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採用戦略

施工管理の採用要件|「1級必須」は本当に要るのか

公開日 2026.10.26監修 高谷 匠
高谷 匠

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高谷 匠

TEAM-X株式会社 取締役COO/一般社団法人建設技能者転職支援協会 代表理事

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施工管理の採用要件を「1級施工管理技士必須・経験5年以上・45歳まで」として求人を出したのに、応募が来ない。紹介会社からも「該当する方は今いません」と返ってくる。TEAM-Xが2026年に100社以上の建設会社の採用担当の方から直接聞いた話でも、「若手が欲しいのに、決まるのは40代後半から50代」という声は珍しくありません。

私たちが扱う施工管理求人のうち、経験レベルを書いている533件では、業界経験者に限った求人が73.4%でした(2026年7月24日時点)。要件は理想の人物像からではなく、任せる現場から逆算すると、市場にいる人と重なる線が引けます。この記事では、資格・経験・年齢それぞれの決め方と、必須・歓迎・不問に分けた要件表の例を載せました。

現場から上がった条件をそのまま求人にしてよいか迷っている採用担当の方は、「この条件で本当に採れるのか」と感じたところから目を通してみてください。

目次
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TEAM-Xの人材紹介サービス概要資料

建設業に特化した人材紹介の特徴をまとめました

  • 紹介手数料(職種・資格別)
  • 登録者データ(年代・資格・職種構成)
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求人の要件と転職市場のずれ

要件を決める前に、いまの市場で求人と人がどう並んでいるかを見ておきます。

数字はどちらもTEAM-Xの集計で、1つは扱っている施工管理の求人(2026年7月24日時点)、もう1つは登録している施工管理の方の構成です。測っている相手が違うので、割合どうしを引き算せずに読んでください。

経験者限定の求人は7割を超える

経験レベルの記載がある533件を、区分ごとに数えました。1つの求人が複数の区分を選べるため、合計は100%になりません。

経験レベルの区分求人に占める割合
業界経験者限定73.4%
中堅〜ベテラン43.3%
若手〜中堅39.8%
未経験可24.4%
マネジメント経験者14.6%
第二新卒14.1%

未経験可は4件に1件ほどで、残りの多くは業界での経験を前提にしています。必須資格を書いている280件では、最も多いのが普通自動車運転免許の32.1%でした。続いて1級建築施工管理技士が21.8%、1級土木施工管理技士が7.5%、1級建築士が6.8%、1級管工事施工管理技士が5.4%です。資格不問と書いた求人も5.4%ありました。

取引先は人材紹介を使っている会社なので、経験者を求める求人が多めに出る集計です。建設業全体の平均ではなく、紹介会社に頼んででも採りたい求人の傾向として読んでください。

登録者は20代と50代で半数を超える

次は、転職を考えて動いている人を見ます。登録者の年代は20代が約3割、50代が約26%で、この2つの年代だけで半数を超えます。30代後半から40代は、求人倍率が高い一方で、転職市場での動きが少ない層です。

資格を持っている人は登録者の約8割で、20代でも6〜7割、経験者に限れば9割以上が持っています。施工管理の求人が人に対してどれだけ多いかは、公的な統計にも出ています。建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.65倍で、職業計の1.10倍の約5倍です(2026年3月、常用〈パート含む〉。出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」)。

若手が欲しい会社にとって、20代の登録者でも多くの方が資格を持っています。足りないのは経験の年数で、経験の中身で見る要件に変えれば、対象に入る人が出てきます。

年代ごとに資格と経験の組み合わせが変わる

直接聞いた話を並べると、選考を通る資格と経験の組み合わせは年代で変わります。

年代選考で通っている組み合わせ
20代資格なしでも通る
30代以降資格が前提。30代前半までは、無資格でも経験があれば可とする会社もある
50代1級と豊富な経験。最も条件が厳しい

その一方で、決まるのは40代後半から50代という声も、複数の会社から聞いています。

この表は、年齢で線を引くための基準ではありません。年代によって持っている資格と経験の組み合わせが違う、という市場の様子です。求人の要件は年齢ではなく、資格と経験で書きます。年齢の扱いは5章で詳しく見ます。

