TEAM-X株式会社

採用戦略

土木施工管理が採用できない3つの理由|土木固有の壁の越え方

UPDATED 2026.07.08AUTHOR 高谷 匠
高谷 匠

高谷 匠取締役COO

事業戦略と組織構築を統括するCOO。

求人媒体に出しても応募が来ない。来ても要件に合わない。人材紹介に頼っても、なかなか紹介が上がってこない。土木施工管理の採用で、こうした手詰まりに陥っている建設会社の人事・経営者は少なくありません。土木の採用が難しいのは、有効求人倍率6倍超という業界共通の売り手市場だけが理由ではなく、公共工事の配置技術者義務といった、土木ならではの事情が絡んでいるからです。

この記事では、「土木施工管理が採用できない」原因を市場構造・自社の見せ方・採用手法の3つの層に切り分けたうえで、土木に絞った求人票の作り方、技士補や未経験まで広げた採用ルート、人材紹介の使いどころ、採ったあとの定着までを、施工管理採用の現場で見てきた一次情報をもとに具体的にまとめました。「採れない原因はわかったが、次に何をすればいいか」で止まっている方は、自社のケースに当てはめながら読み進めてみてください。

目次
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データで見る「土木施工管理が採用できない」現状

土木施工管理が採用できないのは、需要に対して有資格の経験者の供給が極端に少ないためです。建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は6倍前後で推移し、求人を出しても応募が来ない状態が業界全体で常態化しています。まずは「採れないのは自社だけではない」という現状を、数字で確認します。

数字で見る売り手市場:求人倍率6倍超と有資格者の減少

厚生労働省の「一般職業紹介状況」を見ると、建設業の人手不足は他職種と比べても突出しています。2025年11月分では、建設業(採掘を含む)の有効求人倍率が約5.3倍。職種別では、施工管理が含まれる建築・土木・測量技術者が約6.0倍、土木作業従事者が約6.8倍、建設躯体工事従事者が約8.0倍と、いずれも高い水準で推移しています。ハローワークの求人に限ると、建築・土木・測量技術者は約7.1倍(2026年1月時点)と、ここ1年ほど高止まりが続いています。

倍率が6倍ということは、1件の求職に対して6件の求人がある状態です。1人の有資格者に複数の会社が同時にアプローチしているため、求人を出して待っているだけでは応募が動きません。

供給側も減り続けています。国土交通省の資料では、建設業で働く技能者の数は、ピーク期の約460万人台から近年は約300万人台まで減少しました。年齢の偏りも大きく、技能者のおよそ4分の1が60歳以上である一方、29歳以下は1割強にとどまります。今いるベテランが引退すると、その穴を埋める若い世代が圧倒的に足りないという構図です。

施工管理に特化して人材紹介を行うTEAM-Xの面談現場でも、1日に平均15〜16名の有資格者と面談していますが、年齢構成は20代と50代で半数を超え、即戦力として各社が欲しい30〜40代はなかなか動きません。数字とこの肌感は一致しています。

(出典となる倍率・就業者数は、厚生労働省「一般職業紹介状況」および国土交通省の資料の最新値で、公開時点であらためて確認します。)

需給ギャップが広がる構造

採用が難しくなっている背景は、「仕事が増える要因」と「働き手が減る要因」が同時に進んでいることにあります。全体像を先に整理します。

需要が増える要因(仕事は減らない)供給が減る要因(働き手は増えない)
防災・インフラの更新・維持補修工事の継続若い世代の入職が少なく、技能者が高齢化
再開発や公共投資による工事量の高止まり「きつい・休めない」イメージによる敬遠
2024年問題で一人あたりの稼働時間が制限され、同じ工事量に必要な人数が増加既存のベテランの引退が今後本格化

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。いわゆる2024年問題です。一人あたりが働ける時間が減ったぶん、同じ量の工事をこなすのに必要な人数は以前より増えています。仕事は減らないのに、一人で回せる範囲は狭くなった。これが採用難をさらに押し上げています。

