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採用戦略

管工事施工管理が採用できない6つの理由|現場で見た採れる採用設計

UPDATED 2026.07.08AUTHOR 高谷 匠
高谷 匠

高谷 匠取締役COO

事業戦略と組織構築を統括するCOO。

「何年も求人を出しているのに、管工事の施工管理が1人も採れない」「応募が来ても、上下水道だけ、保守メンテだけで、ほしい建築現場の経験と合わない」。管工事や設備の会社で採用を担当する方から、こうした声を本当によく聞きます。

施工管理の有効求人倍率は5倍を超え、1人の経験者に5社も6社も声をかける売り手市場です。ましてや管工事はニッチな工種で、条件にぴったり合う経験者を待っているだけでは、何年経っても採れません。

この記事では、管工事施工管理が採用できない理由を、市場側の構造3つと管工事ならではの壁3つ、あわせて6つに切り分けて整理します。そのうえで、有資格者にこだわらない採用設計、媒体と人材紹介の使い分け、求人票の見せ方まで、人材紹介の現場で実際に見てきた打ち手を順に解説します。「うちはどこで損していたのか」「まず何から変えればいいのか」とお悩みの方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

目次
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管工事施工管理が採用できない3つの構造的理由

管工事施工管理の採用市場は、資格を持った経験者の数そのものが少ない売り手市場です。しかもニッチな工種のため、一般的な「施工管理」よりさらに採りにくい構造になっています。まずは、自社の努力だけではどうにもならない市場側の3つの理由を整理します。ここを正しく押さえると、後半の打ち手が「なぜ効くのか」が腹落ちします。

有資格者が市場にほぼいない

管工事施工管理技士は、ベテランの引退が進む一方で若手の入職が追いつかず、有資格者がずっと足りていません。

理由ははっきりしています。管工事施工管理技士は国家資格で、受験するには一定の実務経験年数が必要です。試験の難易度もあり、未経験者がすぐに資格を取って現場に立てるわけではありません。資格を持つ人を増やすには年単位の時間がかかるため、市場の在庫が急に増えることはないのです。

企業が有資格者をほしがるのには、実務上の切実な理由もあります。公共工事の入札参加に関わる経営事項審査では、管工事施工管理技士がいると会社の点数が加点されます(1級で5点、2級で2点。出典:サンスケ)。つまり有資格者は「1人いるだけで会社が受注できる工事の幅が広がる」存在で、各社が社内に抱えておきたい人材です。だからこそ、限られた有資格者を奪い合う構図になります。

求人票そのものをどう直すかは、別記事『施工管理の求人票の書き方|応募が来る7つの要素』で、応募が動く7つの要素に分けて具体的に解説しています。

1人の有資格者に5〜6社が群がる売り手市場

有資格者が少ないところに求人が集中するため、施工管理は極端な売り手市場になっています。建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.12倍(2025年4月時点・厚生労働省)で、全職種の平均を大きく上回ります。

これは、1人の経験者に対して常に5社も6社も同時に声をかけている状態だと考えてください。自社が候補者の前に並んだ瞬間、条件やスピードで他社に少しでも見劣りすれば、それだけで選ばれません。「応募が来ない」のではなく「来た数少ない候補者を他社に取られている」ケースも多いのです。

採用にかかるお金も上がっています。施工管理の採用単価は1人あたり50万円以上が目安で、エリアや条件によっては100万円を超えることも珍しくありません(出典:みんなの採用部の2026年調査)。コストをかければ採れる、という単純な市場ではなくなっています。

「3K」「2024年問題」のイメージで母集団が集まりにくい

きつい、汚い、危険のいわゆる3Kのイメージ、そして長時間労働や休日の少なさは、いまも求職者が建設業を敬遠する大きな理由です。

ただ、現場の実態は変わりつつあります。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され(いわゆる2024年問題)、働き方は是正の方向に進んでいます。問題は、求職者側のイメージがその変化に追いついていないことです。実際は週休2日で残業も抑えられている会社でも、古いイメージのまま候補者に避けられ、母集団が集まりにくくなります。

管工事は、天井裏や床下、設備機械室など、表からは見えにくい場所での仕事も多い工種です。建物の「華やかな部分」を作るイメージが薄く、地味だと思われやすいことも、若手が入ってきにくい一因になっています。だからこそ、後半で触れる「働き方や条件の見せ方」が、ほかの工種以上に効いてきます。