欲しい人の像から要件を組むと、この表のどこにも当てはまらない人を探すことになりがちです。次の章では、任せる現場から要件を組み直します。

任せる現場から決める採用要件

施工管理の採用要件は、入社した人にどの現場のどの立場を任せるかで決まります。資格・経験・年齢は、そこから順に出てきます。最初に、法律で決まっている配置の基準を確かめます。

主任技術者と監理技術者の配置から資格を出す

建設会社は、請負代金の大小や元請・下請にかかわらず、工事現場ごとに主任技術者を置かなければなりません(建設業法第26条第1項)。

発注者から直接請け負った工事で、下請契約の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になると、主任技術者に代えて監理技術者が必要です。この金額は2025年2月1日に引き上げられ、それまでは4,500万円(7,000万円)でした(建設業法第26条第2項/出典:国土交通省 報道発表(令和6年12月6日))。

監理技術者になれるのは、土木・建築・電気・管など指定建設業の7業種では、1級の技術検定に合格した方などに限られます(建設業法第15条第2号)。自社の元請工事に下請5,000万円以上の現場がなければ、1級を全員の必須条件にする理由は薄くなります。反対に、その規模の現場があるなら、現場の数だけ1級が要ります。

専任かどうかは、別の基準で決まります。請負代金が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)で、公共の施設や学校・病院・事務所・共同住宅・工場など、施行令に並んだ重要な工事では、主任技術者・監理技術者を現場に専任で置きます(建設業法第26条第3項、建設業法施行令第27条第1項)。個人の一戸建て住宅は、この中に入っていません。

1人で持てる現場の数から人数を出す

専任が要る現場でも、2024年12月13日からは条件つきで兼任できるようになりました。条件は6つあり、すべてを満たす必要があります。

  • 請負金額が1億円(建築一式工事は2億円)未満
  • 兼任するのは2現場まで
  • 1日で巡回でき、移動はおおむね2時間以内
  • 下請は3次まで
  • 連絡員を置く
  • 施工体制を確認できる情報通信技術を使う

(出典:国土交通省「監理技術者等の専任義務の合理化」)

もう1つの道として、監理技術者補佐を現場ごとに専任で置けば、監理技術者は2現場まで兼務できます(建設業法第26条第3項第2号・第4項)。補佐になれるのは、主任技術者の資格を持つ1級技士補などです(出典:国土交通省「よくある問合せ(技術者制度)」)。

専任が要る2現場を回すとき、1級を2人そろえるか、1級1人と現場ごとの補佐(技士補2人)で組むかで、必要な1級の人数は変わります。要件を「1級を何人」と数で考えると、どこまで必須にすべきかが見えてきます。

経審の点数が要る会社は1級の人数で考える

公共工事の入札に参加している会社は、経営事項審査の点数も考えに入れます。技術職員の数値は、1人ごとに掛ける数が決まっています。

技術者の区分1人に掛ける数
1級で監理技術者資格者証を持ち、講習の受講から5年以内6
上記以外の1級5
監理技術者補佐4
2級2

(出典:国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」令和8年7月1日施行)

この場合、1級の採用は、現場を回す人を増やすことと、点数を上げることの2つの意味を持ちます。民間工事が中心の会社なら、前者だけを考えれば足ります。

入社1年目に任せる仕事を書き出す

資格の線が決まったら、入社直後の役割を書き出します。分け方は3段で足ります。

  • 所長として1現場を任せる
  • 所長の下で、工程と写真の管理から入る
  • 先輩の現場に補助として入る

どの段で迎えるかによって、資格・経験・年収の要件がそれぞれ変わります。1段目だけを要件にすると、1級と所長経験の両方を持ち、いま転職を考えている方だけを探すことになります。1章で見た表で、最も条件が厳しい層です。

現場責任者には「入社した翌月、その人はどの現場で何をしていますか」と聞いてみてください。答えが「先輩の現場で補助」なら、所長を任せる前提の要件で募集する必要はありません。採用手法の選び方まで含めて募集全体を組み直したい場合は、手法の選び方と決まる募集設計で扱っています。

資格の要件の決め方

資格は、前の章で出した配置の必要がある枠だけを必須にし、それ以外は歓迎か不問に置きます。

1級を必須にするのは監理技術者を置く枠だけ

所長として監理技術者に就く枠だけを1級必須にし、所長の下で担当する枠は1級歓迎にします。1章の集計では、必須資格を書いている求人のうち、1級建築施工管理技士を必須にしているのは2割強でした。