候補者側の事情も見落とせません。土木の仕事を「きつい」「やめとけ」と検索して敬遠する若い世代は一定数います。長時間労働・転勤・休日の少なさといったイメージが先行しているためで、この印象をどう塗り替えるかが、後半で触れる「見せ方の改善」につながっていきます。

土木だから採れない|土木固有の理由

ここからは、施工管理全般をまとめて語る一般論ではなく、土木に固有の事情に絞って掘り下げます。土木の採用が建築以上に難しいのは、売り手市場という共通事情に、公共工事の専任配置義務という「有資格者がいないと現場を回せず、請けられる工事も限られる」構造が重なるからです。打ち手を考える前に、まず土木ならではの壁を正しく押さえます。

公共工事の専任配置義務で、有資格者が現職に縛られ市場に出てこない

公共工事では、工事ごとに主任技術者や監理技術者を「専任」で配置することが建設業法で求められます。専任とは、その現場に張り付いて他の現場を兼任できない状態のことです。つまり、工事の最中にいる有資格者は工期の途中で抜けにくく、そもそも転職市場に出てきません。

この配置義務は、採れない側の会社にも効いてきます。有資格者が一定数いないと専任を確保できず、複数の現場を同時に進めたり、より大きな公共工事を請けたりすることが難しくなります。だから土木の採用は、「現場が回らないから1人補充する」という欠員補充ではなく、「請けられる工事の幅を保つ、あるいは広げる」という経営判断になりやすいのです。資格保有者を1人採れるかどうかが、参入できる工事の種別を左右する場面もあります。

土木は建築と比べると、まだ動きやすい層が残っているのも特徴です。建築系は工事の切れ目がなく現職に囲い込まれやすいのに対し、土木や管工事系は相対的に面談に出てきやすい傾向があります。とはいえ市場は、「動ける層」と「公共工事に張り付いて動けない層」に二分されます。自社が狙うべきは前者で、専任配置の最中にいる候補者を口説いても、工期が明けるまで動かないと考えておくほうが現実的です。

求職者が20代と50代に二極化し、欲しい30〜40代が市場にいない

転職市場に出てくる土木技術者は、年齢が二極化しています。各社が即戦力として最も欲しい30〜40代前半は有効求人倍率が高く、現職で活躍しているため動きにくい層です。逆に、市場で動いているのは20代と50代に偏ります。

年代市場での動きやすさ刺さりやすい訴求
20代動きやすいが経験が浅い育成環境・資格取得支援・キャリアの伸びしろ
30〜40代前半最も欲しいが市場にほぼ出てこない役割の広さ・年収・裁量
50代動きやすいが見極めが要る生活時間(出張なし・土日休み)か、さらなる年収のどちらか

「若手が欲しい」と多くの会社が言いますが、実際に採用が決まるのは40代後半から50代というのがよくある現実です。50代の候補者は、さらに年収やキャリアを伸ばしたい層と、長期出張や転勤を避けて家族との時間を取りに来る層に分かれます。後者には、生活時間を前面に出した訴求が効きます。実際、土木系で長く経験を積んだ56歳の方が最終面接を通過し内定に至るケースもあり、50代は決して採用の対象外ではありません。

特定構造物や特殊な土木分野のように、該当する経験者が市場にほとんどいない領域もあります。その場合は、隣接する分野の経験者を採って転換してもらう発想が現実的です。たとえば洋上風力のように専任経験者がほぼ存在しない領域では、海底ケーブルやプラントなど近い経験を持つ一般土木の技術者から採るしかありません。

「媒体に出せば来る」が通用せず、紹介にも不信がある

土木施工管理は、求人媒体に出稿しても経験者がほとんど反応しません。媒体が効かなくなっているため、手数料が高くても人材紹介に頼らざるを得ない会社が増えています。

一方で、その人材紹介に対する不信も根強くあります。「料率が高いぶん、いい人を紹介します」と言われて契約したのに、数カ月たっても1件も紹介が来ない。最初だけ熱心で、担当者がいつのまにか音沙汰なしになる。こうした経験をした採用担当者は少なくありません。