3Kのイメージを求人票でどう上書きするかは、別記事『建設業の3Kイメージを上書きする採用設計|母集団の縮小を止める』で具体的に解説しています。

「管工事」ならではの採れない壁

ここまでは施工管理全般に共通する話でした。ここからが本題です。管工事には、一般的な採用記事では語られない、この工種だからこその採れない壁があります。人材紹介の現場で実際に見てきた構造を3つ紹介します。前章の市場側3つと合わせると、管工事が採れない理由は全部で6つになります。

「管工事経験者」が来ても経験領域がズレている

管工事経験者を募集して応募が来たのに、話してみると求める経験と合わない。これは管工事採用で本当によく起きる、根の深い問題です。

一口に管工事の経験といっても、中身はまったく違います。ビルやマンションなど建築現場での給排水・空調・衛生設備の施工管理と、道路の下を通る上下水道だけの経験、あるいは設備の補修やメンテナンスばかりの経験は、同じ「管工事」でも別物です。建築現場の管工事を主戦場にする会社にとって、後者の経験者は書類段階でミスマッチになりやすいのです。

実際に、人材紹介でお付き合いのある奈良の地場設備会社では、上下水道のみ・補修業務ばかりの経験者は対象から外す方針でした。自社が建築現場の管工事を中心にしているため、現場の進め方や段取りが違いすぎるという判断です。TEAM-Xが施工管理特化の人材紹介で日々候補者に会っていても、この工種内のズレは頻繁にぶつかる壁です。

ここから導ける対策はシンプルです。求人票に「管工事 施工管理」とだけ書くのではなく、「どんな現場の、どんな設備の管工事か」まで具体的に書くこと。建築設備なのかインフラなのか、新築なのか改修なのかを明記するだけで、ミスマッチ応募の対応に追われる工数が減ります。

ドンピシャ経験者を待つと「4年募集してゼロ」になる

ニッチな工種ほど、要件に完全に一致する経験者は市場にほとんどいません。その人をひたすら待っていると、採用ゼロの状態が何年も続いてしまいます。

これは大げさな話ではありません。あるインフラ系の専門工種の会社では、約4年間募集を続けても採用実績はほぼゼロ、応募自体も数人という状態が起きていました。「自社の工種の経験者が、ちょうど転職市場に出てくる」タイミングを待つ採用は、それくらい確率の低い賭けなのです。

この会社が方針として持っていたのが、「競合が少ない専門分野ほど、ぴったりの経験者ではなく、近い分野の経験者から採る」という発想でした。水道工事の経験そのものは必須にせず、一般土木の経験があれば候補にする。この「隣から採る」考え方が、ニッチ工種の採用を動かす鍵になります。具体的なやり方は、後半の採用設計のところで詳しく説明します。

求人票の「経験5年以上」が応募を自ら狭めている

求人票に「経験5年以上」「1級必須」と書いている会社は多いですが、現場で話を聞くと、その多くは絶対条件ではありません。実際には「会って話してみて、人物と経験が合えば通す」というケースがほとんどです。

ところが、求人票では条件を厳しく掲げたままになっています。これでは、本来なら自社にマッチしたはずの経験の浅い人や若手が、応募する前に「自分は条件を満たさない」と諦めて離脱してしまいます。採れない理由を市場のせいにする前に、自分で母集団を狭めていないかを疑う価値があります。

対策は、必須条件と歓迎条件をはっきり分けることです。「絶対に外せない条件」だけを必須に残し、それ以外は「あれば歓迎」に移す。たったこれだけで、応募してくる人の幅が変わります。必須を1つ減らすたびに、声をかけられる候補者は確実に増えていきます。

自社が採れない原因を切り分ける

「採れない」と一口に言っても、原因がどこにあるかは会社によって違います。原因を取り違えると、対策も的外れになります。ここでは、自社の状況を自分で診断できるように、採れない理由を整理します。

「来ない」のか「来ても決まらない」のかを分ける

採れない状態は、大きく2つに分かれます。これを分けることが、すべての出発点です。

1つ目は、そもそも応募や紹介が来ない「入口」の問題です。求人を出しても反応がない、紹介会社から候補者が上がってこない状態がこれにあたります。原因は、採用手法の選び方、求人票の中身、提示している条件にあることが多いです。

2つ目は、応募は来るのに選考で落ちる、または内定を出しても辞退される「出口」の問題です。原因は、必須条件が厳しすぎること、選考のスピードが遅いこと、内定後のフォローが弱いことにあります。

