調達のうち価格以外の要素を評価する方式では加点の対象にもなりますが、建設工事の入札で加点されるかは発注者ごとに違います。
まず自社の数字で基準を満たせるかを確かめてみてください。直近3年の新卒の離職者数と前年度の残業時間を出してみるだけでも、若手に見せられる数字と、先に直す数字が分かれます。
若手を迎える前に決めること
若手が入社後に続くかどうかは、最初の1〜2年に誰がどう教えるかに左右されます。採用担当の方から直接聞いた3社の話には、募集の前に受け入れ側で決めておくことが表れていました。
教える側の30〜40代が足りなくなった会社
ある土木の施工管理の会社は、人手不足が言われ始める前から新卒と若手の中途を採用し続けてきました。その結果、若手は増えましたが、今度は若手を教える30〜40代が足りなくなりました。いまは若手より30〜40代の経験者を求めています。担当の方は「30〜40代はどの会社でも少ない」とも話していました。
若手の人数だけを増やすと、教える人1人あたりが受け持つ若手が増えていきます。採用人数を決める前に、教える人を何人置けるかを数えておきます。1人で何人まで見られるかは現場の規模や工種で変わるので、自社の現場で無理のない人数を、所長や現場の責任者と決めておきます。
ベテランを先に迎えてから若手を組ませる会社
ある設備の施工管理の会社は、現場ではベテランと若手をペアにして経験を積ませる方針をとっています。そのため、若手を迎える前に、育成の受け皿になるベテランを先に採用しています。
若手採用というと若手の募集から始めがちですが、教える人がいない状態で若手を迎えても、現場で組ませる相手がいません。社内に教える人の余裕がない場合は、経験者の採用を先に進める順番もあります。
配属現場と指導の仕方を若手の離職理由に挙げた会社
ある建築の施工管理の会社は、若手の早期離職の主な原因として、配属された現場や上司の当たり外れ(いわゆる現場ガチャ)と、厳しい指導の文化を挙げていました。この会社は、土曜に出勤が必要な現場では若手を優先して休ませ、ベテランが交代で出る形をとっています。
配属先と指導役を入社してから決めると、どの現場に入るかで若手の1年目が大きく変わります。最初の1年の配属先と指導役を先に決め、指導役以外に若手が相談できる相手も置いておきます。年の近い先輩や、別の現場の社員でもかまいません。青少年雇用情報にある「新卒に相談役を割り当てる制度」も、この相手を決めておく仕組みです。
ほかに、若手のメンバー層に最長2年ほどの長期出張がありうる会社もありました。出張や転勤の見込みは、面接の段階で先に伝えておきます。
決めておくことのチェックリスト
若手を迎える前に、次の項目が社内で決まっているかを確かめます。
- 若手を教える人を何人置けるか
- 教える人がいない場合、経験者の採用を先にするか
- 最初の1年の配属先と指導役
- 指導役以外に若手が相談できる相手
- 資格取得の支援の内容と、受検を始める時期
- 出張や転勤の見込みと、それを伝えるタイミング
このリストを採用の打ち合わせに持ち込み、空欄が残る項目から決めていくと、採用と受け入れの準備を同時に進められます。
若手が会社を選ぶときに見る情報
若手が会社を比べるときの材料になるのは、続けられる会社か、何が身につくかが分かる情報です。社内で決めた受け入れの準備も、求人票と面接で伝えて初めて応募につながります。
新卒の3年以内離職率は高卒41.4%、大卒30.5%
建設業の新卒の3年以内離職率は、高卒が41.4%、大卒が30.5%です(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」、2022年3月卒)。調査産業計は高卒37.9%、大卒33.8%で、大卒は建設業のほうが低くなっています。これは産業別の値で、施工管理など職種ごとの値ではありません。
業界の数字と並べて、自社の数字を出せると若手は判断しやすくなります。直近3年の新卒の採用者数と離職者数、平均勤続年数は、青少年雇用情報の項目でもあります。数字がよくない場合は、離職の理由と、その後に変えたことを添えて出します。
資格をいつ、会社の負担で取れるか
施工管理の若手が気にするのは、施工管理技士の資格をいつ取れるか、費用を会社がどこまで負担するかです。受検に必要な実務経験の年数、受験料や講習費の負担の範囲、勉強の時間を業務の中で取れるかを、求人票に書いておきます。
話を聞いた会社のなかには、受験対策を業務時間内に行っているところもありました。「資格取得支援あり」の一言で済ませず、何をどこまで支援するかを書くと、他社との違いが伝わります。
休日は「週休2日」でなく実績の日数で書く