商談の現場で採用担当者が口にするのは、「料率の高さ」よりも「本当に紹介が来るのか」という一点です。何パーセント払うかではなく、過去にどれだけ決まっているか、対応が透明か。土木の採用では、ここを見極められるかどうかが、外部に頼るときの分かれ目になります。

まず押さえる|自社の採用難易度セルフ診断

打ち手に入る前に、自社が「いつまでに・何人・どのレベルの土木施工管理技士を」必要としているかを一度棚卸しします。ここで紹介するのは、現場や他部署にヒアリングしなくても、人事台帳と進行中の現場の状況だけで答えられる項目です。誰かに確認を取らなくても、今日のうちに手元で計算できます。

年齢構成・現場数・退職見込みから「必要人数と期限」を割り出す

まず、次の項目を社内データから埋めてみてください。紙でもスプレッドシートでも構いません。

  • 有資格者の平均年齢と、60歳以上が何人いるか
  • 今後3年以内に引退・退職が見込まれる有資格者の人数
  • 同時進行していて、専任配置が必要な公共工事の件数
  • 今後1年以内に専任配置が必要になりそうな新規受注の見込み数
  • 1級と2級の人数のバランス

この5項目を数字で出すと、「いつ・何人足りなくなるか」が見えてきます。たとえば、60歳以上の有資格者が3人いて、3年以内に2人が引退見込みなら、その2人ぶんの配置を3年かけて埋める計画が必要だと逆算できます。漠然と「人が足りない」と感じている状態を、期限つきの数字に置き換えるのが最初のステップです。

信号の色(青・黄・赤)で、結果別の最初の一手を決める

出した数字をもとに、自社の状態を信号の色で判定します。最も危ないのは、赤信号なのに求人広告を出して応募を待っているだけの状態です。

信号状態の目安最初の一手
青信号有資格者に若手・中堅もいて、当面の引退見込みが少ない未経験・若手の育成を中心に、計画的に増やす
黄信号引退が1〜2年先に見え始め、補充が間に合うか微妙中途採用と育成を並行で走らせる
赤信号平均年齢50歳超かつ60歳以上が3割以上、3年以内の退職見込みが現有資格者の2割超、専任要員に余白なし即戦力の確保を最優先し、人材紹介も併用。育成枠も同時に動かす

この信号の色が、このあとの「求人票の見直し」「採用ルートの選び方」「人材紹介の使いどころ」のどこに力を入れるべきかを決める軸になります。赤信号なら、次章以降の打ち手を一つずつ順番にではなく、同時並行で回す前提に切り替えてください。

土木の有資格者に振り向いてもらう求人票・スカウトの作り方

売り手市場では、求人を出すだけでは候補者の目に留まりません。土木の有資格者が転職のときに実際に見ているポイントに合わせて、求人票とスカウトの中身を組み替えます。まず、見直す要素の全体像です。

見直す要素なぜ効くか着手のしやすさ
年収レンジ+資格手当の明示月給だけでは実年収が伝わらず比較対象から外れるすぐできる
突き抜けた強みを前面に給与競争では大手に勝てないが働き方なら勝てるすぐできる
立地ハンデを補う条件の明示地方・郊外は通勤の不利で母集団が集まりにくい制度確認が必要
既存社員の入社理由の転用数字に出ない魅力を社員の言葉で伝えられるヒアリングが必要

求人票で土木の有資格者に刺さる要素を組み替える

月給単独でなく「年収レンジ+資格手当」を明示する

月給だけの表記では、賞与や昇給を含めた実際の年収が候補者に伝わりません。結果として比較の土俵から外れてしまいます。年収のレンジ(下限から上限)と、1級・2級それぞれの資格手当の額を併記すると、応募してくる人の数が増えやすくなります。

土木は公共工事の閑散期と繁忙期で、残業や休日出勤に波があります。だからこそ、繁忙期の実態と年間の平均をセットで開示すると、かえって誠実に映って信頼につながります。「残業は月20〜30時間、繁忙期でも20時には退社」「年間休日124日・完全週休2日」のように、平均と実態を具体的な数字で見せるのが効果的です。