この切り分けをせずに「とりあえず媒体を増やそう」と動くと、入口が詰まっていないのに入口にお金を足すような、ずれた対策にコストを使ってしまいます。まずは直近半年の「応募数」と「選考通過・内定承諾の歩留まり」を並べて、どちらが詰まっているかを見てください。

求人票・条件のどこで損しているかチェックリスト

入口が詰まっている場合、原因の多くは求人票と条件に潜んでいます。次の項目を、自社の求人票を開きながら1つずつ確認してみてください。

  • 給与レンジの上限だけが高く、実態とかけ離れていないか(上限に釣られて応募した人が面談で離れていないか)
  • みなし残業の時間だけが書かれ、実際の残業時間が伝わっていないか
  • 転勤や出張の有無が、候補者にはっきり伝わる形で書かれているか
  • 「資格必須」にして、本来通せる無資格の経験者を排除していないか
  • どんな現場の・どんな設備の管工事かが具体的に書かれているか
  • 応募が来てから連絡するまで、1営業日以内に対応できる体制があるか

ひとつでも「できていない」があれば、そこが損をしている箇所です。求人票は一度作ったら放置されがちですが、採れない期間が続いているなら、まず見直すべきはここです。

採れている管工事会社と採れない会社の違い

同じように人手不足でも、採れている会社と採れない会社があります。その違いははっきりしています。

採れている会社は、ぴったりの経験者を待っていません。「近い分野から採って育てる」「無資格でも経験があれば採って資格は後で取らせる」という前提で、最初から要件を設計しています。市場にいない人を待つのではなく、市場にいる人で勝てる形を作っているのです。

条件の見せ方も違います。採れている会社は、転居を伴う異動がないこと、社用車を貸与すること、決算賞与を「利益がいくらなら何ヶ月分」と明文化していることなどを、求人票で具体的に書いています。「長く働ける会社です」と抽象的に言うのではなく、長く働ける根拠を数字と制度で示しているのです。

突き詰めると、分かれ目は「自社にしかない魅力を、候補者に伝わる言葉にできているか」です。TEAM-Xの支援現場でも、条件そのものは悪くないのに言語化できていないために応募を取りこぼしている会社を、数多く見てきました。

有資格者にこだわらない採用設計

ここからは、実際にどうすれば採れるのかという本題に入ります。市場に有資格者がいない以上、有資格者を取り合う発想のままでは勝負になりません。発想を切り替えて母集団を作る、3つの打ち手を紹介します。

打ち手何を変えるか最初の一歩
隣接工種・微経験から採る「管工事経験者だけ」から間口を広げる求人の対象に電気・設備・土木の経験者を加える
資格は入社後に取らせる有資格者の奪い合いから降りる資格取得支援制度(受験費用の会社負担)を整える
年齢のレンジを広げる「若手だけ」の前提を外す上限年齢を一度撤廃して経験と資格で判断する

隣接工種・微経験から採る

管工事の経験者だけを探していると母集団はすぐ尽きます。視野を広げて、近い分野の経験者を候補に入れましょう。

電気工事、設備全般、土木などの施工管理経験者は、管工事への転換余地がある人たちです。工種は違っても、現場の段取り、職人さんとのやり取り、工程や安全の管理といった施工管理の土台は共通しています。まったくの未経験から育てるより、こうした微経験者のほうが立ち上がりは早く、定着もしやすい傾向があります。

求人の打ち出しも変えます。「管工事の経験者募集」と書くと、管工事ど真ん中の人しか反応しません。「設備・配管まわりの現場経験があれば歓迎」と間口を広げれば、隣接工種の人が「自分でも応募していいかも」と手を挙げやすくなります。先ほど触れた、水道の経験を必須にせず一般土木の経験者から採るという発想も、これと同じ考え方です。

未経験・微経験や隣接工種から採る母集団のつくり方は、別記事『施工管理の未経験採用|微経験・隣接工種から採る設計』で具体的に解説しています。

資格は入社後に取らせる前提に切り替える

有資格者を市場で奪い合うより、無資格でも経験のある人を採って、入社後に資格を取ってもらうほうが、現実的なケースが多くあります。

そのために整えるのが、資格取得を会社が後押しする仕組みです。受験費用を会社が全額負担する、受験対策の勉強を業務時間内に行えるようにする、といった支援を用意します。人材紹介でお付き合いのある会社の中にも、資格取得費用を会社が全額持つことを前面に出している設備会社があり、意欲のある経験者に響いています。