1級を必須にすると、募集の対象は「1級を持っていて、いま転職を考えている人」まで絞られます。1級を持つ人は、工事の切れ目がないまま次の現場を任されることが多く、転職市場に出てきにくい層です。必須にするのは、本当に監理技術者を置く枠だけにしておきます。

2級・技士補・資格なしの置き場所

1級以外の資格は、次のように置くと整理できます。

資格置き場所理由
2級歓迎の筆頭主任技術者として現場を持てる
1級技士補歓迎主任技術者の資格があれば監理技術者補佐になれる
資格なし不問(取得支援つき)入社後に取得を目指してもらう

2024年4月から、1級の第一次検定は、受験する年度の末に19歳以上なら学歴や実務経験を問わず受けられるようになりました(出典:国土交通省 報道発表(令和5年5月12日))。若手の枠では、入社後に技士補を取ってもらう前提で資格を不問にできます。

資格なしを不問にするときは、受験費用の会社負担や合格時の手当など、支援の中身を条件のすぐ横に書いておきます。応募する側は、条件の横に支援が書いてあるかどうかで、入社後の自分を想像できるかが変わります。

資格だけで採った人が現場で苦労する理由

資格だけを頼りに採用してうまくいかなかった、という話は複数の会社で聞いています。資格を持つ31歳の方を迎えたものの経験が足りず、現場で苦労したことから、「資格に見合った実務経験」を最も重く見るようになった会社。有資格者を迎えたのに実務が伴わず、実務経験を重視する方針に切り替えた会社。資格はあるのに現場をこなしていない方の見極めに、いまも苦労している会社もあります。

資格試験で問われる知識と、現場で求められる段取りは別物です。職人の手配、近隣への説明、雨で崩れた工程の組み直しは、試験では測れません。資格の要件は入口の線にとどめ、通すかどうかは次の章の経験の中身で判断します。

経験の要件の決め方

経験の要件は「何年」より、「どの構造の、どの規模の現場で、どの立場だったか」で書きます。

「経験5年以上」が目安にしかならない理由

求人票の「経験5年以上」は、社内でも、会って話してから判断する前提の目安になっていることがよくあります。

年数で切ると、4年半で十分な経験を積んだ方が応募をやめ、10年いても補助だけだった方が書類を通ります。年数は、応募のハードルとしてしか働きません。1章で見たとおり経験者に限った求人は多いので、そのなかで選ばれるには、何の経験を求めているかまで書いておく必要があります。

構造・新築か改修か・規模・立場で通用する範囲が変わる

同じ「建築施工管理の経験者」でも、通用する範囲は4つの軸で分かれます。

軸分かれ方具体例
構造・工種の中身RC造・S造・木造/電気は低圧か高圧かRC造専業の1級は、木造の会社とは年収も業務も合いにくい。S造の経験を必須にし、マンションや小規模住宅だけの経験は見送る会社がある。電気では高圧の経験を必須にする会社がある
新築か改修か新築/リフォーム・改修改修だけの経験は新築に適応しづらいという声がある。逆に、個人住宅のリフォーム会社では、ゼネコンでの経験や原状回復だけの経験では合わないという声もある
規模1現場の請負金額・延床面積コンビニや小型ドラッグストアなど、小規模な案件だけの経験は規模の差で難しい
立場元請か下請か/所長か補助か元請の所長と、下請で工程の一部を持っていた人では、同じ年数でも任せられる範囲が違う

自社の現場を「RC造・新築・元請・延床◯㎡前後」のように1行で書き出してみてください。それと同じか隣り合う経験を必須に、離れた経験を歓迎に置くと、年数を書かなくても要件が伝わります。

経験が立派すぎる人が合わないこともある

スーパーゼネコン出身の応募者について、自社の規模感や分業の少なさに物足りなさを感じるのではないかと考え、書類選考を慎重に進める会社があります。経歴が整いすぎていることを理由に、慎重になる中小の会社もあります。

大手では工程・品質・安全・原価を分業していることが多く、中小では1人がすべてを持ちます。大手出身の方には「原価の管理は、どこまで自分でしていましたか」と確かめておくと、入社後のずれを防げます。経歴の大きさより、自社の分業の度合いと合うかを見ます。