訴求軸は「突き抜けた強み」に寄せる

給与の上乗せ競争では、大手や元請に分があります。中小・地場の会社が勝てるのは、転勤・出張・帰宅時間といった生活時間で、他社と比べて明らかに違う条件を出せるかどうかです。

たとえば、転勤・出張なしで勤務エリアを限定している、直行直帰でよい、社用車を自宅に持ち帰れて駐車場代は会社負担、19時台には帰れて休日出勤はほぼない。こうした条件は、業界の標準から離れているほど効きます。土木は現場が点在し、移動の負担が大きい職種だからこそ、「移動と拘束時間の少なさ」が建築以上に決め手になります。実際、家族との時間を優先して、現職より年収が下がっても通勤が近い会社に移る候補者は一定数います。年収アップだけを訴えていると、この層は拾えません。

地方・郊外拠点の立地ハンデは「補う手当」とセットで見せる

土木は地方や郊外の現場が多く、通勤の不利で応募してくる人の数が減りがちです。都市部に住む人は、地方拠点の求人にそもそも応募してこないと考えておくほうが現実的です。

この立地のハンデは、隠すよりも「どう補うか」をセットで見せるほうが信頼されます。社用車の貸与、住宅手当、通勤補助、寮の用意など、移動と住まいの負担を会社がどう減らすかを求人票に具体的に書きます。条件の見せ方を変えただけで応募が動き出すことは珍しくありません。

既存社員の入社理由をスカウト一通目のフックにする

求人票をゼロから考える前に、すでに在籍している土木施工管理技士に「なぜこの会社を選び、なぜ続けているのか」を聞いてみてください。その言葉を、スカウト文や求人の冒頭にそのまま転用します。

「協力会社との関係が良く、現場のストレスが少ない」「1人に現場を持たせすぎず、品質を重視している」といった、数字には出にくい魅力こそ、社員の生の言葉で語ると効きます。スカウトは、掲載した初週に集中して送るほうが返信率が高い傾向があります。実際の運用でも、ビズリーチなどの媒体で掲載初週におよそ100通を送り、週に1〜2件の返信を継続的に確保するペースが一つの目安になります。だらだら送り続けるより、立ち上がりの初速が返信率を左右します。

求人票そのものをどう直すかは、別記事『施工管理の求人票の書き方|応募が来る7つの要素』で、応募が動く7つの要素に分けて具体的に解説しています。

1級経験者にこだわらない|土木だからこそ効く採用ルート

1級経験者だけを狙うと、6倍を超える倍率の最も激しいところで他社と取り合うことになります。土木には資格のレベルごとに別の打ち手があり、自社の経営体力と必要な時期に合わせて組み合わせられます。採用を「即戦力の頭数補充」ではなく、「現場に配置できる有資格者を数年かけて積み上げる計画」として設計するのがポイントです。

資格レイヤー採れやすさ現場配置での戦力/向くケース
1級経験者最も採りにくい監理技術者として即戦力。赤信号で急ぎたいとき
2級中程度工事種別によっては主任技術者として配置可能
技士補採りやすい監理技術者の補佐。配置の余裕づくりと将来の母集団
未経験・微経験採りやすいが育成前提数年計画での戦力化。青・黄信号で計画的に

技士補(第一次検定合格者)を採り、配置の余裕を作る

2021年の制度改正で、「施工管理技士補」という資格が生まれました。第一次検定に合格した人に与えられる資格で、監理技術者を補佐する立場です。

技士補を現場に置くと、一定の要件を満たせば監理技術者が2つの現場まで兼任できる特例(特例監理技術者)が使えます。つまり、有資格者1人あたりがカバーできる現場の範囲を広げられる打ち手です。いきなり1級経験者を採れない会社でも、技士補なら若手や経験の浅い層から確保しやすく、将来の1級・2級候補を社内に育てる母集団にもなります。