この設計には、もう1つの効き目があります。先に触れた経営事項審査の加点(1級5点、2級2点)を、外から有資格者を採るのではなく、社内で育てて確保できることです。採用市場の競争に巻き込まれずに、会社の受注力につながる資格保有者を増やせます。採用と育成を分けて考えるのが、ニッチ工種では現実的です。

資格は入社後に取らせるという採用設計のつくり方は、別記事『施工管理の資格取得支援|入社後に取らせる採用設計』で詳しく解説しています。

年齢のレンジを広げる

施工管理の転職市場は、20代と50代に人が偏り、30代から40代前半が薄いという二極化が起きています。TEAM-Xの面談でも、20代と50代で全体の7割から8割を占め、ちょうど中堅にあたる層は市場にあまり出てきません。

ここで直視したいのが、「若手がほしい」という希望と、「実際に採れるのは40代後半から50代」という現実のギャップです。若手だけを狙い続けると、母集団がほぼ空になります。経験と資格を持つベテランを、再雇用や嘱託も含めて選択肢に入れることで、採用は前に進みます。

具体的には、求人票の年齢上限を一度外して考えてみてください。50代でも、経験が豊富で資格を持っているなら十分に戦力です。年齢で機械的に切るのをやめるだけで、声をかけられる候補者の数は変わります。

採用手法の選び方(媒体・人材紹介・スカウト)

母集団の作り方を変えたら、次は「どの手法で候補者に出会うか」です。管工事のような専門工種では、手法ごとの向き不向きがはっきり出ます。それぞれの特徴を整理します。

採用手法費用の発生向いている対象管工事での使いどころ
求人媒体(掲載型・成果報酬型)掲載料または採用時未経験・若手の入口待ちの応募が中心。経験者は集まりにくい
人材紹介採用時に成功報酬経験者・有資格者の確保探しに行ける。専門特化型だと母集団を持つ
ハローワーク無料地元・幅広い層コストゼロだが工種マッチの精度は低め
ダイレクトリクルーティング媒体利用料+工数在職中の経験者こちらから攻める。スカウト文の設計が要

なぜ管工事は媒体で採れず人材紹介に依存しやすいか

管工事の採用は、求人媒体に出して応募を待つだけでは母集団が作りにくく、人材紹介に頼らざるを得ない構造があります。

理由は、経験者の数そのものが少ないからです。媒体は「自分から探して応募してくる人」を待つ仕組みなので、母数の少ない工種ではそもそも応募が積み上がりません。一方の人材紹介は、エージェントが市場から候補者を「探しに行く」ため、待ちでは出会えない層にも届きます。

人材紹介でお付き合いのある奈良の設備会社も、「手数料が高いので、本音は媒体で採れたら一番いい。でも実際は採れないので、いまは紹介がメインになっている」と話していました。これは管工事に限らず、専門工種の採用で繰り返し聞く本音です。整理すると、媒体は未経験・若手を集める入口、人材紹介は経験者・有資格者を確保する手段、と役割を分けて考えると無駄が減ります。

人材紹介を使うときのエージェントの見極め方

人材紹介に頼るとなると、次の悩みはエージェント選びです。ここで採用担当者が本当に気にすべきは、手数料の料率よりも「本当に、継続して候補者を紹介してくれるか」です。

実際にあった話です。ある会社は、高い料率を提示してきたエージェントを信じて契約したものの、3ヶ月間まったく紹介が来ませんでした。料率を上げれば優先的に動いてくれるとは限らないのです。むしろ、その分野の候補者を実際に抱えていないエージェントは、料率が高くても紹介を出せません。

見極めるときは、次の3点を質問で確かめてください。1つ目は、管工事や設備の経験者を実際に今どれくらい抱えているか。2つ目は、月にどれくらいの人と面談し、どれくらい成約しているかを具体的な数字で示せるか。3つ目は、自社の工種(建築現場の管工事か、インフラ系か)を理解した上で候補者を絞れるか。管工事のような専門工種では、全業界を扱う総合型より、施工管理や設備に特化したエージェントのほうが、母集団を持っている可能性が高いです。

ダイレクトリクルーティング・スカウトの使いどころ

待ちの媒体で応募が来ないなら、データベースから直接スカウトを送るダイレクトリクルーティングを併用します。こちらから動いて、転職を本格的に考えていない層にも声をかけられる手法です。