書類で確かめる経験の項目

職務経歴書では、次の6項目を確かめます。右の列は、書類で分からなかったときに聞き返す質問です。

項目見る点聞き返す質問
工種と構造自社の現場と同じか、隣り合うか直近3現場の構造を教えてください
新築か改修か自社の比率と合うか新築と改修の割合はどのくらいでしたか
1現場の規模請負金額か延床面積一番大きかった現場の規模はどのくらいですか
立場所長・担当・補助、元請か下請かその現場で、誰に報告していましたか
並行して持った現場の数同時に何現場まで回したか同時に何現場を担当していましたか
担当した管理工程・品質・安全・原価のどれか原価の管理は、どこまで自分でしていましたか

年数の欄は、この6項目を読むための補助として使います。面接では、表の右の列をそのまま聞き返すところから始めると、書類の行間が埋まります。

年齢の要件と法律の線引き

社内で「45歳まで」と決まっていても、その数字を求人に書いてよいとは限りません。

年齢は、原則として募集・採用の条件にできません。事業主は、募集と採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならないと定められています(労働施策総合推進法第9条)。求人票に書かなければ、選考で年齢を理由に落としてよいという話ではありません。条件にできるのは、同法施行規則第1条の3が定める例外事由に当たる場合だけです。

定年を上限にするなら上限と定年を一致させる

例外事由の1号は、定年を下回ることを条件にする募集です。期間の定めのない労働契約に限り、「60歳未満の方を募集(定年が60歳)」のように、上限と定年をそろえて書きます。

次のような使い方は認められません(出典:厚生労働省「年齢にかかわりない募集・採用のために」p.3〜4)。

  • 定年が63歳なのに、60歳未満で募集する
  • 有期契約の募集で使う
  • 上限に加えて下限の年齢も付ける
  • 習熟に時間がかかるからと、上限を定年より下げる

定年60歳で55歳まで、定年65歳で63歳以下のように、定年の数年手前に上限を置いている会社もあります。よくある決め方ですが、1号の条件からは外れます。定年65歳なので65歳の方は不可とする会社のように、上限と定年がそろっていれば1号の形に近くなります。

なお、高年齢者雇用安定法では、定年を65歳未満にしている会社に65歳までの雇用確保措置を求めています。2025年4月1日からは、継続雇用の対象が希望者全員になりました(高年齢者雇用安定法第9条)。上限年齢とは別の制度ですが、定年後の継続雇用まで含めて人員の計画を立てる材料になります。

年齢構成の空洞を埋めるなら3号のロを確かめる

「50代が所長を固めていて、その下の世代がいないから49歳まで」。年齢の上限を、組織図から逆算して決めている会社があります。平均年齢が56歳台で、20代は数人しかいないという会社の話も聞きました。

こうした状況に近いのが、例外事由の3号のロです。特定の職種で、特定の年齢層の社員が相当程度少なく、その職種の技能やノウハウを継承するために、その年齢層に限って募集する場合です。目的に加えて、条件は3つあります。

  • 対象にできるのは、30〜49歳のうち5〜10歳の幅の年齢層
  • その年齢層の人数が、同じ幅の上下の年齢層のどちらと比べても半分以下
  • 期間の定めのない労働契約での募集

判断は原則として企業単位です。**自社が当てはまるかどうかは社員の構成で変わるため、詳しい判断の例は厚生労働省の資料(p.5〜6)で確かめてください。**資料は2007年に作られたもので、法律名が旧名の雇用対策法のままです。現在の根拠は労働施策総合推進法施行規則第1条の3です。

迷う場合は、管轄の労働局に確認してから求人に書きます。当てはまらなければ年齢は書かず、資格と経験で要件を表します。

未経験の若手枠は3号のイ、60歳以上は3号のニ

未経験の若手を育てる枠をつくるなら、3号のイが使えます。長期勤続によるキャリア形成のために、若年者等を期間の定めのない労働契約で募集する場合です。職業経験を問わないことと、新規学卒者と同等の処遇で育てることが条件になります。

ここでいう処遇は、新卒と同じ訓練や育成の体制で育てることを指し、賃金まで完全にそろえる必要はありません(出典:厚生労働省「年齢にかかわりない募集・採用のために」p.5)。経験者の採用では使えません。