(技士補制度や特例監理技術者の要件の細部は、建設業法および国土交通省の制度資料の最新の内容を確認したうえで運用してください。)

技士補を採って配置の余裕をつくるしくみは、別記事『施工管理技士補とは?1級2級の違いと採用での活かし方』で詳しく解説しています。

2級・経験浅め+未経験育成で「配置できる有資格者を数年計画で増やす」

2級土木施工管理技士でも、工事の種別によっては主任技術者として配置できます。経験が浅めの2級保持者も、現場に出しながら戦力にしていけます。

高齢社員の引退タイミングから逆算して、未経験や経験浅めの層を計画的に採り、数年かけて育てる段階採用の考え方が有効です。「1年仕事がなくても数年は社員を養える」という経営体力を前提に判断する会社が多く、引退の波を見ながら1〜2名ずつ補充していくケースが現実的です。未経験から土木の現場経験を積める環境は、本人の市場価値を高めることにもつながるため、育成枠そのものが候補者への訴求材料になります。このルートは、セルフ診断で黄信号が出た会社に特に当てはまります。

資格は入社後に取らせるという採用設計のつくり方は、別記事『施工管理の資格取得支援|入社後に取らせる採用設計』で詳しく解説しています。

未経験採用は「応募殺到×見極め疲弊」を前提に設計する

未経験の求人を出すと、業界をまったく知らない応募が殺到し、書類確認が日々の負担になります。これを前提に、見極めの軸を先に決めておくことが大切です。

おすすめは「未経験より微経験」を優先する考え方です。土木でも解体でも、現場で何かしら働いた経験がある層を上に置きます。完全な未経験者は、「なぜ土木なのか、なぜ施工管理なのか」という動機の強さで見極めます。完全未経験は、夏や冬の厳しい気候で早期に離脱しやすい傾向があるため、歓迎条件に「軽くでも建設・土木の経験あり」を入れておくと、入社後の定着率が上がります。なお、採ったあとにどう辞めさせないかは、次章で扱います。

未経験・微経験や隣接工種から採る母集団のつくり方は、別記事『施工管理の未経験採用|微経験・隣接工種から採る設計』で具体的に解説しています。

人材紹介・派遣・外注の使いどころと、向かないケース

自社のスカウトや求人広告で拾えない、希少な資格や特定の経験を持つ候補者だけに人材紹介を絞ると、費用対効果が高まります。母集団がある程度見込める層は自社で、自社ルートで届かない候補者だけを紹介で、という切り分けです。

建設の施工管理に特化した人材紹介は、紹介料が年収の35〜60%に分布し、資格のレベルで料率が段階的に変わるのが基本です。1級が高く、2級・資格なし経験あり・未経験の順で下がっていきます。全業界向けの総合エージェント(一般に30%前後)より高めに出やすく、希少な資格ほど料率は上がります。

派遣・応援・外注は、繁忙期や一時的な配置の穴埋めには有効です。ただし、公共工事で専任が求められる主任技術者・監理技術者には、自社で雇用している人しか充てられません。入札や受注の土台になる配置を外部リソースで埋めることはできない、という線引きを押さえておいてください。

採用手法ごとの費用レンジと予算の組み立て方は、別記事『土木施工管理技士の採用手法と予算|手法別の相場早見表つき』で詳しく解説しています。

ここでは「どこに紹介を使い、どこは自社でやるか」の判断軸だけ押さえておけば十分です。

採れた人を逃さない|土木の選考と定着で気をつけること

苦労して接点を持てた候補者ほど、選考の遅さや配属のミスマッチで簡単に離れていきます。採用と同じ熱量で、選考の流れと入社後の定着まで設計します。

現職中の候補者の負担を下げる選考フロー

現場に出ている土木技術者は、日中に時間を取りにくいのが普通です。一次はWeb面接、最終だけ来社、という2段階にすると、候補者の負担が下がります。

面談の前にアンケート(入社可能な時期・他社の選考状況・転職で重視する軸・希望年収)を取っておくと、短い面談時間でも密度が上がり、見極めと魅力づけに集中できます。最終面接のあと2週間ほど放置すると、現職からの引き止めで温度が下がります。反応が鈍くなったタイミングで、メッセージから電話のフォローに切り替える基準を持っておくと、競合に競り負けにくくなります。社長が一次面接に出る会社なら、スカウトの段階で社長の人柄が伝わる動画やSNSを共有しておくと、面談前の辞退や温度の低下を防げます。