完全週休2日制は毎週2日の休みがある働き方です。週休2日制は、月に1回以上2日休める週があれば名乗れます。4週8休は4週間で合わせて8日休む形で、週1日しか休めない週があっても成り立ちます。
年間休日の日数は近くても、休みの取り方はそれぞれ違います。求人票に「週休2日」とだけ書くと、若手はどの意味かを判断できません。年間休日の日数と、繁忙期の休日の取り方を書いておきます。
何年目に何を任せるかの道筋
入社して何年目に何を任されるのかも、求人票に書いておきたい情報です。たとえば「1年目は先輩の現場でサポート業務、2〜3年目で小さな現場の担当、資格を取ったら主任」のように、自社の実例を年数とセットで書きます。
求人票の給与の欄だけでは伝わらず、将来の役職と年収を面接で説明する必要があった、という会社もありました。入社後の道筋は、求人票と面接の両方で同じ内容を伝えられるようにしておきます。
若手採用で気をつけること
ここまでの準備を進めるうえで、気をつけておきたいことが2つあります。
高卒の選考を9月16日より前に始めない
高卒の選考と内定は、9月16日からと決まっています。夏休みの会社見学や職場体験の場で、志望動機を詳しく聞いたり評価をつけたりすると、実質的な選考と受け取られるおそれがあります。見学は会社と仕事を知ってもらう場と割り切り、選考は9月16日以降に行います。
若手の募集だけを続けない
若手を希望していた会社でも、実際に入社が決まったのは40代後半〜50代が中心だった、という例がありました。若手の募集を始めても、すぐに応募が集まるとは限りません。
若手の募集と並行して、教える側になれる経験者の募集も止めないでおきます。教える人がいないと、若手を迎えても現場で組ませる相手がいません。
まとめ
建設業の若手採用は、高卒の新卒、大卒・高専の新卒、20代の中途でルートと日程が違います。どのルートから始めるかを決めたら、年齢を書ける例外の条件と、新卒の求人で出す職場情報を確かめます。
そのうえで、迎える前に教える人の数と最初の配属を決めておくことが、入社後に若手が続くかどうかにつながります。離職率、資格、休日、入社後の道筋は、求人票と面接で具体的に伝えます。
最初の一歩として、自社がどのルートから始めるかを決め、教える人を何人置けるかを数えてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 高卒の求人はいつから出せますか?
A. ハローワークへの求人の申込みは6月1日から、学校への求人申込みと学校訪問は7月1日からです(2027年3月卒の場合)。高卒の求人はハローワークが内容を確認してから学校に届くので、会社が生徒に直接募集をかける形ではありません。
選考と内定は9月16日からで、それより前に面接はできません。1人が同時に応募できる社数は都道府県ごとに決まっているので、自社の地域の労働局の案内も確認してください。
Q. 求人票に年齢の上限を書いてもいいですか?
A. 原則として書けませんが、若手の募集では例外があります。職業経験を問わず、期間の定めのない雇用で、新卒と同等の処遇で育てる募集などがそれにあたり、厚生労働省が条件を示しています。
経験を求める募集では、この例外は使えません。自社の募集が当てはまるかは、厚生労働省の資料を確認し、迷うときは労働局かハローワークに相談してください。
Q. 若手を迎えても続かないとき、何から見直せばいいですか?
A. 最初の1年に誰が教えていたかを振り返るところから始めます。若手を採用し続けた結果、教える側の30〜40代が足りなくなった会社もありました。
配属先と指導役、指導役以外に相談できる相手を、次に迎える前に決めておきます。あわせて、出張や転勤の見込み、休日の実績を求人と面接で先に伝えておきます。
専門家に相談してみませんか?
この記事の監修者
高谷 匠TAKATANI TAKUMI
TEAM-X株式会社 取締役COO/一般社団法人建設技能者転職支援協会 代表理事
新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。
- 厚生労働大臣許可「建設業務有料職業紹介事業」(許可番号 27-ケ-30001。制度創設から約20年で全国4団体、関西の団体としては初)を運営する一般社団法人建設技能者転職支援協会の代表理事
- TEAM-X株式会社 取締役COOとして、施工管理・職人の人材紹介から採用コンサルティング・RPOまでの事業戦略と組織構築を統括
- 新卒でリクルートに入社後、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を歴任


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