反対側の端にあるのが3号のニで、60歳以上に限る募集は認められています。1号・3号のイ・3号のロと違い、期間の定めのない労働契約という条件も付いていません。60歳以上に限った募集ではありませんが、年齢で区切らずに選考して61歳と65歳の方を迎えた会社や、河川工事の実績があれば60代以上の方も対象にする会社もありました。1級と配置の経験を持つ方を60代まで含めて探すと、対象に入る方が増えます。

現場とすり合わせる要件表

要件は、現場責任者の希望をそのまま写すのではなく、ここまでの根拠と並べて、必須・歓迎・不問の3列に振り分けます。

「自分と同じ資格の人」を分解して聞く

現場責任者が「資格がない」「この業界をやっていない」の2点で履歴書を次々に見送り、「自分と同じ資格を持つ人を紹介してほしい」と指名する。採用担当の方は、そういう人が市場にいないと分かっていて板挟みになる。直接聞いた話のなかで、ある会社で起きていた場面です。

こういうときは、「同じ資格」を「その資格で何ができるか」に言い換えて聞き直します。主任技術者として現場を持てればいいのか、監理技術者として置ける人が要るのか。現場が求めているのは資格の名前ではなく、置ける立場であることもあります。同じ会社では、現場は2級建築士を望んでいましたが、母集団がないため建築施工管理技士まで対象を広げています。

必須・歓迎・不問の3列で要件表を作る

建築施工管理(RC造・新築・元請)で、所長候補と担当者の2枠を募集する場合の例です。

項目必須歓迎不問
資格(所長候補)1級建築施工管理技士監理技術者資格者証-
資格(担当者)-2級建築施工管理技士、1級技士補資格なし(取得支援あり)
構造・工種RC造の施工管理経験S造の経験-
新築か改修か新築の経験(所長候補)改修の経験-
立場(所長候補)元請で所長か所長補佐の経験同規模以上の現場で所長を務めた経験-
転職回数・学歴--不問(理由の説明で判断する)
普通自動車運転免許社用車で直行直帰する運用なら必須--

年齢は表に入れません。例外事由に当たる場合だけ、該当する号を明記して書きます。運転免許は、1章の集計で必須資格に最も多く書かれていた項目です。

表は例なので、自社の現場に合わせて書き換えてください。この表を、求人票と紹介会社への依頼、面接の評価シートに同じ形で使うと、社内で基準がぶれません。

応募が止まったら歓迎条件から見直す

応募が来ないときは、次の順で見直します。

  1. 配置の必要から出した必須条件は動かさない
  2. 歓迎条件が、実質の必須になっていないかを見る
  3. 経験の軸を「同じ」から「隣り合う」へ広げる(構造・規模)
  4. 資格を必須から歓迎へ下げる枠をつくる

見直す時期は、募集を出す前に決めておきます。「応募が何件、紹介が何人来なければ見直す」という線を社内で引き、応募数・紹介数・書類通過率の3つで判断します。何か月で見直すという一律の目安はないので、自社の線を先に持っておくことが判断の土台になります。

注意したいのは季節です。施工管理の転職市場は3月に動きが多く、4月に急に減り、ゴールデンウィーク前後にまた増えます。4月前後に反応が落ちても、要件のせいとは限りません。見直しの線に届かなかった時期が、市場の静かな月と重なっていないかを先に確かめてください。

採用要件で失敗する3つのパターン

要件を決めたあとに起きやすい失敗です。

条件を足し算して該当者がいなくなる

現場、人事、経営がそれぞれ1つずつ条件を足すと、「1級・RC造・新築・元請の所長経験・45歳まで・転職2回以内」のような要件ができあがります。1つずつはもっともでも、重ねるほど当てはまる人は減ります。

1章で見たように、30代後半から40代は転職市場での動きが少ない層です。条件を足すときは、要件表のどの列に入れるかをその都度決めてください。歓迎に置けば、条件は増えても応募の入口は狭まりません。

求人票の条件と実際の選考基準がずれる

求人票には「資格不問」「高卒以上」と書いてあるのに、実際の選考では資格と経験を求めている。年齢や残業時間の記載が実態と合っていない。こうしたずれで、候補者が入口で止まっている会社はほかにもありました。