ここで差がつくのがスカウト文です。「管工事の経験を活かせます」と書くだけでは、ほかの会社のスカウトに埋もれます。候補者が転職で不安に思うこと、つまり転勤の有無、実際の残業時間、資格取得の支援があるかどうかに、先回りして触れておくと反応が変わります。TEAM-Xの支援現場では、新規掲載の初週にスカウトを集中的に送り、最初の母集団を一気に作る運用を標準にしています。だらだら送るより、初速が返信率に直結するからです。

選考の入口も、候補者が動きやすい形に整えます。一次面接をWeb面接にする、遠方の候補者には出張面接を用意する、いきなり選考ではなくカジュアルな面談から始める、といった工夫です。在職中で忙しい経験者ほど、最初のハードルが低いほうが応募に踏み切れます。

「条件・見せ方」で母集団と承諾率を上げる

同じ条件の会社でも、見せ方ひとつで応募数も内定承諾率も変わります。ここでは、入口の母集団と、内定後の承諾率の両方を底上げする見せ方を扱います。

求人票で伝えるべき「長く働ける根拠」

候補者が知りたいのは、給与の額だけではありません。「この会社で長く働けるのか」を判断できる材料です。それを求人票で具体的に示します。

転居を伴う異動がないこと、社用車を1人1台貸与し自宅から現場へ直行直帰できること、その駐車場費用も会社が負担すること、決算賞与を「利益がいくらなら何ヶ月分」と明文化していること。こうした生活と将来に直結する条件は、候補者の不安を1つずつ消していきます。

注意したいのは、「福利厚生が充実しています」では何も伝わらないことです。奨学金の返済補助、資格取得費用の全額負担、誕生日休暇のように、制度を具体名で並べるほうが響きます。人材紹介でお付き合いのある会社の中にも、福利厚生を数多く整え、その一覧そのものを魅力として打ち出している設備会社があります。平均勤続年数や有給取得日数といった「長く働けている実績」の数字も、あれば添えると説得力が増します。

残業・休日の「見せ方」で損をしない

働き方は、実態が良くても見せ方を間違えると損をします。建設業ほど、ここで取りこぼしが起きやすい業界はありません。

たとえば、みなし残業を45時間で設定していても、実際の残業が30時間に収まっているなら、その差を必ず求人票と面接で説明してください。「45時間」だけが独り歩きすると、候補者は「残業が多い会社だ」と誤解して離れてしまいます。実態のほうが良いのに、書き方のせいで不利になるのは、もったいない話です。

逆に、胸を張れる数字はしっかり打ち出します。完全週休2日、年間休日123日から124日といった水準は、建設業の中ではかなり頑張っている部類です。2024年問題への対応として、工期の管理を見直したり代休の取得を会社として推奨したりしている取り組みも、具体的に書くことで、古い3Kのイメージを上書きできます。

内定承諾率を上げる工夫

売り手市場では、内定を出しても他社に流れていきます。だからこそ、内定後に候補者の気持ちを固める打ち手を、あらかじめ設計しておきます。

工夫の1つが、候補者本人だけでなく家族の支持を得ることです。人材紹介でお付き合いのある会社の中には、内定者の自宅へお礼状を郵送している会社があります。本人がメールで内定通知を受け取るだけでなく、家族にも会社の丁寧さが伝わり、「この会社なら」と背中を押してもらえる効果があります。転職は家族の同意で決まることも多いため、ここは見落とせません。

もう1つは、とにかくスピードです。応募から1営業日以内に連絡する、選考の日程を前倒しで組む、最終面接の後に間を空けない。競合と並んでいるからこそ、早く決める会社が候補者をつかみます。TEAM-Xでは、候補者が自分で面談枠を選べる予約ページを使い、日程調整のやり取りで生まれる離脱を減らす運用も取り入れています。

採用できない状態から抜け出すための失敗例・注意点

最後に、採れない状態が長引く会社にありがちな失敗と、売り手市場でも崩してはいけない見極めの基準を整理します。

やりがちな失敗

採れない会社には、共通するつまずき方があります。条件にぴったり合う有資格者だけを何年も待つ。必須要件を盛りすぎて、応募できる人を自分で減らす。求人票に条件を具体的に書かず、魅力が伝わらないまま埋もれる。応募が来ても連絡が遅く、その間に他社へ流れる。どれも、市場ではなく自社側で起きている問題です。

ここで大事なのは、「採れないのは市場のせいだ」で思考を止めないことです。市場が厳しいのは事実ですが、その中でも採れている会社はあります。違いは、自社で変えられる入口、条件、スピードに手をつけたかどうかです。まずはこの記事で挙げた診断と打ち手の中から、1つ着手するところから始めてください。