「現場ガチャ」を作らない配属設計と若手の定着

若手が早期に辞める主な原因は、配属された現場や監督の当たり外れ、いわゆる「現場ガチャ」と、建設業に根強く残る厳しい指導文化です。指導が行き過ぎればパワハラになり、定着を直接損ないます。

採用のときに良い条件を見せても、入った現場で放置されたり高圧的に扱われたりすれば、人は残りません。最初の配属先の現場と教育担当を意図的に選ぶことが、定着では決定的に効きます。職人と継続して同じチームを組み、先輩が若手に教える文化がある会社ほど、離職率は低い傾向があります。定着率を採用の成果指標に含めて見ていくと、採って終わりにならずに済みます。

採用と並行で進める働き方の見直し(2024年問題)

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。これは採用競争の前提条件です。求人票で訴える生活時間の条件が、制度として本当に整っているかを点検する視点が要ります。

週休2日が実際に取れているか、残業の実態を数字で開示できるか、直行直帰が運用として根づいているか。働き方の改善は採用のためだけでなく、今いる社員の定着にも効きます。採用施策と働き方の見直しは、別々ではなくセットで進めてください。

2024年問題で何が変わり、施行後にどんな影響が出ているかは、別記事『建設業の2024年問題とは|何が変わったかとその後を解説』で詳しく解説しています。

土木採用でやりがちな失敗・逆効果なパターン

最後に、土木の採用で繰り返されがちな失敗を整理します。心当たりがあれば、ここまでの打ち手で修正できます。

やりがちな失敗なぜ逆効果か代わりにどうするか
給与・好待遇だけで勝負する待遇競争は大手に分があり埋もれる生活時間や人間関係の強みで勝負する
施工管理と作業員を1求人に混ぜるどの層にも刺さらず応募が分散する職種ごとにページ・媒体・訴求を分ける
採れない前提を放置する退職後に動くと専任配置に穴が空くセルフ診断を定期的に回し先に動く
選考が遅い・放置する現職中の優秀層から離脱する電話フォローに切り替える基準を持つ

給与・好待遇だけで勝負して埋もれる

求人倍率が極端に高い職種では、待遇の上乗せ競争は大手や元請に分があります。好待遇だけを訴えても埋もれてしまいます。待遇は最低条件として整えたうえで、勝負どころは生活時間や人間関係という、自社にしかない強みに置きます。好条件を並べるほど「本当だろうか」と警戒されるため、社員の声や実際の数字といった根拠とセットで見せるのが効果的です。

施工管理と作業員、建築と土木の求人を1枚に混ぜる

1つの求人原稿に複数の職種や工種を詰め込むと、どの層にも刺さらず、応募が分散します。土木施工管理技士の求人は、現場作業員や建築施工管理とは、ページも媒体も訴求も分けるべきです。職種ごとに求人を分離するだけで、応募の質が変わります。

採れない前提を放置し、現場が回らなくなって慌てる

退職や引退が出てから慌てて募集を始めても、売り手市場では採用に数か月かかり、その間に専任配置に穴が空きます。セルフ診断を定期的に回し、高齢社員の引退タイミングから逆算して、少しずつ採用と育成を進める。慌てて動く状態をつくらないことが、最大の予防策です。

選考が遅い・最終面接後に放置する

連絡が遅かったり、選考の流れが重かったりすると、現職中の優秀な候補者から先に離れていきます。とくに最終面接のあとの放置は、現職の引き止めに負ける典型です。反応が鈍いタイミングで電話のフォローに切り替える基準を、あらかじめ決めておいてください。