紹介会社も求人票を見て推薦するので、書類で落ちる理由が見えないと推薦が止まりやすくなります。要件表と求人票を同じ形にしておけば、このずれは起きにくくなります。

転職回数の上限で紹介が止まる

転職回数5回以上を見送りにしたところ、紹介会社からの紹介が2〜3年前より減った会社があります。その会社も、転職の理由を確かめて、本人が「これが最後」と考えていると分かれば検討の余地はあると話していました。転職回数の目安を「年齢÷10社」としている会社もあります。

回数で切るより、直近の短期離職が続いていないか、ブランクの理由が書かれているか、退職理由を他人のせいにしていないかを見るほうが、見極めの材料になります。回数そのものより、理由の語り方を見ている会社もあります。

まとめ

施工管理の採用要件は、欲しい人の像からではなく、任せる現場から決めます。経験者に限った求人が多い一方で、1章で見た登録者は20代と50代で半数を超えます。この並びを知らないまま要件を足していくと、どの列にも当てはまらない人を探し続けることになります。

資格は、監理技術者を置く枠だけを1級必須にし、2級・技士補・資格なしは歓迎か不問に置きます。経験は年数ではなく、構造・新築か改修か・規模・立場の4つの軸で中身を書きます。年齢は原則として条件にできず、定年に合わせる1号や、年齢構成の空洞を埋める3号のロなど、例外事由に当たる場合だけ書けます。

要件表を1枚つくり、求人票と紹介会社への依頼、面接の評価に同じ形で使ってください。完璧な要件を探すより、なぜその条件なのかを現場にも経営にも説明できる要件を持つほうが、次の募集で迷わずに済みます。

取締役COO
高谷 匠
「現場の希望と市場がかみ合わないまま、次の募集を出していないか」
任せる現場と配置の必要から要件を組み直すと、現場にも経営にも説明できる線が引けます。TEAM-Xは施工管理・建設技術者に特化した人材紹介に加えて建設業の採用支援を行っており、要件の整理から求人票と紹介会社への依頼の組み立てまでご一緒できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 施工管理技士補を採用要件に入れる意味はありますか?

A. あります。1級の第一次検定に合格した技士補で、主任技術者の資格を持つ人は、監理技術者補佐として現場に専任で置けます。補佐を置いた現場では監理技術者が2現場まで兼務できるので、1級の人数が足りない会社では、技士補が1級の不足を補う戦力になります。

2024年4月からは、1級の第一次検定は年度末に19歳以上なら学歴や実務経験を問わず受けられるようになりました。若手の枠では「1級技士補歓迎」と書き、入社後に第二次検定を目指してもらう設計が取りやすくなっています。

Q. 派遣の施工管理を主任技術者として現場に置けますか?

A. 置けません。主任技術者・監理技術者として置けるのは、所属する建設会社と直接的かつ恒常的な雇用関係にある人です(出典:国土交通省「監理技術者制度の運用等について」4項)。派遣の施工管理は雇用主が派遣会社なので、この条件を満たしません。

施工管理業務そのものは労働者派遣の対象になりますが、専任の主任技術者・監理技術者は派遣の対象外と明記されています(出典:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」令和8年10月版p.40)。配置技術者の枠は直接雇用で採用し、補助的な施工管理を派遣で補う形になります。

Q. 1級を持つ候補者の希望年収が、自社の水準を大きく上回るときはどうすればいいですか?

A. 年収の上限を見直すか、1級は所長枠だけに絞って担当枠を2級や資格なしで組むかの二択になります。1章と同じ集計では、施工管理求人の年収上限の中央値は810万円です(539件・2026年7月24日時点)。

求人票の上限額が実態より低く書かれていて候補者の関心を削いでいる、上限を1000万円へ引き上げることを検討している、という会社もあります。1級の人数を配置の必要から最小限に絞れば、その枠だけ年収を上げる判断がしやすくなります。

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この記事の監修者

高谷 匠

高谷 匠TAKATANI TAKUMI

TEAM-X株式会社 取締役COO/一般社団法人建設技能者転職支援協会 代表理事

新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。

  • 厚生労働大臣許可「建設業務有料職業紹介事業」(許可番号 27-ケ-30001。制度創設から約20年で全国4団体、関西の団体としては初)を運営する一般社団法人建設技能者転職支援協会の代表理事
  • TEAM-X株式会社 取締役COOとして、施工管理・職人の人材紹介から採用コンサルティング・RPOまでの事業戦略と組織構築を統括
  • 新卒でリクルートに入社後、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を歴任
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