採用後に定着しない人を見抜く書類のサイン

売り手市場だからといって、来た人を誰でも採ればいいわけではありません。採用してすぐ辞められては、コストも現場の負担も無駄になります。書類段階で慎重に見ておきたいサインがあります。

直近で短期間の離職が続いている、経歴に説明のつかない空白がある、退職理由が他人や環境のせいばかりになっている、といった点です。メンタル不調による休職の経歴も、施工管理は負荷の高い仕事で再発のリスクに配慮が必要なため、丁寧に状況を確認したいところです。

転職回数の目安として、現場では「年齢を10で割った数くらいまで」という感覚がよく使われます。40歳なら4社程度まで、という見方です。ただしこれはあくまで目安で、理由に納得できれば判断は変わります。回数だけで機械的に落とすのではなく、背景を聞いたうえで見極めてください。

まとめ:管工事施工管理は「採れる設計」に変えれば動く

管工事施工管理が採用できないのは、市場の構造と自社のやり方、その両方に原因があります。市場側には、有資格者の不足と、1人に5社6社が群がる売り手市場という事実があります。自社側には、要件の盛りすぎ、条件の見せ方、手法のミスマッチといった、変えられる余地が残っています。

抜け出す鍵は、ぴったりの経験者を待つのをやめることです。隣接工種や微経験から採る、無資格者を採って資格は社内で取らせる、年齢の幅を広げる。こうして母集団を作り直し、条件と見せ方で内定承諾率を上げていく。この「採れる設計」に切り替えれば、止まっていた採用は動き出します。

まず手をつけるなら、自社が「来ない」のか「来ても決まらない」のかを切り分け、求人票の必須要件と条件の見せ方を見直すところからです。

TEAM-Xは、施工管理と設備の分野に特化した人材紹介を通じて、こうした採用の壁に向き合ってきました。隣接工種や微経験を含めた現実的な母集団づくりから、求人票の見せ方、選考の設計までを、採用コンサルティングのノウハウとあわせて一緒に組み立てます。「うちの工種やエリアで本当に採れるのか」を確かめるところから、まずは現状のヒアリングをお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 管工事施工管理技士の資格がない人を採用しても大丈夫ですか?

A. 多くのケースで現実的な選択肢になります。有資格者は市場に少なく取り合いになるため、無資格でも建築現場の管工事や設備の経験がある人を採り、入社後に資格取得を支援する設計が有効です。受験費用の会社負担や業務時間内の受験対策を整えれば、経営事項審査の加点(1級5点、2級2点)も社内で育てて確保できます。ただし、現場に最低1人は有資格者を置く体制が必要かどうかは、自社の受注内容に照らして確認しておきましょう。

Q. 管工事の施工管理が決まるまで、どのくらいの期間と費用を見ておけばいいですか?

A. 工種の経験者が市場に少ないため、待ちの媒体だけだと数ヶ月以上かかることも珍しくありません。期間を縮めたいなら、隣接工種に間口を広げて母集団を作り、人材紹介やスカウトでこちらから探しに行く設計が現実的です。費用は手法で変わります。求人媒体経由の採用単価は1人あたり50万円以上が目安、人材紹介は成功報酬で年収の35%から60%程度(建設施工管理に特化したエージェントの場合)が実勢です。コストを抑えるには、自社のスカウトで拾える人は自社で採り、紹介は自社ルートで出会えない人に絞るのが基本です。

Q. 管工事の採用に人材紹介を使う場合、エージェント選びで何を見ればいいですか?

A. 料率の高さより「本当に、継続して紹介が来るか」を重視してください。高い料率で契約しても、数ヶ月間まったく紹介が来ないことは実際にあります。管工事や設備の経験者を今どれくらい抱えているか、月の面談数や成約実績を具体的な数字で示せるか、自社の工種(建築現場の管工事か、インフラ系か)を理解しているかを、契約前に質問で確かめましょう。専門工種では、全業界を扱う総合型より、施工管理や設備に特化したエージェントのほうが母集団を持っている可能性が高いです。

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高谷 匠

高谷 匠TAKATANI TAKUMI

取締役COO

新卒でリクルートに入社し、採用コンサルティング会社HeaRのCOO、アイ・グリッド・ソリューションズのEV事業責任者を経て、2025年12月にTEAM-Xへ参画。会社全体の事業戦略と組織構築を統括している。