まとめ:土木施工管理を採用できない状態から抜け出すために

土木施工管理が採用できないのは、売り手市場という業界共通の事情に、公共工事の専任配置義務という土木固有の構造が重なっているからです。だからこそ打ち手も、1級経験者の一本釣りに頼らず、自社の状況から逆算して組み立てる必要があります。

「採用できない」は、次の3つの層に切り分けると、自社が次に手を打つべき場所が見えてきます。

  • 市場構造:経験者が市場にいない、年齢が二極化している、公共工事の専任配置で動けない層がいる
  • 自社の見せ方:年収レンジと資格手当、突き抜けた強み、立地ハンデの補い方
  • 採用手法:資格レベル別のルート、負担を下げる選考フロー、人材紹介の使いどころ

経験者がどうしても無理なら、技士補・2級・未経験・微経験まで母集団を広げ、現場に配置できる有資格者を数年かけて増やし、定着までを採用設計に含めます。まずは自社のセルフ診断から始め、信号の色に応じて打ち手を選ぶ。これが最初の一歩です。

土木施工管理の採用は、求人を出すだけでは応募が集まらず、人材紹介に丸投げすればコストがかさみます。TEAM-X株式会社は、施工管理に特化した人材紹介と採用支援を行っており、公共工事の専任配置を見据えた「いつ・どのレベルの有資格者を・どのルートで採るか」の設計から、求人票・スカウト・選考フローの整備までを一緒に進めています。「土木の有資格者が採れない」「媒体に出しても反応がない」「紹介が上がってこない」「次の現場の主任技術者を置けるか不安だ」。そんな段階でも構いません。自社の状況に合った採用ルートを一度整理したい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 土木施工管理は、いつから・何人を目安に採用を動き始めるべきですか?

退職や引退が出てから動くと、有効求人倍率6倍超の売り手市場では採用に数か月かかり、公共工事の専任配置に穴が空きます。目安は、社内の有資格者の年齢構成と今後3年の退職見込み、進行中で専任配置が必要な現場数から逆算することです。本文のセルフ診断で赤信号(有資格者の高齢化が進み、専任要員に余白がない状態)が出たら、即戦力の確保と並行して、技士補や未経験の育成枠も同時に動かすことをおすすめします。何人必要かは目指す受注規模と現場数から決まるので、まずは必要人数を数字で出すところから始めてください。

Q. 1級経験者がどうしても採れない場合、どうすればよいですか?

1級経験者だけを狙うと、最も倍率が激しいところで他社と取り合うことになります。土木には資格レベルごとに別の打ち手があります。技士補(第一次検定合格者)を採れば、特例監理技術者の活用で有資格者1人あたりの現場カバー範囲を広げられます。2級土木施工管理技士でも主任技術者になれる工事種別があり、現場に配置できる戦力になります。未経験・微経験を計画的に採って数年で育てるルートもあります。自社のセルフ診断の結果(信号の色)に合わせて、即戦力の確保と育成のどちらに重心を置くかを決めるのが現実的です。

Q. 求人媒体に出しても反応がなく、人材紹介も紹介が来ません。どう使い分ければよいですか?

まず、自社のスカウトや求人で拾える層と、拾えない層を切り分けてください。母集団がある程度見込める層は自社の求人・スカウトで、希少な有資格者や短期で決めたいポジションは人材紹介で、という基本設計です。人材紹介は成果報酬(建設特化で年収の35〜60%が目安)でコストが重いため、自社で届かない希少な候補者に絞って使うと、コストに見合いやすくなります。紹介会社を選ぶときは、料率の高さよりも「本当に紹介が来るか(過去の決定実績や対応の透明さ)」を確認することが、土木の採用では特に重要です。

参考資料

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況」 https://www.mhlw.go.jp/
  • 国土交通省「建設業を取り巻く現状」資料 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001715124.pdf
  • 施工管理技士補・特例監理技術者制度(国土交通省 建設業法関連資料)
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高谷 匠

高谷 匠TAKATANI TAKUMI

取締役COO

新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。